dirt
2017年3月1日(水) 川崎競馬場 2100m

直線力強く伸び後続を突き放す
重賞2連勝で女王候補に名乗り

 3月に入り少しずつ春の気配を感じつつも、まだまだ冬の寒さが残る川崎競馬場で、牝馬によるJpnⅡ、エンプレス杯が行われた。昨年、一昨年と連覇を飾ったアムールブリエが引退し、今年のダート牝馬戦線を牽引していくのはどの馬なのだろう? そんな女王候補と言える存在が、このレースで確信めいたものになった。
 JRAの4歳馬、ワンミリオンスだ。前走のTCK女王盃JpnⅢでは、JBCレディスクラシックJpnⅠ連覇を果たしているホワイトフーガを破り、その名をファンに印象づけた。今回ホワイトフーガは不在だが、その前走の再戦に近いメンバー構成。当然のことながら単勝1.8倍と断然の支持を集めた。そしてワンミリオンスは、その期待にきっちり応えるパフォーマンスを披露したのであった。
 レースは名手たちの駆け引きが展開に表れ見応えのあるものとなった。
 逃げ馬不在で注目の先行争い。ゲートが開くとリンダリンダがゆっくりと先手を取って主導権を握り、序盤から落ち着いたペースに見えた。
 スタンド前に入ると、リンダリンダの吉原寛人騎手はさらにペースを落とした。そこで動いたのが、森泰斗騎手のヴィータアレグリア。中団から一気に前へと進出し、先頭に踊り出た。それを追うように、好位につけていた戸崎圭太騎手のワンミリオンスも動き、2番手まで押し上げた。リンダリンダは3番手となり、4番手にタイニダンサー、中団後方を追走していたブランシェクールや、タマノブリュネットは向正面からペースを上げた。
 直線に入ると、堂々と先頭に立ったのがワンミリオンス。上がり最速で力強く伸び、後続を突き放しての快勝となった。2馬身差の2着にリンダリンダが入り、ヴィータアレグリアが3着に粘った。
 レース後、それぞれの展開について語ったジョッキーたち。「逃げも選択肢のひとつでした。ペースを落としたところで、一気に外から来られてしまいました。こればかりは駆け引きだから仕方ないです」と吉原騎手。
 「いい感じにポジションを上げられました。そのまま1頭で行けたら良かったんですが、戸崎騎手がそうはさせてくれませんでしたね」と森騎手。
 そして、「後半いつでも動ける位置にいたかったのでついていきました」という戸崎騎手に軍配が上がった。
 これで重賞2連勝となったワンミリオンス。JRAではダートは1400メートル戦しか走ったことがなく(芝では1600メートルを1戦経験)、TCK女王盃JpnⅢでは、「距離だけが不安だった」と口にしていた陣営。今回、さらに300メートルの距離延長ということでは心配もあったようだが、それも杞憂に終わった。今後はこのまま牝馬のダートグレード路線を歩み、最大目標はJBCレディスクラシックJpnⅠになりそうだ。この勢いのまま女王に君臨することになるのだろうか。次走は、4月12日に船橋競馬場で行われるマリーンカップJpnⅢを予定している。
 ワンミリオンスは、11日前にこの世を去ったばかりのゴールドアリュールの仔。小崎憲厩舎のゴールドアリュール産駒といえば、重賞19勝、うちGⅠ/JpnⅠ・6勝の名馬、スマートファルコンの活躍が記憶に新しい。「縁あってゴールドアリュール産駒とは相性がいいです。ゴールドアリュールには感謝の気持ちでいっぱいです」と小崎調教師は語った。ゴールドアリュールの死後、産駒の活躍が非常に目立っている。あらためて、その偉大さを感じるところである。
戸崎圭太騎手
大勢の方に支持され勝つことができて良かったです。今日は前走より少しテンションが高かったのですが、ゲートは落ち着いていました。直線もステッキを入れたら反応が良かったですし強いレースでした。どんな競馬でも対応ができて、もまれても怯まず走ってくれて安定性があり、乗りやすい馬ですね。
小崎憲調教師
本当に偉い仔ですね。体調の波がある馬ではないので前走の後も順調でした。流れに乗った競馬をしてもらいたいと思っていたので理想的なポジションでしたね。直線では距離不安が少し頭をよぎりましたが安心して見ていました。以前より後ろ脚がしっかりしてきましたし、まだまだ伸びしろはあります。

地方最先着の2着となったリンダリンダ

取材・文:秋田奈津子
写真:築田純(いちかんぽ)