従来、単独の競馬場で行われてきた女性騎手招待競走を、複数場で施行することにより、シリーズ化(3ラウンド6レースの総合ポイント制)。2006年度から現在の形態で実施されている。
 女性騎手のみで行われるレースは年間を通じて当シリーズのみで、注目度も高く、日本一決定戦の側面だけではなく、普段の競馬場では見られない華やかな雰囲気とお祭り感も特徴の一つ。

 三部作のノンフィクション DRAMATIC3
 【第三部 レディースジョッキーズシリーズ】
 〜今年、何度、女の強さを見せつけられるのだろう。この走りには必ずドラマがある〜


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6名による華やかで激しい争い
上位4名が20点台にひしめく接戦

 06年からシリーズ化され、今年で6回目の開催となるレディースジョッキーズシリーズ(LJS)が11月14日、開幕した。第1ラウンドの舞台はこのシリーズの開催は初めてとなる盛岡競馬場。気温は低いものの、この時期の盛岡は紅葉が実に美しい。赤や黄色に色づいた向正面の山並みの木々が、華やかでかつ、激しい女性達の競演に彩りを加え、闘いをさらに盛り上げていた。
 全国の女性騎手達が集うLJSだが、去年まで出場していた宮下瞳騎手(名古屋)、池本徳子騎手(福山)が引退、平山真希騎手(浦和)は調教師に転身、笹木美典騎手(北海道)は負傷休養中、森井美香騎手(高知)は出産したばかりで休養中のため、今年は6名による闘いとなった。しかし、過去にLJSの優勝経験のある山本茜騎手(名古屋)や別府真衣騎手(高知)が、修行先の韓国から一時帰国して参戦し、さらに今年デビューの下村瑠衣騎手(北海道)がニューフェイスとして登場。シリーズ化以来、最少の6頭立てではあったが、その分、見ている側には、全員の騎手の動きや仕掛けのタイミングがダイレクトに伝わってきて、見応えのある闘いが繰り広げられた。
 第1戦のアルテミス賞を制したのは終始、落ち着いた手綱捌きを披露した山本騎手。騎乗したモエレアンドロメダで好スタートを切ると、内から先行する構えを見せた岩永千明騎手(荒尾)のホッカイナシュアを先に行かせ、4コーナーでは3番手の外を追走。直線では増澤由貴子騎手(JRA)とコンビを組むヒドゥンアジェンダが先に抜け出すが、山本騎手はじっくり追い出し、外から交わしてゴールイン。着差は1馬身だったが、それ以上の余裕を感じさせる勝利に、山本騎手も「馬が強すぎましたね」と冷静にコメント。盛岡ラウンド前日の11月13日まで韓国で騎乗し1勝を重ね、韓国遠征勝利数を19まで伸ばした山本騎手の今の充実ぶりと自信がそのまま出たようなレースぶりだった。聞けば、山本騎手はこの盛岡ラウンド当日14日の早朝便で日本に戻り、同じく韓国で騎乗中の別府騎手は12日に帰国。そして2人ともレース翌日の15日には韓国へ戻る予定だそうで、そのタフネスぶりには驚かされる。
 騎乗馬のほとんどがテン乗りとなるLJSだが、今回は盛岡での開催が初めてのため、地元の皆川麻由美騎手(岩手)に大きなアドバンテージがあり、それと山本騎手に騎乗経験があっただけで、あとの4人は初コース。左回りの盛岡にいかに早く対応できるかも、闘いの行方を左右することになった。
 そんな中、1戦目が終わった後の検量室で、11月21日まで盛岡で騎乗をしている内田利雄騎手に熱心にアドバイスを求めていたのが岩永騎手だった。

 「1戦目の時は少し内をあけすぎてしまったという反省点があったので、内田騎手に相談したんです。2戦目は教えてもらったことを頭に入れて、乗れました」と岩永騎手はレース後語っていたが、第2戦のガイア賞では、サイレントステージでスタートを決めると、今度は内をあけずにコーナーを回り、逃げる別府騎手を早めに捉えて1着。さらに岩永騎手はレース前に同期である高松亮騎手にサイレントステージの癖を聞いて勉強していたとのことで、「馬の力を信じて乗れました」と笑顔。事前の研究と対応力がもたらした大きな勝利だった。
 第2戦が終わっての気になる勝負の行方は、増澤騎手(2着・3着)と岩永騎手(5着・1着)が25点の同点でトップが並んだが、より上位の着順を得た者を優先させるというルールのもと、岩永騎手の第1ラウンド優勝が決定した。次回のLJSの舞台は荒尾競馬場。地元開催をトップで迎えることとなり、意気込みを聞かれた岩永騎手は、「荒尾は今年一杯で廃止になるので、思いっきり乗りたい。荒尾を背負います!」とコメントすると涙ぐみそうになるシーンも。
 第2戦の舞台となる荒尾競馬場は、そんな心中が絡んだドラマも展開されそうだ。しかし別府騎手が、「上位とは差がないので、絶対に巻き返したい」と話すように、岩永騎手、増澤騎手、山本騎手、別府騎手が20点台にひしめき合う大接戦。ひとつの着順の差が大きく左右するだけに、順位は変わっていくだろう。次回の闘いは12月1日。荒尾競馬場で行われる最後のLJSをしっかりとこの目に焼き付けたい。
取材・文:小島友実
写真:国分智(いちかんぽ)、NAR
盛岡ラウンド
優勝

岩永千明騎手
盛岡での騎乗は今回が初めて。1戦目では反省点がありましたが、2戦目ではそれを克服できたので良かったです。去年優勝しているので連覇を狙いたい。荒尾は今年で廃止となるので、次は思いっきり乗りたい。荒尾を背負います。
盛岡ラウンド
2位
増澤由貴子騎手
レースに乗るのが久々だったので(今年2月の東京戦以来)、不安なところもありましたが、最初のラウンドから良い結果が出せて嬉しかったです。盛岡競馬場は初めてでしたが、乗りやすいですね。
盛岡ラウンド
3位
山本茜騎手
1戦目は強い馬に乗せていただいて勝つことができて感謝しています。去年のLJSは結果を残せませんでしたが、今年は良いスタートが切れたので、このまま調子に乗って行きたいですね。韓国からの移動は確かにハードですが、問題ありません。次も頑張ります。