未来優駿特集【総括】

混戦も期待馬の活躍目立つ
血統には時代の変化も


 今年で3シーズン目となる『未来優駿』。“未来”を占うシリーズだけに、まずは昨年の勝ち馬のその後を確認しおきたい。

 昨年の勝ち馬のなかで3歳になってもっとも活躍しているのは岩手のロックハンドスターだ。岩手二冠馬となり、今年復活したダービーグランプリで全国の強豪相手に三冠を狙っている。

 福山のムツミマーベラスは、福山ダービーこそ2着に負けたものの、福山3歳牝馬特別まで15戦14勝。しかし期待された鞆の浦賞では鼻出血により最下位と残念な結果となった。

 北海道のモエレデフィニットは、シーズン終了後に移籍した岩手で正月の金杯を制し、その後さらに中央に移籍したが、中央では残念ながら勝ち星はない。

 荒尾の九州ジュニアグランプリを制した佐賀のフレーザーハクユウは、大井に移籍したものの成績が残せず、佐賀に戻って荒尾の荒炎賞を勝利。しかしその後10月に登録を抹消されている。

 名古屋のパラダイスラビーダは、正月の新春ペガサスカップを制したものの、その後勝ち星はない。兵庫のタガノバロット、大井のショウリュウも、残念ながらその後勝ち星がない。

 こうして見ると、3歳になっても大活躍というのは、岩手のロックハンドスターと、福山のムツミマーベラス。北海道のモエレデフィニットは舞台を中央に移したために成績が頭打ちになったのは仕方ないが、昨年の未来優駿の勝ち馬には早熟の馬が多かったようだ。

 さて今年の未来優駿は、前半戦は人気馬の活躍が目立ったものの、後半戦は逆に2歳戦らしく波乱となった。


 
 盛岡・若駒賞は、人気のベストマイヒーローが期待通りの圧勝。勝ちタイムは昨年のロックハンドスターを1秒8も上まわり、未来への期待も大きい。ただ出走7頭が人気順の入線という結果で、力に開きがあった。



 
 九州ジュニアグランプリは、1番人気のジュエルリングがハイペースに巻き込まれて4着に沈んだ。しかしゴール前接戦の2頭は佐賀から遠征の3、2番人気馬だったことを考えれば、展開によるまぎれこそあったものの、やはり実力馬が上位に来た。



 
 福山2歳優駿を1番人気で制したユメミルチカラは、園田への遠征で格上の馬に揉まれ力をつけていた。



 
 兵庫若駒賞は上位3頭が差のない人気の混戦だったが、結局は無敗馬同士の一騎打ちとなり、オオエライジンが全勝を守った。



 
 人気馬が崩れたのは第5戦のサッポロクラシックカップから。ただこのレースに限っては、未来優駿の中で唯一重賞ではなく、世代のトップクラスの出走が期待できないため、単勝一桁台が6頭という混戦もしかたない。勝ったのは、同じ1200メートルの距離で勝利を挙げていた4番人気のピエールタイガー。管理する堂山芳則調教師は、このあとに行われた北海道2歳優駿JpnIIIまで含め今シーズン重賞8勝と大活躍の勢いを感じさせた。



 
 南関東では、昨年は大井のハイセイコー記念が未来優駿として行われたが、今年は08年同様、船橋の平和賞に戻った。1戦未勝利の地元の牝馬ヴァインバッハが、北海道から遠征の人気馬3頭を鮮やかに差し切っての勝利。父は中央での活躍も目立つアグネスタキオン、生産は社台ファームで、デビュー前から期待の大きかった馬だけに未勝利での重賞挑戦となったが、フルゲートでも除外されず強運も兼ね備えていた。



 
 名古屋のゴールドウィング賞は、ここまで6戦1勝と目立った成績を残していなかった伏兵ミサキティンバーが勝利。山本茜騎手にとってはデビュー6シーズン目でのうれしい重賞初制覇となった。



 勝ち馬を血統的な面で見ると、日本で完全に主流となっているサンデーサイレンスの血を引いた馬が意外にも少なかったこと。盛岡・若駒賞のベストマイヒーロー(父サクラプレジデント)と、平和賞のヴァインバッハ(父アグネスタキオン)の2頭のみ。母がサンデーサイレンス系という馬は1頭もなく、やはりサンデーの肌馬には高額な種牡馬が付けられ、中央に入る馬が多いのかもしれない。

 昨年のこの総括で、「未来優駿は、地方競馬で活躍する血統の品評会と言ってもいいかもしれない」と書いたが、今年も地方競馬での活躍馬を多数輩出している種牡馬の産駒が目立った。兵庫若駒賞のオオエライジン(父キングヘイロー)、サッポロクラシックカップのピエールタイガー(父カコイーシーズ)、ゴールドウィング賞のミサキティンバー(父ティンバーカントリー)などがこれにあたるだろう。

 やや異色なのが九州ジュニアグランプリを勝ったリョウマニッポンで、父ルールオブロー、母の父シングスピールはダーレーの血統。ダーレー・ジャパンが日本でも生産を中心とした競馬事業を手がけるようになってから数年が経過しているので当然といえば当然なのだが、こうした血統が地方競馬で活躍するのを見ると、あらためて時代の変化を感じさせられる。

文:斎藤修
写真:いちかんぽ、NAR

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
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