2016年8月14日(日) 帯広競馬場

障害3番手から差し切り快勝
ペースを読んだ好判断が光る

 今年の帯広は春先から長雨が続いた。農業の盛んな十勝では収穫が心配だが、馬にとっては比較的過ごしやすい夏となった。レース直前の1週間ほどはぐっと気温が上がり、北海道にもやっと遅い夏が訪れていた。
 帯広一市開催10年目を迎えたばんえい競馬の真夏の大一番、ばんえいグランプリはファン投票の上位馬と賞金上位馬によるレース。ファン投票1位のセンゴクエースはまだ4歳ということで大事をとり不出走だが、10位までの馬から9頭が出走するドリームレースとなった。ばんえい競馬の売上げ増とともに、優勝賞金も昨年の150万から200万に増額された。
 前日には、今年からスタートした重賞出走馬の騎手が意気込みを語る『ジョッキーシャウト』でレースを盛り上げた。当日の競馬場は、昨年の同レースより千人以上も多い5,291人の観客でにぎわい、ファンファーレでは拍手もおきた。
 1番人気は3連覇を狙うフジダイビクトリー(単勝3.2倍)で、コウシュハウンカイ、ニュータカラコマ、オレノココロまでが差のない単勝3~4倍台という混戦ムード。制したのはファン投票2位、単勝4番人気のオレノココロで、勝ちタイムは2分14秒4だった。
 レースはそろったスタートで、第1障害も10頭がほぼ並んだ。道中ニュータカラコマとコウシュハウンカイが先行し、各馬入れ替わりながら細かく刻んで進む。馬場水分は0.8%の重馬場。オレノココロの鈴木恵介騎手は「この馬場ではペースが早いと思った」と後方からじっくりレースを進めた。
 各馬が2障害手前に到達するより早く、障害で仕掛けたのがコウシュハウンカイ。フジダイビクトリーとニュータカラコマが続く。オレノココロが障害の上に前脚をかけた時には、コウシュハウンカイはすでに山を降りていたが、オレノココロは障害をひと腰で越えて3番手で降りる。コウシュハウンカイとニュータカラコマの攻防かと思いきや、残り20メートル地点で2頭の脚色がにぶりはじめ、前半脚をためていたオレノココロが一気に抜け出した。
 全体的にペースが早く、障害で苦戦する馬が多かった。人気馬4頭のうち3頭の枠が並び、鈴木騎手も「駆け引きが難しい」という中、慌てずに後方から前の2頭を見てレースを運んだ。馬場とタイムを読んだ鈴木騎手の判断が光った。
 2着にはニュータカラコマが入り、3着争いはほぼ同時、コウシュハウンカイがフジダイビクトリーを振り切った。
 今年度ここまでの6重賞のうち4レースが槻館重人厩舎の勝利。オレノココロのほかセンゴクエースやカイシンゲキ、マルミゴウカイなどの名馬をそろえる。オレノココロは暑さに弱く、槻館調教師は午前2時ころの涼しい時間に調教することで体調をキープした。馬体重マイナス10キロも想定内だという。
 鈴木騎手はこの日5勝。開幕当初に義父である元騎手の鈴木勝堤さんが亡くなり騎乗を休んだ時期もあったが、順調に勝ち星を重ね、ばんえいリーディングの座を取り戻した。
鈴木恵介騎手
コウシュハウンカイとニュータカラコマの2頭を見ながら進めました。ペースが早いと思ったので、慌てず自分のレースをしました。前回障害でミスをしたので、今回は特に慎重になったことが今日の結果につながりました。
槻舘重人調教師
障害で膝を折る癖があるので、それだけが不安でした。暑さに弱いので、夏バテしないよう管理をしました。ファン投票も2位で、注目していただきありがたいです。涼しくなるまで少し休養する予定です。



取材・文:小久保友香
写真:NAR、中地広大(いちかんぽ)