ウェブハロン

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  • 第22回
  • ジャパンダートダービー JpnⅠ

7.8 (水) 大井 2,000m

直線でのマッチレースを制す
 大井ゆかりのコンビが頂点に

一昨年のルヴァンスレーヴ、昨年のクリソベリルなどの大器が制してきた3歳ダートの頂上決戦。今年もそれらに劣らない評価を受けていたカフェファラオが、ここへ駒を進めてきた。休み明けながら圧勝劇を演じたユニコーンステークスGⅢを含め、デビューから3連勝。のちに兵庫チャンピオンシップJpnⅡを制したバーナードループに、新馬戦で10馬身差をつけていたことからも力の差は歴然と見られ、どう勝つかというのが焦点。昨年のクリソベリル(1.2倍)を上回る1.1倍という単勝オッズが、大きな期待を物語っていた。

しかし、競馬に絶対はなかった。ダッシュを利かせたダイメイコリーダが逃げ、ダノンファラオが2番手で追走。カフェファラオはその直後につけた。先行した2頭が3コーナー過ぎから加速したが、意外にもカフェファラオはそれについていけない。直線に向いた時点でマッチレースの様相となり、残り300メートル付近でダノンファラオが前に出ると、懸命に追いすがるダイメイコリーダに1馬身3/4差をつけてゴールを駆け抜けた。勝負どころから徐々に引き離されたカフェファラオは、直線でも本来の走りが見られず7着に敗れた。

ファラオはファラオでも、勝ったのは6番人気のダノンファラオだった。今回がキャリア8戦目。兵庫チャンピオンシップJpnⅡで2着に敗れ、続く鳳雛ステークスでも14着と大敗していたが、3歳ダートの頂上決戦で初めての重賞タイトルを獲得した。鞍上の坂井瑠星騎手は、自らが育った大井の地でGⅠ/JpnⅠ初制覇。父の英光調教師も口取り写真の撮影に参加し、喜びを分かち合った。

管理する矢作芳人調教師は、2016年のキョウエイギアに続くジャパンダートダービーJpnⅠ・2勝目。父は大井の名トレーナー・矢作和人調教師(引退)で、今年の東京スプリントJpnⅢ(ジャスティン)に続き、ゆかりのタッグで大井の重賞タイトルを獲得した。

逃げたダイメイコリーダが2着に踏ん張った。15キロの馬体増で4番人気にとどまったが、持ち前のダッシュを利かせて絶妙なラップを刻むと、直線でもダノンファラオにしぶとく食い下がった。「勝ち馬にぴったり来られたけど、よく踏ん張ってくれた」と池添謙一騎手も納得の表情を見せ、大舞台で能力の高さを証明したパートナーをねぎらった。

船橋のブラヴールが4着に追い込み、地方勢の最先着。挫跖のため東京ダービーを競走除外となり、仕上がり途上の段階だったが、それだけに本橋孝太騎手も「6、7分のデキだったけど、これだけの脚を使うとは……。びっくりした」と、能力の高さに目を丸くした。父は南関東重賞4勝のセレン、母が南関東牝馬三冠を制したチャームアスリープという、ゆかりの血統馬。今後の飛躍を予感させる内容で、三冠最終戦を締めくくった。

一方、見せ場なく敗れたカフェファラオ鞍上のダミアン・レーン騎手は「1コーナーの手前でタイヤの跡に反応し、逆手前でコーナーに入ったのが響いた。これまで経験していないキックバックにも反応していたし、3コーナー過ぎで外からプレッシャーをかけられたのも厳しかった」と振り返る。デビューから4戦目だけにキャリアの浅さを露呈した格好だが、これまでの走りからも高い能力は疑いようがない。巻き返しを期待したいところ。

ジャパンダートダービーJpnⅠはナイターや砂質の違いなど、JRAの若き3歳馬にとっては試練の一戦であることを、改めて感じさせた。勝ち切るには環境の変化に動じない精神力、そして積み重ねてきた経験がものをいう。勝ったダノンファラオは8戦目、2着のダイメイコリーダは11戦目、8番人気で3着に押し上げたキタノオクトパスも7戦目と、JRA勢のなかではキャリアを積んでいた。3連単77万730円の波乱を紐解く鍵は、ここにあったのかもしれない。


  • 地方最先着は4位のブラヴール
  • 取材・文
  • 大貫師男
  • 写真
  • 早川範雄(いちかんぽ)

Comment

坂井瑠星 騎手

本当は逃げたかったのですが、ダイメイコリーダが速かったので2番手で運びました。道中はあまり手ごたえよく運べないのですが、この馬なりにしっかり走ってくれました。まだ緩さもあるので、良くなる余地も残っています。そうしたなかで結果を出せたのはすごいことだし、うれしいですね。

矢作芳人 調教師

生まれ故郷ですので、大井で勝つのはいつでも良いものだなと思っています。大本命馬がすぐ後ろを追走していたので安心はしていなかったですが、この馬の潜在能力を信じていました。緩さが取れたらもっと強くなるでしょう。今後は休養に入り、11月にまた大井(JBC)に帰ってきたいと思っています。