2010年からグランダム・ジャパン古馬シーズンの対象レースとなり地方全国交流として実施されている読売レディス杯。10年以降、地元金沢勢の優勝は1回のみと他地区勢の活躍が目立っている。

今年も大井から2頭、兵庫から2頭、高知から1頭が金沢の地に集まった。人気もこの遠征馬たちが中心で、単勝2.5倍で1番人気は、このシリーズ第4戦の兵庫サマークイーン賞の勝ち馬で兵庫のエイシンエール。3.1倍の2番人気は、14ポイントを獲得し上位につけている大井のステップオブダンス。5.0倍の3番人気こそ、徽軫賞を勝っている地元のサノラブだったが、地元兵庫で好走が続いているエイシンテースティが6.9倍で4番人気に続いた。

この日の金沢市内は朝から激しい雨が降り、第1レースから水の浮いた不良馬場でレースが行われていた。

ゲートが開くとエグジビッツとサノラブの先行争いとなりエグジビッツがハナに立った。3番手にスプリングガールがつけ、直後にエイシンエール、それをぴったりマークするようにステップオブダンスが続き、好位集団の後ろにエイシンテースティが控えていた。

向正面で人気の2頭が上がっていき、ステップオブダンスのほうが3番手まで進出。3～4コーナーでは外から先行馬をとらえようという手応えだったが、そこに道中後方にいた大井のジェッシージェニーが内からするすると上がってきた。そしてジェッシージェニーはその勢いのまま直線で先頭に立つと、一気に突き放して2馬身半差で先頭ゴールイン。藤田凌騎手の左腕が大きく上がった。

2着は外から伸びた高知のスプリングガールで、1馬身差3着には大外から豪快な末脚を見せた地元のフジノナデシコが入った。最後伸びきれなかったステップオブダンスは4着。1番人気のエイシンエールは7着に敗れた。

勝ったジェッシージェニーと藤田騎手はともに嬉しい重賞初制覇。また、このレースは3年連続で大井所属馬が優勝となった。今年の春にJRAから移籍したジェッシージェニーは今回が移籍後初めての長距離輸送。ふだん、小林牧場から大井競馬場への輸送でも10キロくらい馬体重が減ってしまうような気難しい牝馬だということで、陣営も「単純計算で40キロくらい減ってしまうのではないか」と心配していたそう。しかし、今回の遠征ではマイナス8キロにとどめ、金沢競馬場に着いてからもいつもと変わらない様子だったとのこと。

また、勝負どころで内を狙って進出した藤田騎手の好騎乗も光った。「内に行くか外に行くか迷ったんですが、エキストラで2鞍乗ってみて、内外の差があまりないと感じたので思いきっていきました」と藤田騎手。また「金沢競馬は初めてでしたが、去年、期間限定騎乗をしていた佐賀競馬にも似ていて乗りやすいコースですね」とも話しており、これまでの経験が存分に発揮されたレースだったということだろう。

インタビューでは落ち着いた受け答えをしていた藤田騎手だったが「まだ重賞を勝った実感はまったくありません」とはにかんだ。そして、翌日にはヤングジョッキーズシリーズ・トライアルラウンド門別が控えているのだが、「大井で勝った時もいつも気持ちが高ぶって寝られないんです。今夜はしっかり寝ないと……、寝ます！」と初々しさも覗かせた。

アウェーの舞台で最高の結果を出した人馬。この勝利は今後の大きな糧となるに違いない。