1. Presented by National Association of Racing
  2. 地方競馬のオンライン情報誌ウェブハロン
  3. ダートグレード競走を中心としたレースハイライトや、シリーズ競走等の特集、各種連載など盛りだくさんの情報をお届けします。

クローズアップ

当コーナーでは、地方競馬に関するイベントや注目レース等の
気になる話題を写真と共にご紹介致します。

2020年1月10日(金)

地方騎手が表彰台を独占
優勝はファイナル2勝の岩本騎手

出場騎手が増え昨年以上に厳しい争い

3年目を迎えたヤングジョッキーズシリーズで昨年と状況が変わったのは、出場騎手がの人数が増えたこと。JRAでは3月付で7名、地方では4月付で10名、ともに前年より多くの新人騎手(再取得などを除く)がデビューした。また南関東では50勝までだった減量騎手の規定が全国と足並みを揃え100勝になったことで減量が復活する騎手もいた。これらによって出場騎手は、JRA騎手は前年の19名から22名に、地方騎手は22名から29名となった(負傷や辞退の欠場者も含む)。

トライアルラウンドの舞台は11競馬場22レースというのは変わらないため、必然的にひとりあたりの騎乗数が減ることになる。それで激戦区となったのが、前年の11名から15名に増えた地方・東日本だ。地方・西日本も11名から14名になったが、西日本は開催場が6場(12レース)であるのに対し、東日本は5場(10レース)なのでなおさらだ。トライアルラウンド最終戦の川崎が、前年までの12頭立てから14頭立ての設定になったのはこのためだろう。ファイナルラウンド(大井・中山)は当初から地方・JRA各7名ずつの14名によって争われているが、トライアルラウンドで14頭立ては初めてのことだった。

地方・東日本では、前年は少なくとも5レース、多い騎手では8レースに騎乗できたが、2019年は5レースに騎乗できたのが15名中2名だけ、それ以外の13名は4戦のみの騎乗だった。「上位の得点を得た4競走分の合計得点によって順位を決定」というルールゆえ、5レース以上の騎乗があれば下位着順のいくつかはカウントから除外されるが、4レースのみの騎乗ではすべてが合計得点の対象になる。それゆえの厳しい争いだ。

地元で躍進した騎手が東・西のトップに

今回のトライアルラウンドでは、JRA13勝に対して地方9勝と、全体ではJRA騎手の活躍が目立った。ただ地方騎手では、地元優位というのはこれまでの傾向どおり。

東日本では全10レースのうち地方騎手が4勝。藤本現暉騎手(船橋)、岩本怜騎手(盛岡)、小野楓馬騎手(門別)、櫻井光輔騎手(川崎)がそれぞれ勝利を挙げた(カッコ内は勝利した競馬場、以下同)。藤本騎手の船橋を“南関東”とするなら、すべて地元での勝利だった。

西日本では全12レースのうち地方騎手は5勝。松木大地騎手(佐賀・園田)、出水拓人騎手(佐賀)、田村直也騎手(笠松)、木本直騎手(園田)と、3勝が地元騎手の勝利だった。

出場全騎手で最高ポイントを獲得したのが兵庫の松木騎手で100ポイント。松木騎手は前年までは高知所属での出場だったが、2019年2月21日付で兵庫に移籍。2015年にデビューして18年までの4年間で71勝だったのが、兵庫に移籍した19年は57勝。そのうち園田で54勝を挙げ、兵庫リーディング10位という活躍だった。高知所属時には金沢での期間限定騎乗もあり、そうしたさまざまな競馬場での経験が本シリーズでの活躍につながっているのだろう。

そして松木騎手が全体のポイントで1位だったため、地方・西日本は4名がファイナルラウンドに進むことになり、その4名を兵庫所属騎手が独占。たしかに地方・西日本14名のうち兵庫所属は6名と多かったのだが、それにしても上位独占には驚かされた。

騎手交流戦では騎乗馬の“クジ運”の影響も少なくないが、こうした長期間で争われるシリーズでは、また別のところでの運も結果を左右する。地方・西日本3位だった木本騎手は、笠松・東川慎騎手の負傷欠場によって、当初予定がなかった高知での騎乗が追加され、そこで3着に入ったポイントが大きかった。もしそれがなければ5位以下だった可能性が高い。

地方・東日本では、岩手の岩本騎手、川崎の櫻井騎手がともに52ポイントだったが、規定により岩本騎手が1位となった。岩本騎手は18年デビューの2年目だったが、デビュー年の48勝からこの年86勝と躍進。岩手リーディングでも5位に入る活躍だった。

松木騎手がダントツのポイントで地方では西日本4名、東日本3名がファイナル進出となったわけだが、前述のとおり地方・東日本はほとんどの騎手が4レースのみの騎乗。そうなると下位着順のポイントが合計ポイントから除外されることがなく、5~6レースに騎乗できた地方・西日本の騎手よりも平均的に合計ポイントは低くなる。そういう意味でも地方・東日本の騎手たちには厳しい条件だった。

なお、地方の新人騎手でファイナルに進出したのは兵庫の木本騎手ひとりだった。

JRAは東・西とも新人騎手が1位に

JRA全体のトップは、西日本の新人・岩田望来騎手と西村淳也騎手が87ポイントで並んだが、規定により岩田騎手が1位となった。東日本も1位は新人の小林凌大騎手で、菅原明良騎手も東日本3位でファイナルに進出。JRAは19年デビューの新人騎手の活躍が目立った。

近年、このシリーズが行われている影響なのかどうか、地方・JRAとも若手騎手の活躍が目立つようになり、特にこの年のJRA新人騎手は優秀だった。年末までの成績(いずれもJRAのみ)で、斎藤新騎手の42勝を筆頭に、岩田騎手37勝、菅原騎手31勝、団野大成騎手26勝と、新人7名のうち4名が20勝以上をマーク。なかでも父(岩田康誠騎手)が兵庫出身という岩田望来騎手はこの年、園田での32戦4勝を含め、地方の競馬場ではヤングジョッキーズシリーズを含め7競馬場で騎乗して53戦8勝という成績。その経験は、このシリーズを戦う上で生かされたことだろう。

一方、JRA・東日本1位だった小林凌大騎手はJRAでなかなか初勝利が挙げられず、トライアルラウンド船橋(6月18日)第2戦での勝利が自身の初勝利。トライアルラウンド浦和(10月9日)第1戦で2勝目も挙げた。そして待望のJRA初勝利となったのは、ファイナルラウンドを前にした12月15日のことで、デビューから187戦目(JRAのみ)。すでに地方で2勝を挙げていたのは支えになったに違いない。

ファイナルは全4戦を地方騎手が制す

今年も大井・中山で争われたファイナルラウンドでは地方騎手が活躍を見せた。ファイナルの全4戦を地方騎手が制したというだけでなく、大井第1戦を除く3戦で地方騎手がワンツー。それゆえ表彰台も地方騎手が独占という結果になった。

優勝は、大井と中山で1勝ずつ、計2勝を挙げた岩本騎手。勝った大井第2戦は単勝1.7倍の断然人気、中山第1戦も2番人気と、たしかに騎乗馬に恵まれた感じはあった。とはいえ、中山第1戦では好スタートを切ってスローペースの好位を追走し、3コーナーから一気にペースが上がったところでも追い出しを我慢するなど、中山での騎乗が初めてとは思えない冷静な騎乗だった。2着の松木騎手、3着の西村騎手は、さらにうしろから4コーナーでは2人とも9番手から伸びた。一方、早めに動いて3コーナー先頭の4頭は6着以下に沈んだ。前半はスローでも、先に動いた馬たちは仕掛けが早すぎた。

松木騎手は昨年のファイナル3位からひとつ順位を上げて2位。大井の第1戦を3番人気で制し、中山第1戦の2着は10番人気だった。大井第1戦は前2頭が競り合っての前半ハイペースで後方を追走。その2頭の脚色が鈍ると早めに位置取りを上げて直線で抜け出した。中山第1戦は岩本騎手のところで触れたとおり、追い出しを待って直線での末脚を生かした。レース全体の流れを読んでの好騎乗だった。

3位も昨年ファイナルラウンドを経験(6位)していた兵庫の長谷部駿弥騎手。大井1200メートルの第2戦では7番人気ながら積極的に前でレースを進めて直線で先頭。ペースもそれほど早くなく、勝ちパターンに思えたが、これは勝った岩本騎手の馬が強すぎた。2着はむしろ褒められる内容。中山第2戦は、向正面で後方から菅原騎手がかかり気味に位置取りを上げていったときにも惑わされず、そこで我慢したことが直線での伸びにつながり2着に入った。

そして表彰台には乗れなかったものの、中山第2戦を制したのが川崎の中越琉世騎手。2年前にもファイナルに出場して惜しくも4位。今回、順位こそ5位だったものの、中央で初勝利を挙げた喜びは大きかったようだ。

  • 斎藤修
  • 写真提供
  • いちかんぽ