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2014年5月6日(振・火) 園田競馬場 1870m

2番手で折り合う理想の展開
ゴール前しぶとく差し返す

 この日の園田競馬場での関心事のひとつに、場内でも放映されていた前日のかしわ記念JpnⅠがあった。フェブラリーステークスから、かしわ記念と、GⅠ/JpnⅠを連勝したコパノリッキーは、昨年のこの兵庫チャンピオンシップJpnⅡを圧勝した馬。その2着だったベストウォーリアも2日前、東京競馬場のダートオープン特別で強い勝ち方を見せていた。兵庫チャンピオンシップは、JRAも含めた3歳馬による最初のダート交流重賞で、JpnⅡ格付けでもあり、年々注目度が高まっている。今年のJRA勢は、ダート3勝馬2頭を含め、5頭中4頭がダートで勝利経験があるというメンバーが揃った。
 対する地方勢は、重賞を勝っているのが地元のニホンカイセーラと、高知のクロスオーバーの2頭のみ。ニホンカイセーラは兵庫一冠目の菊水賞で2着に6馬身差をつけて逃げ切ったが、今年はこの世代の実績上位馬3~4頭が不在となっての争いだった。
 そのことはファンもよくわかっていたようで、JRAの5頭でもっとも人気のなかったフジインザスカイの単勝が28.9倍なのに対し、地方馬はすべて単勝万馬券という極端なもの。結果もそのとおり。JRAの5頭が掲示板を独占し、地方最先着(6着)のクロスオーバーに大差がついた。
 好スタートから逃げたのはエスメラルディーナ。エキマエが2番手で、マキャヴィティも続いた。地方勢では、クロスオーバーがマキャヴィティと並んで3番手の内を追走。1周目スタンド前のペースが落ちたところでニホンカイセーラが掛かりぎみにその先行集団の直後に迫った。しかしその地方馬2頭の見せ場も向正面まで。3コーナーからはJRA勢5頭による争いとなった。
 直線を向いてもエスメラルディーナが先頭だったが、エキマエがすぐに並びかけ、3~4コーナーで外からまくってきたランウェイワルツがこの2頭をとらえて一旦は先頭に立った。しかし2番手を楽に追走したエキマエにはまだ余力があり、ゴール前でグイッと差し返しての勝利。ランウェイワルツはクビ差の2着。1番人気に支持されたエスメラルディーナは最後に失速して2馬身半差の3着。終わってみれば、ダート3勝馬のワンツーという決着だった。
 勝ったエキマエの中川公成調教師は、中央・地方を通じてこれが重賞初制覇。気性面が成長して、レースに集中できるようになったことを勝因として挙げた。乗替り初騎乗の戸崎圭太騎手は、直前の土日で5勝を挙げ、JRAリーディングのトップに立ったという勢いもあったかもしれない。
 2着のランウェイワルツには、昨年地方の全国リーディングとなった地元の川原正一騎手が起用された。中団から一気のまくりで、「先頭に立った時は勝ったと思った」と川原騎手。それだけに差し返されたのは悔しかったようだ。
 3着のエスメラルディーナは、JRA桜花賞の優先出走権を手にしながらのここへの参戦。ダートへの期待のほうが大きかったこともあったが、芝では脚元への不安もあったようだ。「距離は1600メートルまでかなあ」(斎藤誠調教師)とのこと。
 地方馬にとっては残念な結果だったが、地元兵庫勢ではこの世代トップの実力と目された、トーコーポセイドン、トーコーガイアらが復帰するであろう三冠目・兵庫ダービーでのレースぶりに期待したい。
戸崎圭太騎手
スタートがよければ行ってしまおうかとも思っていたんですが、相手が速かったので無理せず2番手から。砂を被らない位置で思い通りの競馬ができました。道中の手ごたえもよく、最後はしぶとく差し返す根性を見せてくれました。距離的には2000メートルまでは問題ないと思います。
中川公成調教師
新馬戦のときは立ち上がったりするところもあったんですが、ブリンカーをつけるようになってから、レースに集中して前に行けるようになりました。普段の調教でも大人になって、気性面の成長が大きかったと思います。厩舎に帰って、馬の様子を見ながら次を決めたいと思います。



取材・文:斎藤修
写真:桂伸也(いちかんぽ)、NAR