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2009年12月16日(水) 川崎競馬場 1600m

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抜群のスピードで圧倒、無傷の5連勝でJpnI制覇

 2歳ダート王決定戦として、例年にも増して好メンバーが揃った全日本2歳優駿JpnI。注目すべきは、地方勢に有力馬が多数いたこと。北海道2歳優駿JpnIIIまで重賞3連勝のビッグバンが1番人気。同じく北海道のナンテカは南関東に遠征して鎌倉記念と平和賞を連勝。ラブミーチャンはJRA京都でのレコード勝ちに続き、前走兵庫ジュニアグランプリJpnIIまでデビューから4連勝。佐賀のネオアサティスもデビューから一方的なレースばかりで4連勝。むしろJRA勢や地元南関東勢の存在が霞んでしまうほどの実績馬が全国から集結した。
 さらに今年、この時期としては初の試みとなる“セミナイター”の開催で、メインレースの発走が19時となった。この日の川崎市内は最高気温が10度に満たず、真冬を思わせる冷え込みとなったが、それでもパドックもスタンド前もぎっしりのファンで埋まった。
 ラブミーチャンがフルゲート14頭立ての12番という外枠ながら好ダッシュで飛び出すと、一気にラチ沿いに切れ込んで先頭を奪った。さすがにこれに競りかけようという馬はなく、前走兵庫ジュニアグランプリ同様、アースサウンドが続いた。
 3コーナー過ぎ。アースサウンドがラブミーチャンに並びかけ、3番手以下を突き放す。これも兵庫ジュニアグランプリと同じ展開だ。直線を向いて2頭の一騎打ち。しかし直線半ばでラブミーチャンがじわじわと差を広げて勝利。ラブミーチャンの強さ、そして速さに、スタンドからは驚きと、勝利を称える歓声が上がった。
 アースサウンドも粘りを見せたが、道中後方から馬群を縫うように押し上げたブンブイチドウが直線鋭い末脚で追込み2着。ゴール寸前で交わされたアースサウンドは3着だった。
 1番人気のビッグバンは、終始外々を回る苦しい展開で、中団のまま7着。広く直線も長い門別とは対照的に、川崎はコーナーがきつく、さらには初の左回り。「馬の調子はよかったんですが……」と、桑村真明騎手は悲痛の表情。今シーズン、栄冠賞でデビュー以来の重賞初制覇を果たし、ここまで重賞8勝と急成長した22歳には大きな試練となった。
 「強いし、速い!」。検量室前に戻ってきたラブミーチャンの濱口楠彦騎手は破顔一笑。勝ちタイムの1分40秒0は、60回の歴史を重ねる全日本2歳優駿のレースレコード。ダートグレードが施行された97年以降で笠松所属馬によるGI・JpnI制覇は初。前走兵庫ジュニアグランプリでダートグレード初制覇を果たした濱口騎手にとっても初のJpnI制覇と、記録づくめの勝利となった。
 馬主の小林祥晃氏はご存知、Dr.コパさん。表彰式でのインタビューでは、「笠松所属のまま、濱口騎手で、中央の桜花賞かドバイへ挑戦したい」と語り、ファンを沸かせた。
 幾多の名馬を輩出してきた笠松から、また1頭、楽しみな馬が現れた。

 
濱口楠彦騎手
 今までで一番いいスタートがきれました。この馬なりのペースで行けて、早めに相手に来られることはわかっていましたが、スピードはあるのでなんとか押し切れないだろうかと思っていました。最後は手ごたえはあまりなかったんですが、なんとか辛抱してくれないかと思っていました。前走のあとちょっと疲れがありましたが、ほんとうにすばらしい馬です。 
 
柳江仁調教師
 
 スタートして、今日は一段と速いなと思って見ていました。今回もアースサウンドとの対決になって、園田のときのように踏ん張ってくれるかなと思っていました。使うたびに強くなっている感じで、すごい馬だと思います。左回りや距離などいろいろな初めての条件をクリアして、よく勝ってくれました。今後はいろいろな選択肢があるのですが、芝もこなしてくれるのではないかと思っています。

 
 

 

 

取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(森澤志津雄、三戸森弘康)、NAR