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2011年5月4日(祝水) 園田競馬場 1870m

人気2頭は見せ場をつくれず
あっと驚きの逃げ切り圧勝

 ゴールデンウイークの園田競馬場では、「東日本大震災支援・がんばろう東日本!広げよう支援の輪!」と題して、さまざまなチャリティーイベントが行われていた。この5月4・5の両日には、さまざまな競馬関係者や兵庫県競馬組合から提供された競馬グッズのチャリティーオークションが行われたが、そのうち4日の目玉となったのが、吉田勝彦アナウンサーが実況で30年使用されていたという双眼鏡。吉田アナの希望でオークションは3000円からのスタートだったが、あっという間に値が上がり、最終的には50,000円での落札となった。このオークションでの売り上げは、もちろん被災地に全額寄付される。
 兵庫3歳三冠の二冠目であり、中央も含めた3歳ダート路線では重要な位置づけを担っている兵庫チャンピオンシップJpnUだが、近年はとにかく堅い決着が続いていた。過去5年で1番人気は3勝2着2回と毎年連対。さらに連対馬10頭はすべて3番人気以内だった。
 今年の人気も、ダート実績のある2頭の一騎打ちの様相。ヒヤシンスステークスまでダートで3勝を挙げているラヴィアンクレールが単勝1番人気で、2歳時にエーデルワイス賞JpnVから兵庫ジュニアグランプリJpnUを連勝し、全日本2歳優駿JpnTでも2着した牝馬のリアライズノユメが2番人気。この2頭の馬連複は、最終的に1.7倍というもの。それ以外の中央馬がいずれもダート実績に乏しかったことも、人気が集中した要因だろう。
 しかし今年は実績どおりの堅い決着とはならなかった。そして結果に至る過程にいくつもの驚きがあった。
 まずひとつめは、本馬場入場後にトキノゲンジが負傷して競走除外になったこと。除外のアナウンスが流れると、場内のファンからはあきらめともブーイングともつかないような声が上がった。
 2つめの驚きはスタート。3番人気、武豊騎手のマルモセーラがつまづいて前のめりになるような感じで出遅れ、さらに「ゲートの中で馬がバタバタしていた」(福永祐一騎手)というリアライズノユメもゲートが開いた次の瞬間、最後方に置かれた。スタンドからは悲鳴が上がった。
 好スタートでハナを切ったのは、岩田康誠騎手のエーシンブラン。出走した中央勢4頭の中では唯一単勝オッズが二桁台(最終的に14.3倍)を示していた、いわば中央勢ではもっとも人気薄の馬。これに地元期待のホクセツサンデーが続いた。マルモセーラ、ラヴィアンクレールは中団、リアライズノユメもその後ろにつけた。
 3コーナー。逃げていたエーシンブランの直後にホクセツサンデーが迫り、3番手以下は離れた。岩田騎手がレース後に「向正面あたりで人気の馬がいつ来るのかなって、ずっと待ってたんですけど……」と語っていたが、見ていた多くのファンも同じように思ったのではないか。
 4コーナーから直線を向くとエーシンブランが再び突き放して独走。6馬身差はついたがホクセツサンデーもバテることなくそのまま2着でゴール。人気のラヴィアンクレールが3番手に押し上げたが、ホクセツサンデーからは5馬身も離れていた。リアライズノユメは6着。3つのめの驚きは、人気を集めた2頭ともが連対できなかったという結果だ。
 勝ち馬の鞍上には元兵庫の岩田騎手。そして地元のホクセツサンデーが2着と好走。普通なら「よくやった」というような歓声が沸いてもよさそうな場面だが、場内には何かざわざわとした微妙な空気が流れていた。心情的には地元馬を応援していても、多くの人が馬券として応援した人気2頭ともが、あまりにも意外な結果に終わったからだろう。
岩田康誠騎手
スタートもよくて、物見をしたり、かかったりして、ずっとそういう感じだったんですけど、それでも息が入って、自分のレースができました。スピードがあるので、前々で競馬ができるかなとは思いましたが、逃げ切りとは思いませんでした。素直でスピードセンスもありますし、真面目な馬です。経験を積めば、もっと上を目指せるでしょう。
坂口正則調教師
初めてのダートですし、距離的にも初めての長い距離だったんですが、うまいこと逃げてくれました。気性的に逃げたほうがいいのはわかっていたんですけど、うまく逃げられたのが勝因ではないでしょうか。今回は中9日で使ったので、一息入れてから、またダート路線を使っていくと思います。

 坂口正則調教師にしても、「オーナーから、一度ダートを使ってみてくれないかと言われて使ったんですが、予想外に強かったですね」と、この圧勝には驚きの様子だった。このあともダート路線を使っていくのではないかとのこと。
 これから本格化する3歳ダート路線に、超新星が現れたことだけは間違いなさそうだ。
取材・文:斎藤修
写真:桂伸也(いちかんぽ)