レースハイライト タイトル
dirt
2014年3月5日(木) 川崎競馬場 2100m

早め先頭から突き放し大差圧勝
ダート牝馬戦線に新女王誕生

 今年のエンプレス杯JpnⅡは、今後の牝馬ダートグレード戦線の主役が誕生したと言ってもいいだろう。イタリアから中央の短期免許を取得し来日中のクリスチャン・デムーロ騎手が手綱を取った1番人気ワイルドフラッパーが、新時代の到来を告げるかのような強さを見せつけた。
 雨が降り続いた1日。メインレースのパドックに各馬が入場してくると、さらに風雨が強まり、牝馬たちに試練を与えるかのような悪条件となった。パドックには大きな水たまりができ、馬場は田んぼのようなビチャビチャの不良馬場。
 「上がり34秒7(3走前の観月橋ステークス)の脚で上がってくるくらい能力の高い馬なので、ゆっくり構えていって包まれないように、できるだけ早く、上がりの速い競馬に持ち込むことを騎手にはお願いしました。その通りに乗ってくれて、その通りに勝ってくれました」(松田國英調教師)。
 ワイルドフラッパーは抜群のスタートを切ったが、エミーズパラダイスがハナを主張したため、2番手を追走。「強いのはわかっていたし、前に行く馬がいたら行かせて2番手でもと思っていました。馬は楽だったんですが、砂をかぶって若干嫌がるところを見せたので外目を走りました」(C.デムーロ騎手)。
 2周目の3コーナー手前では早々先頭に立つと、アクティビューティやサンビスタも追いかけてきたが、その差をグングン広げていき、2着のアクティビューティに2秒2差をつける大差勝ち。勝ちタイムの2分12秒1(不良)は、エンプレス杯が2100メートルで行われるようになった1998年以降の最速タイムより2秒1も速いものだった。
 ワイルドフラッパーは重賞初挑戦となった前走のTCK女王盃JpnⅢで女王メーデイアの2着に迫った馬だ。今回、念願の重賞初制覇を飾り、今後もダートグレード路線を中心に使っていくという。「GⅠを勝てるくらいの素質はある」とデムーロ騎手。
 一方、2011年に牡馬との南関東二冠を制したクラーベセクレタはこのレースがラストランとなった。御神本訓史騎手を背に中団付近の外目を追走。2周目の3コーナー手前でペースが上がった時も食らいついていき、前3頭からは離されたものの地方馬最先着の4着。「関係者の方やファンの皆さん、そして僕自身も納得できる競馬をしたかったので、乗せていただいた中でも今日はそう思える競馬ができました。最後まで一生懸命に走ってくれて、本当に立派でした」(御神本騎手)。
 最近は少しもの足りない成績が続いていたが、それでも南関東の女王としての存在感は絶大だった。『最後にこの馬らしい走りをして欲しい』というのが、かかわる人たちに共通の願いだっただけに、最高の終わり方だったようにも思う。この後は、3月19日に船橋競馬場で引退式が行われ、生まれ故郷のノーザンファーム(安平町)で繁殖生活に入る。
 南関東のクラーベセクレタ時代が終わった。

C.デムーロ騎手
去年よりも筋肉がついて成長していたし、最後の直線ではビジョンを見てイージーな勝ち方ができると思いました。強かったので今日は乗っているだけでしたね。(久しぶりの南関東騎乗ですが)日本でのキャリアは南関東から始めさせてもらったので、すごく印象に残っているし懐かしい気持ちになりました。
松田國英調教師
底知れない心肺能力というかエンジンを積んでいる馬なので、その高い能力をどうやって引き出せるか試行錯誤をしながら調教に励んでいます。これからペルシャザールがドバイワールドカップに挑戦したり大きなレースが続いていくので、ワイルドフラッパーの調整なども生かして今後につなげていきたいです。

これがラストランとなったクラーベセクレタ(4着)

取材・文:高橋華代子
写真:宮原政典(いちかんぽ)、NAR