レースハイライト タイトル
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2013年6月26日(水) 大井競馬場 2000m

人気馬マークで直線差し切る
充実一途の5連勝でダート頂点へ

 上半期のダート頂上決戦・帝王賞JpnIは、中央所属馬6頭がいずれもJpnI/GI勝ち馬という充実のメンバーが顔を揃えた。しかしレース前にファンにとっての楽しみがもうひとつ、ボンネビルレコードの誘導馬デビューだ。ボンネビルレコードといえば、06年の4歳時から6年連続で帝王賞に出走し、5、1、2、3、3、4着という成績を残した。中央に在籍した時期もあったが、帝王賞出走時の鞍上には常に的場文男騎手があり、帝王賞を含めてダートグレード3勝の鞍上もまた的場騎手で、地方の、そして大井のボンネビルレコードという印象が強い。午前中から降り続いた雨が止むことはなかったが、それでも帝王賞の本馬場入場のころには霧雨程度になり、ボンネビルレコードは他の誘導馬を従える形で、初めての大役を無事にこなしていた。
 人気面では、中央6頭のうち5頭の単勝が一桁台で、テスタマッタが20倍。一方の地方勢は、前走大井記念圧勝のフォーティファイドが85倍だった以外はすべて単勝万馬券。そして結果もそのとおり、中央勢が上位6着までを占めることとなった。
 典型的な逃げ馬がなくどの馬がペースを握るのか、果たして武豊騎手に乗り替ったワンダーアキュートが、内目の3番枠に入ったこともあってハナを主張した。ぴたりと外の2番手につけたのが1番人気に支持されたニホンピロアワーズで、トーセンルーチェが続き、僅差2番人気のローマンレジェンドは内ぴったりの4番手。ホッコータルマエ、ハタノヴァンクールが続き、テスタマッタはそのうしろから掛かりぎみでの追走となった。
 直線を向いてもワンダーアキュートが先頭だったが、離れず追走してきたニホンピロアワーズに、3コーナー過ぎで外から進出したホッコータルマエと、この3頭に勝負は絞られた。
 残り200メートルを切ってニホンピロアワーズがワンダーアキュートをとらえにかかったところ、その2頭をまとめて交わし去ったのがホッコータルマエで、ゴール前では突き抜けた。
 勝負のポイントは、逃げたワンダーアキュートの武騎手が演出したペースにあったように思う。前半1000メートルは62秒4というスローな流れ。ところが後半は一転、6ハロン目から9ハロン目までは12秒前後の緩みのない正確なラップを刻むと、最後の1ハロンも12秒6で上り、後半1000メートルは60秒6という緩みのないペース。「思ったよりうしろから早めに来られて、1、2着の馬が強かった」という武騎手にしてみれば、後続に脚を使わせる勝ちパターンに持ち込んだものの、平均ペースでも最後まで脚を使えるニホンピロアワーズに、さらには連勝中のホッコータルマエの充実ぶりに屈したということになるのだろう。
 やや離れての4着だったハタノヴァンクールは、勝った川崎記念JpnIのレースぶりのとおり、スローに流れて最後の瞬発力勝負に持ち込めないと厳しい。テスタマッタは、やはり2000メートルの流れは合わない。中央勢では最下位の6着に沈んだローマンレジェンドは、「この時計では厳しい。パワーで走る馬だから、スピードも兼ね備えていないと今日のレースは勝てない」と岩田康誠騎手。たしかに、ローマンレジェンドが勝ってハタノヴァンクールが半馬身差で2着だった昨年末の東京大賞典の決着は、重馬場でも2分5秒9。今回は中盤からペースアップしての2分3秒0という流れが、中央6頭の中でも上位3頭と4着以下の明暗を分ける結果にもなった。
 地方勢最先着は、昨年の帝王賞同様にトーセンルーチェで7着、そしてフォーティファイドが8着。同じ大井2000メートルでこの2頭がハナ差の接戦を演じた金盃の勝ちタイムが2分7秒4だっただけに、2分5~6秒というタイム的にも力を出しきった結果といえよう。
 勝ったホッコータルマエは、ダートグレード5連勝で、JpnIも2連勝。夏は休養して、秋の最大目標はジャパンカップダートGIとのこと。「調教をするたびに馬が力をつけていて、レースをするたびに強くなっています」と西浦勝一調教師。今年になっての充実ぶりが、そのまま結果につながっているということだろう。とはいえ2、3着馬との差はわずか。ペースや展開次第では、ハタノヴァンクールやローマンレジェンドも巻き返してくるはず。さらに新興勢力の台頭もあるかもしれない。秋のダートJpnI/GI戦線は、さらに盛り上がりそうだ。
幸英明騎手
返し馬は良かったので、馬体増も問題なかったと思います。こういう馬場は、どちらかというと得意かなと思っていました。前の2頭よりも手ごたえはあったので、勝てるんじゃないかなと思いました。まだ僕もこの馬の強さを把握し切れていないというか、まだ底を見せていないので、これからが楽しみです。
西浦勝一調教師
今日はまた馬がすごく良くなっていました。予定通りニホンピロアワーズを前に見ながら運ぶことができて、幸君が理想的なレースをしてくれました。去年は精神的な面でまだ力を出し切れていなかったのが、今はほんとうに身が入ってきて、この馬のいいところがでてきていると思います。

誘導馬デビューした元帝王賞馬ボンネビルレコード(写真手前)

取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(森澤志津雄・岡田友貴)、NAR