SPECIAL COLUMNSダートの高みを目指して

~注目レースを関係者の声から振り返り、新しい「道」へ~

文:中川明美

VOL.27

年度代表馬となって夢見た世界
来年まで見据えるディクテオン

ディクテオン(東京大賞典)

ディクテオン(東京大賞典)

 地方所属馬が海外へ挑む先駆けとなったのは2005年ドバイワールドカップG1に出走したアジュディミツオー(6着)。優勝となると2006年にシンガポール航空国際カップG1を制したコスモバルクが初。近年になって海外を目指す地方馬が増えたなかで、昨年9月にコリアカップG3に挑戦したディクテオンの勝利は、グレードレースでは実にコスモバルク以来20年ぶりの快挙だった。

-東京大賞典制覇からドバイへ

 「馬場は日本とは違う湿って硬くなる(ディクテオンに)向く馬場でしたので一番後ろからだと想定していたんですが、思ったより前へ行けて、しかも馬群がこの馬向き。タイミングを間違えなければひと捲りできると思った。3~4コーナーでは普段通り伸びてくれれば勝てると必死に追いました」と矢野貴之騎手はコリアカップG3を振り返った。レースから戻ってくる際には、矢野騎手にしては珍しいガッツポーズも見せた。
 当然、次は11月の船橋・JBCクラシックJpnIへ向かうかと思われたが、「検疫後の調整が間に合わないためJBCは回避して、東京大賞典に全力で向かいます!」と荒山勝徳調教師は早々に宣言。
 その言葉通り、東京大賞典GIに照準を合わせた調整が功を奏し、JRAの強豪相手に見事優勝。道中は内で脚をため、直線で外に出すと、先に先頭に立ったミッキーファイトに猛然と襲いかかる。ゴールまでの100メートルは壮絶な叩き合いが続き、最後はクビ差で勝利を掴んだ。7番人気での大金星だった。
 東京大賞典での地方所属馬の勝利はアジュディミツオー以来20年ぶり。大井所属馬では荒山調教師自身が騎手時代に騎乗したホワイトシルバー以来32年ぶりの戴冠だった。
 レース後に荒山調教師は、「このあとはドバイとサウジの両にらみで考えたい」と海外遠征を掲げた。NARグランプリでは年度代表馬に輝き、その記者会見では「夢だったドバイワールドカップに、この馬で挑めるのはドラマのよう。最高の結果で帰ってきたい」と世界最高峰の舞台への決意を示した。荒山調教師自身も最優秀賞金収得調教師賞、最優秀勝率調教師賞に加え、殊勲調教師賞と3部門受賞となった。

-川崎記念から来年を見据え

 ディクテオンはドバイ遠征に向けて2月3日に休養先から帰厩し、少しずつピッチを上げながら3月18日の出国に向けて着々と調整が進められていた。矢野騎手も帯同して最終調整をすることになっていた。
 しかしながら、2月中盤になって世界の情勢が揺らいだ。中東情勢の急激な変化により外務省から渡航に関する注意喚起があり、さらに3月5日にはアラブ首長国連邦の危険情報がレベル3(渡航中止勧告)に引上げられた。
 「政府から注意喚起があった時点でオーナーサイドと相談してドバイ遠征をあきらめました。残念だけどしかたありません」と荒山調教師。
 予定されていた3月11日に検疫入りすることもなく、目標を川崎記念JpnIへと切り替えた。
 「ドバイしかプランになかったので、そのために仕上げて最高の状態にあった。馬が良すぎてどうしようというくらいだった。しかし行かないとなればいったん緩めようと1週間ほど運動だけにした。それでも馬体重も変わらずカイバの量を減らすこともなかった。ようやく23日にサーッと行く調教を始めて、4月8日までは5本くらい速い時計を出す予定。川崎記念は距離も許容範囲だし斤量も定量。JRA馬に太刀打ちするためにはと負荷を掛けてトレーニングを強化し、間隔を詰める攻めた調教をしてきたが、今のディクテオンは昨年の川崎記念で負けたときとはすべてが違う。かつてあったトモの弱さも、筋肉がつくことでまったく気にならないし、精神面でも馬に自信がついたのがわかる。今年で引退ではないし、来年の遠征を目指してこの1年を過ごしたい」と荒山調教師はすでに来年のドバイ遠征を目論んでいる。
 矢野騎手が言った。「今年ドバイに行けなかったのは本当に残念ですが、競馬が平和の上で成り立っていることを今回改めて考えさせられました。川崎記念では迎え撃つ立場になりますが、結果にこだわって騎乗したい。この1年しっかり結果を出して、来年こそドバイに向かいたい」
 今年で8歳になったディクテオン。成長が遅かったこともありJRA時代は弾けきれずにいたが、7歳にして荒山調教師に託された。牝馬ダートグレード戦線を席巻した母メーデイアから受け継いだ血を花開かせる真っ最中にいる。

写真:いちかんぽ

PROFILE

中川明美(なかがわ あけみ)

中川明美
(なかがわ あけみ)

競馬ブック南関東担当記者。新聞紙面にてコラム『南関こんしぇるじゅ』、週刊競馬ブックで『NANKAN通信』、競馬ブックWEBにて『南関あらうんど』等を執筆。週刊競馬ブック南関東S重賞本誌担当。グリーンチャンネルにて『アタック!地方競馬』『ダート競馬JAPAN』に出演中。

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