北海道2歳優駿JpnⅢがダートグレードレースになった1997年以降の優勝馬は、北海道とJRAがそれぞれ11勝。過去22回で地方が12勝(北海道10勝、岩手と佐賀が各1勝)を挙げているエーデルワイス賞JpnⅢと同様に、地元北海道勢が実績を残している。
それが念頭にあるのか、新聞各紙は地元勢が優勢という見立て。2011年以来となる14頭立ては、JRA4頭と地元10頭という陣容になった。
この日の門別競馬場は午前中に少量の雨が降ったものの、馬場状態の発表は良。気温も北海道2歳優駿JpnⅢのパドックに出走馬が入ってきた午後7時25分の時点で17度ほどと、例年よりも暖かかった。そのためか「先週と違ってインコースも伸びる」(松井伸也騎手)というコンディション。出走馬のうち、前走で逃げていたのはJRAの2頭だけで、結果としてそのうちの1頭であるキメラヴェリテが逃げ切ったのは、馬場状態が要因のひとつになったのかもしれない。
ゲートが開くとキメラヴェリテが先手を取り、アベニンドリームが2番手。そのあとはバックストッパー、マイネルアストリアなどが追走して、2コーナーを曲がり終えたところでは先頭から最後方まで20馬身はあろうかという、縦長の隊列になった。
それでも2番手を追走した阿部龍騎手が「淡々とした流れでした」と振り返ったように、向正面で仕掛けた馬はなし。キメラヴェリテは鞍上の福永祐一騎手が「競りかけてくる馬もいませんでしたし」とレース後に話したとおり、マイペースのまま2着に1馬身半の差をつけて逃げ切った。
一方の2着争いは僅差の勝負。ゴール地点では、2番手のまま粘り込みを図るアベニンドリームと、3コーナーからインコースを通って上昇してきたピオノノが並んだ。首の上げ下げの差でアベニンドリームが2着に入ったが、ゴールの直後はピオノノが交わし切っていた。
それでもギリギリで2着に残った阿部騎手は「最後の直線ではアップアップでしたが、根性でしのいでくれましたね」と笑顔で話した。アベニンドリームは前走が川崎の鎌倉記念(2着)で、そこから長距離輸送をはさんでの中8日だったが「厩務員さんは前走より元気があると言っていました」とのこと。門別での重賞実績がないためか単勝8番人気という評価だったが、このレースを3勝している角川秀樹調教師の判断が光る結果になった。
逆に1番人気に推されたヨハネスボーイは8着で、3番人気のタイセイサクセサーは7着。ともに6番手あたりを進んでいたが、そこから大きく上昇することなくレースを終えてしまった。
ちなみに今年の1分56秒2という勝ち時計は、最近10年ではもっとも遅いもの。5番手追走から4着に入ったアジュバントの手綱を取った赤岡修次騎手が「前が止まらなかったですね」と話したように、馬場の傾向どおり、逃げ先行が有利という展開だった。そのなかでピオノノは3着に敗れたとはいえ、最後の直線で見せた差し脚は優秀。全兄がレパードステークスGⅢを制したハヤヤッコで、母の全姉に関東オークスJpnⅡなどを制したユキチャンがいるという血統の底力を感じさせた。
Comment
福永祐一 騎手
先手を取って、自分のペースで行ければと考えていたとおりの展開で、後ろから来られる前に3コーナーから仕掛けていきました。ときどき物見をしていましたが、期待していたとおりの走りでしたね。それよりも今日はとにかく、馬のコンディションがよかったことがいちばんの勝因になったと思います。
中竹和也 調教師
前走の1400メートルはちょっと短い感じがあったので、ここを狙って仕上げてきました。長距離輸送が心配だったので、レース前日に到着して臨むことにした点は気がかりでしたが、無事にこなしてくれました。それにしてもキズナ産駒は走りますね。このあとは全日本2歳優駿に進みたいと思っています。