~注目レースを関係者の声から振り返り、新しい「道」へ~
文:赤見千尋
コパノエミリア(東海クイーンカップ)
6月18日に川崎競馬場で行われた関東オークスJpnIIで、2着に健闘したコパノエミリア。名古屋移籍初戦で重賞制覇を果たし、ここまで快進撃が続いています。
飛躍の要因はどこにあるのか、管理する宇都英樹調教師に伺うと、「もともと能力の高い馬だとは思っていましたが、うちにきて初戦から重賞を勝ってくれるとは……。想像以上に早い段階で結果を出してくれて、私としても嬉しい驚きです。ここまでじっくりと育ってきて、ちょうどタイミングが良かったんだと思います」と話していました。
関東オークス2着で得た自信
コパノエミリアは2024年5月に門別競馬場でデビュー。2戦目で初勝利を挙げ、4戦目からは牝馬重賞戦線を戦って2着1回、3着2回(笠松遠征含む)と存在感を見せました。そのまま笠松に移籍して2戦、ここでも2歳準重賞で2着、牝馬重賞で3着。同世代トップクラスのメンバーに混じってちょっと勝ち切れないというレースが続きます。その後JRAに移籍して3歳1勝クラスで3戦し、今年の春に名古屋・宇都厩舎へ移籍。この時点で11戦して勝ち星は2戦目の1勝のみでした。
移籍初戦は4月10日に名古屋競馬場で行われた東海クイーンカップ。前半は中団後方にいたコパノエミリアは、向正面から動き出すと外から豪快に伸びて差し切り勝ち。5番人気という評価でしたが、見事な末脚で初重賞制覇を果たしました。
宇都調教師は、「笠松での走りを見ていると終いはいい脚を使うので、名古屋のコースは合うんじゃないかと思っていました。当時は少し体が硬くてこずみやすいタイプだったので、(宮下)瞳と相談してそこまで強い調教をしない方がいいねと話し合いました。それがいい方に出たのかもしれません」と振り返ります。
5月5日には、東海三冠の一冠目である駿蹄賞に参戦。「1度使った上積みがありましたし、牡馬相手でもいいレースをしてくれるのではと期待していました」と宇都調教師。勝負所の3~4コーナーで目の前の馬が落馬するというアクシデントがありながらも、直線鋭く伸びて僅差の3着。レース後宇都調教師は、「アクシデントは痛かったですが、それでもよく頑張ってくれましたね。改めて能力の高さを感じるレースでした」と話していました。
ここから再び牝馬路線にシフトし、5月22日、園田競馬場で行われたのじぎく賞へ遠征。新コンビとなった吉村智洋騎手を背に、8馬身突き放す圧勝劇。この勝ちっぷりには、宇都調教師も驚いたそう。「以前のレースを見ていると、上手く脚を使えずにちょっと勝ち切れないレースが多かったですから、園田の小回りがどうかなと思っていたんです。吉村くんはスタートから出して行っていい位置につけてくれましたし、2周目の向正面でかなり促していました。4コーナーで先頭に並んで、そこから突き放す強いレース。吉村くんの好騎乗に、馬がよく応えてくれましたね」
そして、初のダートグレード挑戦となった川崎の関東オークスJpnII。長距離輸送、初の左回りと初ものづくしの条件でした。「輸送に関してはこれまでいろいろ経験していますから、特に不安はありませんでした。左回りは名古屋で練習しましたが実際レースをしてみないと分からない部分があるので、そこは心配もありましたね。実際に初めての川崎競馬場でもまったく動じることはなかったですし、勝ち馬に離されたとはいえあのメンバーで2着に来たというのは本当にすごい馬だなと思いました」と宇都調教師。
厩舎一丸となって目指す大舞台
現状の課題を伺うと、「右回りでも左回りでもあれだけの脚を使えるのは大きな武器ですね。吉村くんも操縦性がいいと言っていましたし、レースでは毎回しっかりと脚を使ってくれます。性格面も穏やかで、厩舎でも難しい面はないですね。担当の松崎貴久美厩務員は経験豊富で、私としてもとても信頼している厩務員です。その人にかわいがってもらっていますし、遠征でも動じない性格ですから」
2020年に開業した宇都英樹厩舎は、昨年フークピグマリオンが東海三冠制覇、そして今年はコパノエミリアと活躍馬が続いています。宇都調教師は、「これはもうたまたまですよ。勝負事ですから、いい時もあるし悪い時もあります。ただやはりフークピグマリオンの存在は大きいですね。この馬で三冠を獲って、厩舎全体にとっても大きな刺激になりました。周りの馬も走って、移籍して来た馬も走って、という感じでいい流れができました。いい馬を預けてくれるオーナー、毎日一生懸命頑張っているスタッフ、騎乗してくれる騎手も含め、周りの方々のお陰です」と話していました。
関東オークスJpnII後は滋賀県にある牧場で夏休みを取っていたコパノエミリア。休みといってものんびりしていたわけではなく、しっかりと調教を重ねていたそうです。「9月10日にこちらに戻ってきましたが、背が伸びて馬体重も10キロくらい増えましたね。まだ3歳ですから、この時期に成長できることも才能の一つ。まだまだ伸びしろは大きいと思いますし、どこまで強くなるか未知数です」
次走は10月2日、船橋競馬場で行われるマリーンカップJpnIIIの予定。「小林祥晃オーナーのお話では、マリーンカップの走り次第で同じく船橋で開催されるJBCレディスクラシックを見据えているということでした。こういう大きなところに挑戦できる馬を預けていただき、とても感謝しています。このまま順調に秋初戦を迎えられるよう、厩舎一丸となって努力していきます」
夏を越えてパワーアップしたコパノエミリア。この秋のさらなる活躍に注目です。
写真:いちかんぽ
PROFILE
赤見千尋
(あかみ ちひろ)
群馬県出身。1998年高崎競馬場で騎手デビュー。地方競馬通算2033戦91勝。2005年に北関東の競馬場がすべて廃止となり、騎手を引退。現在は競馬レポーターとして、グリーンチャンネル『アタック!地方競馬』『地方競馬中継』などに出演中。