ウェブハロン

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  • 第22回
  • かきつばた記念 JpnⅢ

5.4 (祝月) 名古屋 1,400m

スピードの違いで逃げ切る
 断然人気に応えて重賞連勝

ラプタスが黒船賞JpnⅢで逃げ切り勝ちをおさめたとき、手綱を取った幸英明騎手がその勝因のひとつとして「無観客開催」だったことを挙げていた。

3歳の4月に初勝利を挙げた直後に去勢手術を施され、5カ月の休養から復帰したあとも好走を続けて4連勝をマーク。しかし初のオープンとなったバレンタインステークスではパドックから興奮していた上に、道中で他馬に競られたことも影響して8着に敗れていた。

それが黒船賞JpnⅢではパドックでの発汗もなく、落ち着いた歩きを見せていた。テンションの高さが課題になる馬にとっては、人間の動きが気にならない静かなパドックは歓迎材料になったことだろう。そして今回のかきつばた記念JpnⅢも無観客での開催。さらに出走馬のなかに国内のダートグレードで3着以内に入ったことがあるのが、ラプタスのほかは4年前にこのレースを制したノボバカラだけ。となれば、ラプタスの単勝オッズが最終的に1.6倍になったのは当然のことだろう。

ただ、パドックに入ってきたラプタスは、首と肩のあたりが汗で濡れていた。それでも周回中の歩様からは、前走と同じく落ち着いているように見えた。ゲートが開くと最内枠のリアンヴェリテが先手を取りにいったが、1コーナーに入る直前でラプタスが代わって先頭に立ち、前走に続く逃げ切り勝ちを飾った。

この日は前日に雨をもたらした雲が昼すぎに消え、気温も25度前後というまさに“五月晴れ”という陽気。馬場状態も第4レースから良に回復したが、第1レースから第9レースまで逃げた馬が2着以内に残るという結果が続いていた。

そのことは、各騎手の頭のなかに入っていたのかもしれない。全馬がほとんど互角にゲートを出てからの先行争いは、リアンヴェリテとラプタス、さらに兵庫のマイタイザンが加わって、前半の600メートルのタイムが35秒7。不良馬場だった昨年をコンマ3秒上回るという速い流れになった。

それはラプタスを追いかけた各馬が逆に苦しくなる形。2着には中団から徐々に上昇したノボバカラが入り、3着には最後の直線で伸びてきたドリームドルチェが入線。だが、勝ち馬からは2着に3馬身、そこから3着には5馬身の差がついていた。

ラプタスは黒船賞JpnⅢのあとに反動が出たそうだが、3月末には次のターゲットをかきつばた記念JpnⅢに定め、栗東トレセン近郊の牧場で回復を図った。それでも中間はテンションの高さを見せていたとのこと。おそらくこれからも精神面が課題になるのだろう。

しかし2着に敗れたノボバカラを管理する森秀行調教師が「状態も展開もよかったのですが、相手が速かったですね」と苦笑いしながら話したとおり、ラプタスのスピードは秀逸なもの。実際、勝ち時計の1分25秒3は、良馬場では2010年にスマートファルコンが計時したものと同じだった。その潜在能力をこれからどれだけ披露してくれるのだろうか。今後への期待は高まるばかりだ。


  • 地方最先着は3着のドリームドルチェ
  • 取材・文
  • 浅野靖典
  • 写真
  • 岡田友貴(いちかんぽ)

Comment

幸英明 騎手

厩舎のスタッフさんからはいい状態だと聞いていましたし、騎乗したときもそのように感じました。スタート後は(リアンヴェリテが先手を取ったので)どうしようか迷ったのですが、こちらのほうが速かったので先手を主張していきました。道中も楽な走りでしたし、手応えも最後までよかったです。

松永昌博 調教師

かしわ記念も考えたのですが、出走メンバーを考えてこちらを選びました。入れ込む面がある馬ですが、パドックでの雰囲気は許容範囲という印象でした。レースも1コーナー手前で先頭に立った時点で、大丈夫かなと思いましたね。今後も1200や1400メートルの交流重賞を中心にして考えていきます。