dirt
2014年4月2日(水) 大井競馬場 1200m

直線一瞬にして突き抜ける
断然人気の新星6歳馬が完勝

 今年の東京スプリントJpnⅢの地方勢は、短距離の交流重賞で優勝経験のあるナイキマドリードやセイントメモリー、全日本2歳優駿JpnⅠ・2着馬で、前走のフジノウェーブ記念を快勝したジェネラルグラントなど、南関東から短距離の精鋭達が顔を揃えた。
 対するJRAからは、4年連続出走のセレスハントや、セイクリムズン、ティアップワイルドというベテラン勢に、南関東初登場のパドトロワ、ノーザンリバーの5頭が参戦した。
 そんな中、断然人気に支持されたのは3走前にカペラステークスGⅢを勝っているノーザリバーで、単勝オッズは1.5倍。2番人気は前走の黒船賞JpnⅢで1年ぶりの勝ち星をあげたセイクリムズンで3.2倍。重賞2連勝中の船橋の4歳馬ジェネラルグラントが6.9倍で続いた。
 注目の先行争いは、初ダートのパドトロワが何が何でもの構えで先手を主張。スタートダッシュをきかせたジェネラルグラントが3番手にスムーズにつけた。外枠から先行できなかったセイントメモリーは好位の外を追走し、その内側にノーザンリバー、最内にナイキマドリードが位置取り、セイクリムズンはこれら前の集団を見ながら中団で脚を溜めていた。
 直線に入ると、満を持してジェネラルグラントが先頭に立った。この時ノーザンリバーは前が壁になり抜け出すところがない様子。しかし外に切り替え進路が開かれると、待ってましたとばかりに一気に突き抜け、一杯になったジェネラルグラントをあっさり交わした。セイクリムズンもそこから追い込んできたが、「自分の競馬はできたけど、直線は相手にビューっと行かれちゃったからね」と岩田康誠騎手は仕方なしの表情。ノーザンリバーが2着のセイクリムズンに3馬身差をつけて完勝という結果となった。
 これで重賞3勝目、ダートグレードは2勝目となったノーザンリバー。前走のフェブラリーステークスGⅠでは、勝ち馬から0秒4差の4着と健闘した成長著しい6歳馬だ。戦歴を辿ってみれば、3歳時にアーリントンカップを制覇し、皐月賞、日本ダービーまで駒を進めた素質の持ち主。日本ダービーの後骨折し、約1年9カ月の長期休養を経ることになったが、蛯名正義騎手は、「休みが長かった分、体がまだまだ若いです。前回乗ったときより馬が良くなっていましたし、伸び代は十分あります」と今後のさらなる成長を期待していた。古豪がひしめくダートスプリント戦線に新星の出現だ。
蛯名正義騎手
直線では内に押し込められる形になり一瞬ヒヤッとしましたが、外に出てからは期待通りの伸びでした。前回騎乗した時より体の使い方がよく、弾んでいる感じですごくいい雰囲気でしたね。いろんな競馬ができるタイプですし乗っていて安心感があります。人間の指示に従ってくれて従順で性格のいい馬です。
浅見秀一調教師
 



 地方馬最先着の3着には、10番人気のアルゴリズムが入った。スタートで出遅れて後方からのレースとなったが、直線では馬群の中から伸びてきた。レースから戻ってくると開口一番「走る馬だねぇ!」と鞍上の町田直希騎手。今回がJRAからの転入初戦で、移籍前は障害レースに出走していたが、元々はダート1400メートルで5勝を挙げオープンでも好走実績のある馬。新天地の南関東で、これから本来のスピード能力を発揮してくれそうだ。
 そして、注目を集めたジェネラルグラントは直線でぴたっと止まり5着だった。しかし石崎駿騎手は、「勝ちに行ったので仕方ありません。JRA勢に対抗するにはもっとこの馬自身の地力をつけなくてはいけませんが、短い距離なら通用するスピードは持っています」と前向きな表情だった。

取材・文:秋田奈津子
写真:宮原政典(いちかんぽ)、NAR