ウェブハロン

ダートグレード競走を中心としたレースハイライトや、シリーズ競走等の特集、各種連載など盛りだくさんの情報をお届けします。

  • 第23回
  • 黒船賞 JpnⅢ

3.16 (火) 高知 1400m

ハルウララを超える売上げ
 期待の4歳が突き放し楽勝

近年、V字回復の売上げで、全国から注目を集めている高知競馬。黒船賞JpnⅢはその高知競馬で唯一行われるダートグレード。過去の黒船賞JpnⅢをたどれば、これまでの高知競馬の歩みが見て取れる。

2007年には資金不足の中、黒船賞JpnⅢを開催するために『かいばおけ支援金』と称して、ファンに寄付を求め、やっとのことで開催した。しかし翌08年には開催を休止。11年には東日本大震災の余波での中止もあった。しかし、このような困難な時期があり、それを乗り越える策を講じたことが、現在の隆盛に繋がっている。コロナ禍で昨年こそ無観客開催での黒船賞JpnⅢだったが、今年はJRAから武豊騎手、福永祐一騎手などスタージョッキーが参戦とあって、1300人の観客が集まった。

単勝1番人気は重賞初挑戦ながら、近5走で3勝の上がり馬スリーグランドで2.8倍、2番人気は2走前に久しぶりの復活Vを遂げたテイエムサウスダンで3.5倍、3番人気は過去に黒船賞JpnⅢで1、3着のサクセスエナジーで3.8倍、4番人気が南関東の雄モジアナフレイバーで5.3倍。この4頭が一桁台の人気を形成した。例年、苦戦を強いられる地元勢は今年3頭が出走。大将格のスペルマロンは7番人気だった。

レースは武騎手で約1年5カ月ぶりの復帰戦となったグリムが果敢にハナを奪うと、外から岩田康誠騎手のテイエムサウスダンが2番手。その後ろにモジアナフレイバー。序盤で好位を取れなかったサクセスエナジーは砂が深い内から前に進出。前走を逃げ切り、先行策も予想されていたスリーグランドは中団に待機した。

快調に逃げるグリムに、3コーナーで外から馬体を併せたテイエムサウスダンが4コーナーから突き放す。直線は独走のまま後続に8馬身の差をつける圧勝で、2歳時の兵庫ジュニアグランプリJpnⅡ以来となるダートグレード2勝目を挙げた。2着には3コーナー手前から長く脚を使ったスリーグランド、3着にはモジアナフレイバー、地元スペルマロンは人気通り7着だった。

史上最多となる黒船賞JpnⅢ・5勝目を挙げた岩田騎手は「ミスター黒船と呼んでください」とおどけた。しかしそれは、当初騎乗予定だった別の騎手がキャンセルしたことで白紙となった鞍上を、自ら飯田雄三調教師に志願し、騎乗にこぎ着けたものだった。調教にも騎乗して態勢を整え、レースでも結果を残し、飯田調教師の期待に最高の形で応えた。

次走について、飯田調教師は「短距離のダート重賞になるとは思いますが、具体的にはオーナーと相談してからになります」と話すにとどめた。とはいえ、黒船賞JpnⅢの過去の勝ち馬を見ると、ブルーコンコルドやダノンレジェンドのように、秋のJBCスプリントJpnⅠを頂点としたダート短距離路線の主役となった馬は多い。出世レースの黒船賞JpnⅢから今年もまた、今後が楽しみな期待馬が現れた。

今年の黒船賞JpnⅢの売得金額は、6億4180万8500円。これは04年、負け組の星ハルウララに武騎手が騎乗したレースで記録した5億1162万5900円を上回る1レース当たりのレコードとなった。この日の総売得金額も16億2188万2700円でレコードを更新した。『かいばおけ支援金』から14年、高知競馬は名実ともにハルウララを超え、新時代に突入した。


  • 地方競馬全国協会理事長の
    副賞として畜産品が贈呈された

  • 地方最先着は3着のモジアナフレイバー(大井)
  • 取材・文
  • 松浦渉
  • 写真
  • 桂伸也(いちかんぽ)

Comment

岩田康誠 騎手

高知を楽しもうと思ってました。満喫できました。(レースでは)風になりました(笑)。ゲートは素直で、注文もないですし、スピードもあります。乗りやすい馬ですし、こういう力のいる馬場も得意ですね。直線で先頭を走っている時、久しぶりにファンがいるのを見て、うれしかったですね。

飯田雄三 調教師

岩田騎手から自信満々に大丈夫と言ってもらってましたが、ここまで離すとは思ってなかったです。当初予定していた騎手が乗れなくなったんですが、黒船賞に強い本当にいいジョッキーが空いてました。2歳で勝って以来の重賞勝ち。4歳になって、また活躍を期待してます。