SPECIAL COLUMNSダートの高みを目指して

~注目レースを関係者の声から振り返り、新しい「道」へ~

文:中川明美

VOL.22

ダート三冠で届かなかったJpnIタイトル
満を持してJBCクラシックへサントノーレ

サントノーレ(京浜盃)

サントノーレ(京浜盃)

 “ダートの祭典”JBCの足音がすぐそこまで近づいた。11月3日に門別、船橋の2つの舞台で4競走が行われる。
 昨年、新たに整備されたダート三冠で、前哨戦となる京浜盃JpnIIを制したサントノーレ。直線早めに先頭に立つと後続に7馬身差をつける圧勝劇だった。
 しかしながら、その代償は大きく、翌日に右膝の骨折が判明。目指す羽田盃JpnI、東京ダービーJpnIをあきらめるしかなかった。
 「秋の三冠目ジャパンダートクラシックに間に合うことを目標にする」(荒山勝徳調教師)と、すぐさま休養に出され、ひと夏を北海道で過ごした。
 怪我も回復して、心身共に成長して帰厩したサントノーレがまず向かったのが南関東同士の3歳重賞・戸塚記念。プラス23キロのひと回り成長した馬体で6馬身完勝と実力の高さを見せつけた。
 そして迎えたジャパンダートクラシックJpnIだったが、フォーエバーヤングが先行策から直線堂々と突き抜けるなか、サントノーレはポジションを上げながらも直線では脚いろが鈍り、苦しい競馬になった。

今年の舞台は適距離1800m

 「この競馬でサントノーレには2000mは長いということがハッキリした。(今年船橋の)JBCクラシックは1800mだからそれもギリギリだけど、その1ハロン(短縮)は大きい。1600~1800mがサントノーレにはベストだと思っている」と荒山調教師はじめ陣営の意見は一致した。
 そこで今年初戦として試したのが名古屋1500mのかきつばた記念JpnIII。
 「距離を短縮したダートグレード競走でどれだけやれるか計りたかった。ところが名古屋で一泊してのレースだったので、長距離輸送に加え、馬房の環境も違うことで、まるで休養にきたかような気分になってしまったようだ。当日の装鞍所で見たときにも気持ちが入ってない様子。跨がった吉原騎手も返し馬からステッキを入れていたがスイッチが入らないまま、結果6着だった」と荒山調教師。
 2000mは長い、1500mは短い。そうなると次なる目標が絞られてくる。この時点でJBCクラシックJpnIに照準が絞られた。
 まずは同条件の船橋1800m、短夜賞では逃げて5馬身差の快勝。8月にはフリオーソレジェンドカップに出走すると、自分のペースでレースを進め、キングストンボーイを8馬身突き離す強い競馬で圧倒した。
 これでJBCクラシックJpnIに向かうプランは確定的になった。
 レースまでは間隔があるため北海道の森本ステーブルに移動して緩めず乗り込み、帰厩したのは10月初旬。その後は調教も徐々に強めて、攻めの調整に入っていった。
 「リフレッシュもできて良い状態で戻ってきた。毛ヅヤも張りも良かったし、ここから状態を上げていけるだろう。まだ余裕のある馬体をシャープなシルエットにしていって当日を迎えたい」(荒山調教師)と着々と調整は進んでいる。

JBC3競走に挑む荒山厩舎

 「船橋1800mだったら、日本で一番強い馬より速い。今年の日本テレビ盃を勝ったフォーエバーヤングは、同じ船橋1800mで1分52秒2だった。サントノーレはフリオーソレジェンドカップで1分51秒1。1秒1も速い時計で勝っている。昨年のウィリアムバローズが勝った日本テレビ盃は1分52秒8、ウシュバテソーロが勝った前々年は1分51秒7でコンマ6秒速い。単純計算だが船橋1800mを走らせたら現役馬で一番速いのがサントノーレということになる。タイムトライアルではないけれど、自信の裏付けにはなる。ただ、競馬に台本はない。一緒に走ったことのない馬も多いし、出遅れるかもしれない。出たところで考えるしかないとなればジョッキー次第になるよね」と荒山調教師は、チラリと横にいる矢野貴之騎手(短夜賞、フリオーソレジェンドカップで騎乗)を見た。
 現時点では騎乗騎手は未定だが、「とにかくパンチ力がある馬。一方で乗り難しさがあって、ハミの取り方とか器用さがない。噛んだときはものすごいパワフルな動きをする。出し入れする位置ではなく、すんなり3番手とか、ハナに行けるなら行ってしまってもいいし、とにかく自分のペースで運べること。動きたいときに動けるのが理想です」と矢野騎手はサントノーレを評した。
 荒山勝徳厩舎からは、コリアカップG3を優勝し、コスモバルク以来となる地方馬による海外のグレード競走を勝ったディクテオンも選定されているが、「帰国検疫が終わってチャンピオンヒルズに移動してJBCクラシックを目標にした調整をしてきたが、帰厩してからもまだ馬体のケアが必要な状態。使えるところまではいけると思うが結果を求めるとなるともう少し時間がほしい。状態は上がっているから照準を東京大賞典に切り替えようと思う」と荒山調教師は話していた。
 同じく荒山厩舎からは、中央から転入して重賞2連勝のファーンヒルもJBCスプリントJpnIに、JBCレディスクラシックJpnIには転入初戦でいきなり実力を見せたヘニータイフーンも出走予定だ。

写真:いちかんぽ

PROFILE

中川明美(なかがわ あけみ)

中川明美
(なかがわ あけみ)

競馬ブック南関東担当記者。新聞紙面にてコラム『南関こんしぇるじゅ』、週刊競馬ブックで『NANKAN通信』、競馬ブックWEBにて『南関あらうんど』等を執筆。週刊競馬ブック南関東S重賞本誌担当。グリーンチャンネルにて『アタック!地方競馬』『ダート競馬JAPAN』に出演中。

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