レースハイライト タイトル

2012年1月24日(火) 川崎競馬場

マイスターチャレンジ

ヴィクトリーチャレンジ


第1戦 マイスターチャレンジ

第2戦 ヴィクトリーチャレンジ

世代交代を思わせる節目に
地元南関東勢が表彰台独占

 冬将軍が到来した川崎競馬場。途中、雪も舞い散るほど厳しい寒さに見舞われた。しかし場内は晴れやかなムード。というのも、主催者は皆、鮮やかな黄色のブルゾンを身にまとい、佐々木竹見元騎手の勝負服柄の旗を振り、誘導馬も勝負服コスプレでファンサービス。紹介式の始まる頃には、この寒さにもかかわらず大勢のファンがウイナーズサークルに集まり、賑わいを見せていた。
 「地方競馬の至宝」と言われた佐々木竹見元騎手の名を冠した『佐々木竹見カップジョッキーズグランプリ』は、今年で10回目。回を重ねる度に、佐々木竹見氏がいかに愛され続けてきたのか、その偉大さを感じる。
 そして、今年も全国からトップジョッキー14名が集結した。レース直後、「やっぱり、これだけの騎手が揃うとレースが面白い」「いいもの見せてもらった」「さすがだなぁと改めて思った」などと、周囲から感嘆の声が漏れていたのだが、今回もそれだけハイレベルな戦いを見せてくれたのだった。
 第1戦のマイスターチャレンジは、まさに見応えのある熱戦となった。逃げ馬不在のためお互いが出方を伺いながら隊列を作り、向正面では各馬が一団でゆったりと流れていった。そして、団子状態のまま直線に突入。ここからが見物だった。まず、手ごたえ良く抜け出したのは、森泰斗騎手(船橋)のトウカイバロン。その直後から横一戦となり激しい追い比べとなった。「みんなが一気に動いて、どこに出していいかわからなくて必死だった」とマックの赤岡修次騎手(高知)が語ったように、騎手たちのせめぎ合いも相当だったようだ。激戦をものにしたのは、後続の追撃を振り切った森騎手。2着は終始インで脚をため、直線で外に持ち出したハヤブサアビオンと坂井英光騎手(大井)。そして、最後方から大外強襲の赤岡騎手が3着に飛び込んだ。
 昨年に続き2回目の出場となった森騎手は、シリーズ初勝利。昨年、南関東で大ブレイクした男の勢いを感じさせる1勝だ。「優勝狙っていきます!」と、本人は気合を入れて次のレースに向かって行った。
 第2戦のヴィクトリーチャレンジは、地方競馬不動のリーディングが魅せてくれた。先行馬が数頭いる中、逃げたのはなんと、戸崎圭太騎手(大井)。騎乗したダルタニヤンは、近走は出遅れもあり、後方からのレースが続いていた馬。しかし、そのままマイペースに持ち込んだ。2周目の向正面に入ると、我慢しきれんとばかりにラッキーサンライズと吉原寛人騎手(金沢)が先頭に近づき、後続の騎手たちの手も一気に動き始めた。しかしそれを尻目に戸崎騎手は後続を突き放し、2100メートルを鮮やかに逃げ切った。距離経験のあるシルククレヴァーと繁田健一騎手(浦和)が最後もしっかり脚を伸ばして2着。好位でレースを進めたステップインタイムと山口勲騎手(佐賀)が3着に粘った。
 6番人気ながら、3馬身差の快勝だった戸崎騎手。意表を突いた逃げは作戦だったと思いきや、「位置取りはスタート次第と思っていたんですよ」とさらりと答えた。一瞬で最良の選択をし、結果に結び付け、しかもその馬の新味も引き出す、その技術や精神力はさすがだと実感した。
 さてポイント争いは、勝利こそなかったものの、4着、2着と、2戦とも人気以上の着順で好走した繁田健一騎手が65ポイント。6回目の挑戦で見事総合優勝に輝いた。2位は、10着、1着で56ポイントの戸崎圭太騎手。3位は、1着、12着で54ポイントの森泰斗騎手。終わってみると、南関東勢が表彰台独占という結果となった。
 優勝した繁田健一騎手は、「運が良かったです」と謙遜気味のコメントだったが、それでも第1戦が終わった時点で、優勝できるかもしれないと虎視眈眈と狙っていたようだ。佐々木竹見氏は繁田騎手を「人間的にも素晴らしいし、どんな競馬でも乗りこなせる騎手」と評した。確かな腕で勝ち獲った総合優勝といえよう。
 節目の10回目を終えた『佐々木竹見カップジョッキーズグランプリ』。入賞者や出場騎手を見ると、「世代交代」の文字も浮かんでくる。そんな、時代の流れを感じることができるのも、長く続いているこのシリーズならではだ。また今年1年、地方競馬を肌で感じながら、来年のこの日を心待ちにしたい。
パドックでのフォトセッション(最後列は第90期騎手候補生)
大勢のファンを前に騎手紹介
表彰式(前列中央が佐々木竹見元騎手)
誘導馬の騎乗者も佐々木竹見元騎手の
勝負服を着用
取材・文:秋田奈津子
写真:いちかんぽ(森澤志津雄、川村章子)、NAR

総合優勝
繁田健一騎手
(浦和)
見澤(譲治)騎手も勝ったことがあるって聞いてましたし、僕も優勝できて素直に嬉しいです。運が良かったですね。第1戦が4着だったので、チャンスはあるかもと思っていました。第2戦は、距離が合う馬と聞いていました。最近は二桁着順でしたが、乗り味も悪くなかったです。賞金は貯金します(笑)。今年もケガなく一生懸命騎乗していきたいです。
総合2位
戸崎圭太騎手
(大井)
1位を目指してがんばりましたが、第1戦が不甲斐ない成績で残念でした。でも、第2戦を勝てて良かったです。みんなケガなく一生懸命やって、良いレースができて良かったです。また来年もがんばりたいです。
総合3位
森泰斗騎手
(船橋)
第1戦は、もう少し前につけたかったんですが、かなり厳しいレースになりました。でも最後までがんばってくれて、強い馬ですね。総合3位になったことは嬉しいです。普段一緒に乗っている南関の仲間と表彰台に立てたことも嬉しいです。でも、第1戦が終わった時には、僕が表彰台の真ん中にいる予定だったんですけどね(笑)。