dirt
2017年2月1日(水) 川崎競馬場 2100m

マイペースの逃げで後続を完封
ジーワンの舞台で重賞初制覇

 ダート界の雄として一時代を築いたホッコータルマエ。昨年の川崎記念JpnⅠでは3連覇を飾り、国内最多のGⅠ/JpnⅠ・10勝という偉業を達成した。NARグランプリでは2015年まで3年連続でダートグレード競走特別賞を受賞し、2014年にはJRA賞最優秀ダートホースに選出されている。
 あれから1年が経った。ホッコータルマエは引退を表明し、今年から優駿スタリオンステーションで種牡馬生活をスタートさせる。この川崎記念JpnⅠ当日の最終レースには、『ホッコータルマエ号スタッドイン記念』と冠したレースを実施。川崎記念JpnⅠ・3レース分の優勝肩掛けが展示され、開催中には写真展が実施されるなど、ホッコータルマエのこれまでの偉業を称える開催にもなった。
 今年の川崎記念JpnⅠは、その王者と昨年タイム差なしの死闘を演じたサウンドトゥルーが満を持して参戦。昨年はJRA賞最優秀ダートホースとなり、単勝1.6倍の圧倒的な支持を集めていた。中央所属馬には重賞未勝利馬もいて例年に比べると手薄感は否めなかったが、そこからニュースターが誕生するのも中央勢の層の厚さだ。
 クリストフ・ルメール騎手がエスコートした5番人気オールブラッシュがサウンドトゥルーを撃破した。昨年秋にはまだ1000万下を勝ったばかりの上がり馬で、これがGⅠ初挑戦。距離も未知の部分が大きかったのだが、そうしたことを微塵も感じさせないスピードとパワーを兼ね備えた走りで他馬を圧倒した。
 オールブラッシュは抜群のスタートを切って先手を取っていくと、そのまま一人旅。1周目のスタンド前で、横山典弘騎手のミツバがスーッと上がっていくシーンも見られたが、オールブラッシュは自分のペースを守って淡々と進めていった。レースの中盤で14秒1のラップを刻んでスローに落とすなど、ルメール騎手の絶妙な騎乗も光った。
 「いいスタートを切ったのですぐに先手を取って、道中はとてもリラックスして走ってくれました。プレッシャーも受けましたが、馬も反応してくれていたので気になりませんでした」(ルメール騎手)。
 オールブラッシュの後ろにはミツバやケイティブレイブ、コスモカナディアンなどが追走していたが、オールブラッシュの逃げは変わらず。「最後まで反応はとてもよかったし、ゴールまで止まらなかったので楽に勝つことができました。逃げるのが大好きな馬なので完璧なレースでしたね。大きなステップでしたが能力はあるので自信を持って乗りました」(ルメール騎手)。
 オールブラッシュは2着のサウンドトゥルーに3馬身差をつけての勝利。勝ちタイムは2分14秒6(良)。3着にはコスモカナディアンが入った。
C.ルメール騎手
前々走から馬が良くなっていて、今日も返し馬から超元気でした(笑)。今年はGⅠでも人気になっていくと思います。1600から2000メートルまで持ち味を発揮してくれるでしょう。このレースは2度(ヴァーミリアン、カネヒキリ)勝っているのですが久しぶりに勝つことができてうれしいです。
村山明調教師
ずっといい競馬はしてくれていましたが、さすがにGⅠはまだ届かないと思っていたので、うまくいきました。年末に熱が出て休養に出して立て直しているので、見た目は良さそうでしたが中身は心配でした。以前に比べると少しずつ体力はついてきています。乗り方はこの馬を知っている騎手なので任せました。

 この後は名古屋大賞典JpnⅢを視野に入れているそうだが、あくまでも馬の状態を見て慎重に決めていくそうだ。大目標はチャンピオンズカップGⅠとのこと。
 一方、人気のサウンドトゥルーは後方3番手から進出して最後に猛追するも2着までが精一杯だった。「トモを滑らせる感じで、イメージより勝負どころでうまく上がっていけませんでした」と、振り返った大野拓弥騎手は不完全燃焼だったろう。脚質的にどうしても展開次第の部分もあるのだが、安定感では群を抜いている。昨年のJRAダート・チャンピオンの巻き返しにも期待したい。

取材・文:高橋華代子
写真:いちかんぽ(築田純、早川範雄)