ウェブハロン

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  • 第65回
  • 羽田盃

4.29 (祝水) 大井 1,800m

2番手から直線力強く抜け出す
 雲取賞から間隔あけ一冠目獲得

南関東三冠初戦としては11頭立てと寂しい頭数になった今年の羽田盃だが、メンバーはかなりのハイレベル。NARグランプリ2019・2歳最優秀牡馬のヴァケーションと、ニューイヤーカップで大差勝ちを演じたグリーンロードの高月賢一厩舎勢、全日本2歳優駿JpnⅠで3着したティーズダンク、父母ともに南関東で活躍したブラヴール、雲取賞を完勝したゴールドホイヤー、そしてJRAからの転入初戦だった京浜盃で2着したコバルトウィングなど、実力のあるメンバーが名を連ねた。

湿った馬場が続き、前残りぎみのレースが多かったこの開催だったが、水分が抜けるにつれ、極端な有利不利は見られなくなっていた。そうしたなか、馬群を先導したのはファルコンウィング。前半3ハロンを37秒4で入ったが、そこからは12秒台の絶妙なラップを刻む。2番手でゴールドホイヤーが続き、グリーンロード、ヴァケーションもこの一角。単勝1番人気のコバルトウィングと2番人気のブラヴールは後方を進んだ。

勝負どころでもファルコンウィングが単騎で飛ばし、2番手以下は馬群が凝縮。これが勝負の明暗を分けた瞬間だった。ファルコンウィングは直線半ばで脚いろが鈍ったが、2番手を追走していたゴールドホイヤーが残り200メートルで力強く抜け出す。後方を進んでいたブラヴールが外に持ち出して猛追するも2馬身及ばず、最後まで脚を伸ばしたゴールドホイヤーが第65代の羽田盃馬に輝いた。

マイルの準重賞だった雲取賞が重賞に格上げとなり、距離も1800メートルに変更されて2年目。発表当初は、これほどまで三冠に直結するとは想像できなかった。昨年の雲取賞の覇者ヒカリオーソはのちに東京ダービーを、そして今年はゴールドホイヤーが羽田盃を制した。どちらも管理するのは川崎の岩本洋調教師。昨年のヒカリオーソは京浜盃で鼻出血を発症したことで、ローテーションを変更せざるを得なかったのだが、ゴールドホイヤーは雲取賞から間隔をあけて羽田盃に直行。雲取賞に重点を置き、ローテーションを組み上げた指揮官のタクトが冴えわたった。

2着のブラヴールは馬群が密集し、大外を回らされたことが悔やまれた。ただ、後半3ハロン37秒7の脚を繰り出し、2馬身差まで押し上げたのは実力の証明。父が南関東重賞4勝のセレン、母が2006年の南関東牝馬三冠を制したチャームアスリープという魅力あふれる血統馬だけに、今後への期待は高まるばかりだ。

しぶとく逃げ粘ったファルコンウィングが3着で、雲取賞(2着)以来の好走。10番人気ではあったが、気分良く逃げれば力を発揮でき、左海誠二騎手のペース配分も絶妙だった。今回のように有力どころが中団や後方から進める展開なら、タイトル獲得のチャンスも十分にある。

一方で、1番人気のコバルトウィングは7着。スタートで若干ごちゃついて後方の位置取りになり、道中で脚を使わされたのが響いた印象だ。ただ、京浜盃で互角の立ち回りを見せたことからも地力は確か。巻き返しがあっても不思議ではない。

それにしても雲取賞、である。今年に限って言えば、このレースを分水嶺として勢力図が明らかに変わった。そして、雲取賞の上位2頭が三冠初戦で1、3着。2着のブラヴールにしても、ひのき舞台に上がったのは2月27日のクラシックトライアル(大井1800メートル)からだった。2月の1800メートルという設定が、馬に何かしらの影響を与えているのか。その理由はともかく、今回のゴールドホイヤーの走りによって、雲取賞の存在価値がより高まったことは間違いない。

  • 取材・文
  • 大貫師男
  • 写真
  • 宮原政典(いちかんぽ)

Comment

山崎誠士 騎手

折り合いをつけて馬の力を100%引き出せれば、結果はついてくると信じていました。想定より前めの競馬になり、イメージと違って驚きましたが、しまいも止まらず、すごい馬だと思いました。去年に続き、(有力馬で)東京ダービーに出走できるので、いい結果を出せるように頑張ります。

岩本洋 調教師

非常に丈夫な馬で、普段から調教の本数も重ねているものですから、先へ向けては仕上がりすぎてしまったかと心配して見ていました。入厩当時は非常にやんちゃで苦労しましたが、成長して前向きになりましたね。東京ダービーに向けては、無理せずにじっくりと調整できればと思っています。