2015年8月15日(土) 帯広競馬場

障害ひと腰で後続を寄せつけず
ウンカイ産駒が古馬重賞を席巻

 ばんえい競馬の夏の大一番、ばんえいグランプリ(BG1)。ファン投票で選ばれた7頭と通算賞金上位3頭が出走。お盆開催で、観光客や帰省客の姿もみられ、この日の帯広競馬場の来場者は4,055人とにぎわった。
 昨年の覇者フジダイビクトリー、インフィニティー、オレノココロ、ファン投票1位のキタノタイショウがレースを引っ張る展開。馬場水分は1.5%だが数字以上に重く感じられ、各馬小刻みにゆっくりと進む。第2障害には1分19秒で到達し、最初に仕掛けたのはフジダイビクトリー。ひと腰で越え、そのまま力強い脚色でゴールまで押し切り、2着に7秒差をつけ、単勝2.6倍の1番人気に応えた。勝ち時計は2分30秒7。
 フジダイビクトリーと並んで障害を降りたインフィニティーは残り30メートルで停止し、その隙に5歳のオレノココロとコウシュハウンカイが追い上げる。今季の古馬重賞勝ち馬3頭で決まるかと思いきや、オレノココロがゴール線を越える十数センチ手前のところで両膝を付いて止まった。2着コウシュハウンカイ、3着はインフィニティー。重賞で10番枠の不利が続くキタノタイショウは7着だった。ファン投票でA2クラスから選出されたライデンロックは10着だったが、第2障害とゴール後の歓声はひときわ大きかった。体調を崩していたが、もとはオープン馬。久々の重賞出走にファンも胸を熱くしただろう。
 フジダイビクトリーは文句のつけようがない強さ。皆川公二調教師は開口一番、「抜けてるもんね!」と笑顔を見せた。寄木貴広厩務員をはじめ、一丸となって馬を管理、応援するチームワークが厩舎の特徴だ。「闘争本能がすごい」と松田道明騎手はいう。自分から行きたい、という気持ちが強くて抑えるのが大変だそうで、息を入れることが重要なばんえい競馬では、騎手の手腕が試される馬。名手だからこそのレースぶりだろう。
 生産者の本別町・本寺政則さんは競馬場でレースを見守った。「危なげないレースで安心して見られた。2着以下を見る余裕があった」と強さに舌を巻く。生産者の高齢化でばん馬の生産頭数が減少する中、41歳の若手はばんえいの魅力や馬文化を知ってもらおうとインターネットで発信。馬以外にも、牛や豚などの畜産業や肉の販売を行い、農業体験に来た若者はフジダイビクトリーの名を覚えて帰っていく。「いろいろな人に後押しされています」と話すが、本寺さんを見ていると、努力を勝負の神様が見ているのではないかと思わせる。脂が乗った7歳馬の目標はばんえい記念だ。
松田道明騎手
こんなに2着と差がつくとは思わなかったです。馬が一番行きたいと思った時に合わせようとタイミングを見計らって、他の馬は気にせずに仕掛けました。思った以上に体調がよかった。今年の夏は暑かったし、(馬体重)10キロ減でおさえたというのは厩舎の人たちも苦労してきたと思う。
皆川公二調教師
ばんえい記念後の後遺症がなかったのがよかった。ただ、今回は体調を崩して7割の出来。10割ならゴールの時、他の馬が2障害にいるわ(笑)。気性も良く素直で、こんなに管理しやすい馬はいない。これからはハンデが重くなるからレースを選んでいくことになるかな。狙っているのはばんえい記念です。

 今季の古馬重賞はフジダイビクトリー、オレノココロ、コウシュハウンカイのウンカイ産駒3頭が入れ替わり1、2着を独占。4歳重賞の柏林賞もウンカイ産駒のワンツーで、リーディングサイヤー・ウンカイの活躍が続く。
 大井競馬場でもこの日、ばん馬が登場してのイベントが行われた。南関東での発売がある土曜ということもあり、ばん馬の魅力に触れつつレースも楽しめた。全国にばんえい競馬の魅力が広がっていくことを期待したい。

取材・文:小久保友香
写真:中地広大(いちかんぽ)