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2009年7月20日(祝月) 盛岡競馬場 2000m

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スタミナ勝負で人気馬を完封、狙った2000mで重賞初制覇

 ダートグレード6連勝中のスマートファルコンには、近走の調子や相手関係からも死角はないように思われた。それが、単勝1.1倍というファンが出したひとつの答えでもあった。
 しかし「競馬に絶対はない」というのも真理で、今回見事な快走を見せたのがマコトスパルビエロだった。
 スマートファルコンはまずまずのスタートも行き脚がつかず、すんなりと先頭に立ったのはマコトスパルビエロだった。サカラートが続き、スマートファルコンは3番手から。
 3〜4コーナーでサカラートとスマートファルコンが前をとらえにかかる。並びかけられたマコトスパルビエロの手ごたえは今ひとつにも見え、直線ではスマートファルコンとサカラートの争いになるのかと思われた。しかし直線半ばからマコトスパルビエロが再び突き放しにかかり、接戦の2着争いに楽々と4馬身差をつけてゴール。スマートファルコンがサカラートをわずかに交わして2着を確保。断然人気の面目は保った。
 3〜4コーナーでマコトスパルビエロの手ごたえがあまりよくないように見えたのは、もともとコーナーがあまりうまくないのだそうだ。それでも地方競馬の中ではゆったりとした盛岡コースだけに、安藤勝己騎手はここでうまく息を入れた。「コーナーで手ごたえがなくても、直線ではまた伸びる馬なので、直線まで交わされなければ勝てると思った」と。
 鮫島一歩調教師は「スタミナには自信があるので、広いコースで直線に坂があれば、ほかの馬が伸びてこられないぶん、この馬にはいいのでしょう」と分析する。これまで重賞では惜しいところで勝ちきれなかったことが何度もあったが、目標としていたこのレースでようやく重賞タイトルを手にし、ホッとした様子だった。
 4馬身という決定的な差をつけられて2着に敗れたスマートファルコン。「今日はガツンと行くところがなかった」(小崎憲調教師)とのことだが、これまではそうしたレースでも自力の違いで勝ってきた。たとえば前走のさきたま杯JpnIIIがそうだ。しかし今回は直線2度の坂越え。それがスマートファルコンにはマイナスに、対するマコトスパルビエロにはプラスに作用したのだろう。

 
安藤勝己騎手
 スタートがよかったので自分のペースで行けました。ペースもそれほど速くならなかったのですごくリラックスして走っていました。確実に走ってくれるので、これからまだまだチャンスはあると思います。 
 
鮫島一歩調教師
 一完歩目がよくなかったんですが、そのあとスムーズに行けたのが勝因のひとつでしょう。今日はリラックスして走っている感じでした。距離は2000メートル以上あったほうがいいでしょう。次も今回と同じようなレースをしてくれれば、さらに大きいところでも期待できるでしょう。

 
 

 「短いところだと(スマートファルコンには)かなわないけど、2000メートルならチャンスはあると思っていた」という安藤騎手の読みこそが、スマートファルコンにとっては逆転を許す死角となった。
 それにしてもこのレース、これで8年連続で中央勢が3着まで独占。地方最先着は、これが岩手転入2戦目、紅一点のクインオブクインの5着で、4着のエスケーカントリーに大差をつけられた。盛岡2000メートルの2度の坂越えは、実力以上に差がついてしまう難コースなのかもしれない。

 

取材・文:斎藤修
写真:森澤志津雄(いちかんぽ)