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2015年12月16日(水) 川崎競馬場1600m

中団から進出しゴール前抜け出す
ダートに転向して4連勝で頂点に

 去年の凍えるような寒さとは打って変わって、コートを着ていると暖かいくらいの気候だった。川崎競馬場名物コスプレ誘導馬たちのトナカイに見立てた装いも、この時期ならではのお馴染みの光景になっている。そんな華やかな誘導馬たちにエスコートをされ、全国から集まった強豪2歳馬たちは、元気よく馬場に登場した。
 66回目を迎えた伝統の一戦、全日本2歳優駿JpnⅠ。ダート界をにぎわせた活躍馬たちが勝ち馬として名を連ねる出世レースだ。
 今年は地方勢も粒ぞろいだったが、人気は中央馬が上位を独占。芝からダートに転向後3連勝で兵庫ジュニアグランプリJpnⅡを制したサウンドスカイが最終的には1番人気となり、期待通りの強さでダートでは負けなしの4連勝を飾った。
 「装鞍所でも暴れていたくらい元気があって、返し馬もよかったですが、ナイターに戸惑っている感じはありました」と、サウンドスカイとコンビを組んだ戸崎圭太騎手は振り返る。
 レースは、押し出される形で平和賞の勝ち馬アンサンブルライフが先頭で進めていき、前半600メートル通過が37秒0、1000メートルが63秒0というスローペースの中、サウンドスカイは馬群の中団を追走した。
 「少し一生懸命になるところがあるので折り合いには気をつけました。スタートは出たんですが、その後の進みがよくなくて、少し促したら1コーナーで気合が乗ったのでちょっと失敗したかなと。向正面に入ってからはリズムよく走ることができました」(戸崎騎手)。
 アンサンブルライフが快調に逃げていく中、勝負どころからオーマイガイやエネスクなども上がっていき、サウンドスカイも抜群の手応えで進出。「末脚は確かなものがあるので自信を持って、いいパフォーマンスを見せられたかなと思います。この馬らしい競馬ができました」(戸崎騎手)。
 直線では、サウンドスカイが、逃げ粘るアンサンブルライフに並ぶ間もなく抜き去って、余裕たっぷりにゴール。走破タイムは1分43秒1(稍重)。2着には後方から一気に伸びてきたレガーロが入り、アンサンブルライフは惜しくも3着だった。
 ダート2歳チャンピオンに輝いたサウンドスカイ。気になる次走は未定だが、佐藤正雄調教師は、再び芝路線に挑戦したい思いもあるそうだ。今後ダートと芝でどんな存在感を示していくことになるのだろう。
 一方で、地方最先着の3着に入ったアンサンブルライフの健闘も光った。レース前から、「ここに入っても通用する力はある」と管理する小久保智調教師も左海誠二騎手も公言していて、全国区の実力であることを証明した形だろう。
 「まだ馬が子供すぎるし緩いところもある中でたいしたもの。スピードがあるから結果的には逃げる形になったけど、好位からでもよかったし、他の馬が行ってくれればもっと違う結果になったと思う」(小久保調教師)。今後については未定だが、中央遠征もひとつのプランとして挙げられている。
 アンサンブルライフの父は、今年2月に老衰のため28歳で亡くなったアジュディケーティング。南関東のサンデーサイレンスとも称された偉大なる父の最後の大物とでも言うべきこの馬が、小久保調教師の手腕でどう鍛え上げられていくのだろう。
 4着にはトロヴァオが入り、南関東勢2頭が掲示板を確保した。
 ここ数年の傾向でも、全日本2歳優駿JpnⅠで上位に入った地方馬は、翌年の南関東クラシックをはじめさまざまなところで活躍を見せている。これから大きな夢を見せて欲しい。
 なお今回は、鎌倉記念を制するなどデビューから6戦無敗のポッドガイが、左肩跛行のために出走を取消した。最終追い切り後に歩様がよくなかったために大事を取ったもので、無事に出走していたらどんな走りをしたのだろうという想いは尽きない。この楽しみは来年以降に取っておきたいと思う。
戸崎圭太騎手
最初に乗せていただいた時から素質を感じていたし、ジーワンを勝たせていただいてうれしいです。気性的にまだ幼いところもあるのでこれから成長してくれるでしょう。人気通り勝つことができてよかったです。距離はこのあたりがいい感じもしますが、競馬が上手なので対応してくれるとも思います。
佐藤正雄調教師
今回は強い馬たちが集中していたので厳しい競馬になるかとも思ったんですがよく頑張ってくれました。あれよあれよという間に頂点に上り詰めてくれて本当にビックリしています。オンオフがしっかりしていて2歳らしくない精神面の持ち主で、その点が勝負強さに出ているのではないかと思います。

川崎競馬場名物コスプレ誘導馬
地方最先着の3着に入ったアンサンブルライフ

取材・文:高橋華代子
写真:宮原政典(いちかんぽ)