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2009年12月6日(日) JRA阪神競馬場 ダート1800m

直線突き放す圧巻の逃げ切り、海外への手ごたえをもつかむ勝利

 今年のダートグレード戦線で、常についてまわったのが「世代交代」というキーワード。
 ここ何年かのダート路線を牽引してきたのが現7歳世代だが、フェブラリーステークスGIでは4歳世代が台頭。秋には3歳世代が急激に力をつけ、オープンや重賞を次々とさらっていった。
 1番人気は4歳の代表エスポワールシチー。フェブラリーステークスこそ4着だったが、その後はマーチステークスGIII、かしわ記念JpnI、マイルチャンピオンシップ南部杯JpnIと3連勝。JBCクラシックJpnIをスキップして万全の状態でここに臨んだ。
 2番人気は7歳代表ヴァーミリアン。フェブラリーステークスは6着だったが、帝王賞JpnIではフリオーソをちぎって勝利。そしてJBCクラシック3連覇によってGI(JpnI)8勝という日本記録も達成した。
 3番人気は3歳代表のワンダーアキュート。春シーズンは目立った成績ではなかったが、秋になって準オープン、シリウスステークスGIII、武蔵野ステークスGIIIと古馬を相手にいずれも完勝といえるレース内容で3連勝と力をつけてきた。
 注目された世代間の対決に圧倒的なスピードでダート最強をアピールしたのが、エスポワールシチーだった。
 「調教で絶対勝てるという手ごたえがあったのですが、枠順が出た(1番)ときには最後の試練だと思いました」と佐藤哲三騎手。アメリカのティズウェイが行くかと思われたが、好スタートのエスポワールシチーが内枠を利して1〜2コーナーでラチ沿いから単独先頭へ。これで結果的にレースをスムーズに運ぶことができた。一度も13秒台に落ちることがない淀みのないペース。2ハロン目にもっとも早い11秒1があるのは当然として、ちょうど中間の5ハロン目に11秒9とペースが上がっているように、脚を使わされた好位勢には厳しい流れとなった。そして残り400〜200メートルにかけてが11秒8。まさに直線を向くあたりで後続を一気に突き放した。
 好位勢は多くが失速し、なんとか4着に残ったのが同じ4歳のサクセスブロッケン。南部杯では4馬身だった差が、今回はさらに広がった。その間に割って入った3歳のシルクメビウス、ゴールデンチケットは、中団から後方で脚を溜めて直線伸びてくるという展開だけに、エスポワールシチーのが強さがいっそう際立つレース内容だった。
 ワンダーアキュートは大外枠で終始外を回らされる厳しい展開で6着。ヴァーミリアンは4コーナーで馬群に囲まれ行き場がなく8着に沈んだ。
 南部杯のあと佐藤哲三騎手は、「オールウェザーでも走らせてみたい」と語っていたが、それは新たに完成するメイダン競馬場で行われるドバイワールドカップGIを見据えてのこと。
 そして今回は、「海外という夢があるので、それには今日のような勝ち方をしないと無理だろうと思っていました。ハナを切るだけの馬じゃないので、あのスピードで、もし海外に行ってちゃんとマッチしてくれれば、いい競馬ができるのではないかなと思います。さらに研究していい走りができるように鍛えていきたいと思います」と、その手ごたえは確信に変わったようだ。
 
 
佐藤哲三騎手
安達昭夫調教師

 

 

 世代間の争いという枠を超え、日本におけるダートの頂点に立ったエスポワールシチーの陣営は、いよいよ海外でのGIタイトルをも確実に視野にとらえた。

 

 

取材・文:斎藤修
写真:桂伸也(いちかんぽ)、NAR