レースハイライト タイトル
dirt
2011年6月16日(木) 門別競馬場 1200m

直線猛然と追い込み差し切る
キャリアの浅い5歳馬に初栄冠

 札幌、旭川、門別と、道内競馬場の各地で1000メートル戦として定着していた北海道スプリントカップJpnVは、昨年から門別1200メートルで実施されるようになった。
 大井、盛岡と並んで1周1600メートルの広大なコース形態を誇る門別競馬場の1200メートルは、向正面を長く走ることでラップの緩みがなく、直線に向くまでに意外とスタミナを消耗し、いわゆるバテ比べの競馬になることがほとんど。1000メートルから1200メートルと、たった1ハロンの延長とはいえ、スピードで押し切れる1000メートルとは違い、実力と底力が問われるレースへと生まれ変わった。
 初めて1200メートルで行われた昨年が、2009年のNARグランプリ年度代表馬・ラブミーチャンがレースを引っ張り、ミリオンディスクが1分09秒6のレコード勝ちと、それを裏付ける内容だったと言える。
 今年は、ダイワディライトが直前で回避し、JRA勢は3頭のみ。昨年の1、2着馬に加え、キャリアの浅い5歳馬・マルカフリートが参戦。長期休養を挟みながら4連勝でオープンまで昇級。初のオープン特別を大敗したものの、久々を叩かれた上積みを期待されての参戦となった。
 今回のメンバーは、どれが逃げるのかが読み切れず、スローに流れることが予想された。「自分の馬でも、いい位置で競馬ができると想定していた」と、ヤサカファインの石崎駿騎手が話していたように、南関東B2のエレガントスピーチがハナへ行く展開で、前半3ハロンが34秒7の流れ。ヤサカファインは無理せず2番手につけることができ、石崎騎手も思い描いていたレース運びができた。
 ヤサカファインが直線入口で早くも先頭に立ち、粘り込みを図った。しかし、道中は好位の内にいたマルカフリートが、勝負どころでスムーズに外に持ち出して猛然と追い込み、ヤサカファインを捕らえて重賞初制覇を飾った。
 1番枠を引き、ロスなく立ち回れたマルカフリートと、大外13番枠のヤサカファインとの差は半馬身。ごまかしの利かない舞台設定だけに、すべてが上手く運んだ実力馬に勝利が転がり込んだ。
福永祐一騎手
順調に使えない面がありましたが、4連勝でオープンに上り詰めたように、能力は相当高い馬です。道中は絶好の手応えで進めたし、スムーズに外に持ち出せ、最後はしっかりと伸びてくれました。オープン2戦目で重賞を勝てたことで、今後がますます楽しみですね。
増本豊調教師
膝蓋骨を脱臼して1年以上休んだり、裂蹄で7カ月開いたりと、苦労した面はありました。休み明けをひと叩きして6キロ馬体が増えたのは不安でしたが、気合そのものは一変していました。気で走るタイプで、間隔を詰めて使えたことが大きいと思います。

 「やったと思ったけどなぁ」と、鷹見浩調教師と石崎騎手も悔しそうな表情。ヤサカファインにとって、ダートグレードの勲章は、あと僅かでも遠く感じたことだろう。
 また、1番人気で連覇を目指したミリオンディスクは、ゲート入りに手こずり、戦前から気持ちの面で他馬に劣った。蛯名正義騎手も、「いつもなら直線に向いた時に伸びてくれるはずなのに、今日は手応えがなかった」と首を捻りながらレースを振り返っていた。
 勝ったマルカフリートの増本豊調教師は、「この馬には地方の馬場が合うかも。ダートの短距離戦を模索して、使うところを考えていきたい」と話す。この後は、日高町門別の坂東牧場に放牧に出され、クラスターカップJpnVを視野に入れてダートグレード路線を歩んでいく。
取材・文:古谷剛彦
写真:中地広大(いちかんぽ)