ウェブハロン

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  • 第21回
  • チャンピオンズカップ GⅠ

12.6 (日) JRA中京 ダート1800m

昨年4着から飛躍の差し切り
 クリソベリルは国内初黒星

11月3日に行われたJBCクラシックJpnⅠで勝利をおさめたクリソベリル陣営は、次のターゲットにチャンピオンズカップGⅠの連覇を掲げ、その後はキャリアで唯一の黒星となったサウジカップでリベンジを、という予定を発表していた。国内では8戦8勝という存在にJBCから再戦を挑んだのは、そのレースで3着だったチュウワウィザードだけだった。

そしてクリソベリルは再び圧倒的な支持を集めた。その最終オッズは単勝1.4倍で、前日からほとんど動くことがなかった。

しかしクリソベリルには不安もあった。前走との間隔が2カ月未満というのは初めてで、レース3日前には調教後の馬体重がJBCより20キロ増と発表された。クリソベリル陣営はレース前々日と前日に坂路調教を課したが、当日の馬体重は前走よりプラス12キロ。それでもパドックでは前走時と同じくリップチェーンを装着し、歩きには前向きさを感じさせた。

その“絶対王者”に続く6.0倍の支持を集めたのは、3歳馬のカフェファラオ。出走馬では唯一、メンコもバンテージもつけない姿で、堂々とした姿を見せていた。

3番人気は昨年の2着馬ゴールドドリームで、ここまでが単勝10倍未満。ゴールドドリームは騎乗合図がかかるとすぐに、本馬場へと移動していった。

1915名の観客が見守るなか、陸上自衛隊第10師団の演奏によるファンファーレに拍手が上がり、すぐに静けさが戻ってゲート入り。スタート直後に先手を取ったのはエアアルマスで、すぐに昨年の3着馬インティも加わった。3番手にはアナザートゥルースがつけ、クリソベリルはその直後を追走。いつもと同じように、先頭が視界に入る位置で進めていった。

しかし最後の直線に入ったところでのクリソベリルは、動きがこれまでと違っていた。追い上げる脚は遠くから見ても迫力不足が明らかで、その後ろから差を詰めてきたチュウワウィザードのほうがはるかに上。チュウワウィザードは先行した各馬をあっさりと交わし切り、残り100メートルあたりからは独走になった。

2馬身半差の2着にも後方から伸びてきたゴールドドリームが入り、逃げ粘ったインティが2着からクビ差で3着。クリソベリルはそこから3/4馬身差での4着だった。

そのときのスタンドの空気感は、まさに茫然自失といったところ。チュウワウィザードが芝コースを通ってスタンドに近づいたときにようやく、勝者を讃える拍手とともに活気が出てきた。

終わってみれば、今年の4着までの顔ぶれは、昨年から1着と4着が入れ替わっただけ。5着は今年のフェブラリーステークスGⅠを制したモズアスコットで、カフェファラオは6着だから、この距離区分におけるダート界の勢力図は昨年からあまり変わっていないという見方もできる。そうなると、12月29日の東京大賞典GⅠはどうなるのだろうか。

このレースへの出走を検討していた大井のモジアナフレイバーは、地元の勝島王冠を選択した。JBCから年末の大舞台に直行する馬もいる。一方、チュウワウィザードはサウジカップの優先出走権を得たこともあり、東京大賞典GⅠには出走しないことになるようだ。

となると、東京大賞典GⅠで新興勢力が台頭できる余地は大きそう。3週間後の戦いを楽しみに待つことにしたい。

  • 取材・文
  • 浅野靖典
  • 写真
  • JRA