近年、南関東の牝馬路線が充実を見せ、年末恒例の東京シンデレラマイルは、毎年ほとんどフルゲートでの争いとなっている。フルゲートにならなかった年でも1頭欠けただけの15頭立て。しかも2014年以降は、今回まで7年連続でフルゲートとなっている。
牝馬戦線が充実した理由は、3歳および3歳以上の牝馬ダートグレードが中央も含めて南関東でしか行われていないことだろう。地方競馬で行われるダートグレードでは中央馬の出走頭数が限られるため、出走機会を得ようと、ダートが得意な上級クラスの牝馬が南関東に移籍してくることもめずらしくない。それで牝馬の層が厚くなり、今回も中央在籍時に関東オークスJpnⅡを制したラインカリーナをはじめ、ダートグレードで掲示板内の経験がある馬が半数近い7頭という充実のメンバーが揃った。ただ残念なことに上位人気が予想されたサラーブが右前挫跖のため競走除外となり、15頭による争いとなった。
好スタートはダノンレジーナだったが、外からダッシュを効かせてカラースキームが先頭に立ち、レイチェルウーズ、ラインカリーナと続き、ダノンレジーナは控えて内の4番手、その外にこの年の南関東牝馬二冠を制したアクアリーブルがつけた。
大井内回りコースの4コーナーはカーブがきつく、ややトリッキー。先頭のカラースキームに外からラインカリーナが並びかけると、直線を向いたところで外に膨らんだ。
するとまるでそれを狙っていたかのように、内から抜け出したのがダノンレジーナだった。2発、3発と鞍上のムチが入ると、一瞬にして後続を突き放し、単勝1.4倍の断然人気にこたえての快勝となった。
2着争いは3頭の接戦。4コーナー手前で勝ち馬の直後につけていたマルカンセンサーが同じように内から伸びて2馬身差の2着。外のアクアリーブルが半馬身差で3着。さらに半馬身差でラインカリーナが4着に入った。
勝ったダノンレジーナは、佐賀の下級条件を連勝したあと19年秋に浦和・小久保智厩舎に移籍。重賞初挑戦となった7月の浦和・プラチナカップでは牡馬を相手に3着と好走。大井のJBCレディスクラシックJpnⅠでも地方最先着の4着に好走し、素質の高さを見せていた。そしてシンデレラマイルトライアルを勝ってここに臨み、期待にこたえての重賞初制覇となった。南関東ではこれで14戦10勝、2着2回、3着1回。唯一馬券圏内を外したのが前述のJBCレディスクラシックJpnⅠだけと、まだ底を見せていない。明けて5歳の2021年、小久保調教師は「目標はJBCなので、そこに向けてプランを立てたいと思います」と期待を語った。
2着マルカンセンサーは6番人気ではあったが、19年のTCK女王盃JpnⅢで2着の実績があり、3着アクアリーブルは期待された牝馬三冠で関東オークスJpnⅡが惜しくも2着、ラインカリーナは中央から浦和に移籍して2戦目と、ダートグレード実績馬が上位4着までを占めた。
20年の牝馬戦線では、大井のサルサディオーネがマリーンカップJpnⅢ、クイーン賞JpnⅢとダートグレード2勝を挙げる活躍を見せたが、21年の南関東でも牝馬の活躍が期待できそうだ。
Comment
本橋孝太 騎手
ダノンレジーナにはたくさん勝たせてもらって、ここまでほんとに無事にきてくれました。理想に近いかたちで、最後まで集中して、ずっと伸びてくれる感じだったので安心して追っていました。牝馬の重賞ではこれからマークされるのは覚悟していますが、なにせ強いので、それでもやってくれると思います。
小久保智 調教師
前走がけっこう無理させてのレースだったので、ゆっくり疲れをとる感じでここまで来ました。(強さは)瞬発力かなと思っています。課題の多い子なので、これからも自分との戦いが続くと思いますが、JRA勢とも互角に戦っていけるのではないかと思っています。