後方追走も抜群の上りで差し切る
地方初参戦グレード初挑戦で勝利
今年で25回目を迎えた牝馬重賞マリーンカップJpnIII。7頭と少頭数だが、これまでダートグレードを盛り上げてきた馬たちと、新興勢力と、興味深い面々が対戦した。
昨年の覇者・大井のサルサディオーネが予想通り逃げる形になり、同じく昨年TCK女王盃JpnIIIを勝っているマドラスチェックがすかさず2番手をマーク。さらに、フェアリーポルカとレッドアネモスという芝の重賞ウイナーたちが追走。その3馬身後ろに愛知のシーアフェアリー、さらに5馬身ほど離れたところに重賞初挑戦のテオレーマ、ポツンと最後方を船橋のアブソルートクインが追走し縦長の隊列となった。
勝負所の3コーナー過ぎからサルサディオーネとマドラスチェックが激しくやり合う中、テオレーマは抜群に速い上り36秒6の末脚を繰り出して、直線大外から一気に抜き去った。2着のマドラスチェックに2馬身差をつけ、半馬身差の3着にはサルサディオーネ。勝ちタイムは1分38秒4(稍重)で、過去5年で最速だった。
「スタートは素晴らしく出てくれましたが、その後はいきなり進んでいくことはなかったので、前の馬たちは速かったですがこの馬のリズムを大事にしながら乗っていました。最後の直線も期待通りの脚でしっかりと捕まえてくれました」(川田将雅騎手)
テオレーマは地方コースなど初物尽くしで、重賞初挑戦での制覇。ダート界にニューヒロインが誕生したとも言えるだろう。
管理する石坂公一調教師には、2月に引退した父の石坂正調教師から引き継いだ馬で、念願の重賞初勝利。「信じられない気持ちですね。父がつくってくれた馬だと思っているので、それに十分味付けできる態勢が整ってきた時に引き継いで競馬をすることができたので、『本当にありがとうございます』とお伝えします」と感無量の様子だった。
一方、昨年のNARグランプリ4歳以上最優秀牝馬サルサディオーネにとっては惜しい結果に終わった。
「目標になるのは逃げ馬の宿命ですが、1600メートルは微妙に忙しい感じがありましたね。それでも交わされてから辛抱はしているし、持久戦に持ち込めばまた変わってくると思います。馬はよく頑張っています」と、コンビを組んだ矢野貴之騎手は愛馬を労っていた。
グランプリホースとしての意地を見せたサルサディオーネも今年7歳になったが、牝馬ダートグレードでは崩れることなく走り続けている姿は本当にすばらしいと思う。
取材・文 高橋華代子
写真 国分智(いちかんぽ)
Comment
石坂公一調教師
すごく器用な馬なので、初めての地方の馬場にも十分対応してくれるだろうなぁと思っていました。川田騎手が信じて乗ってくれた結果で、すばらしい騎乗でした。プラス体重でしたが、オープンで戦っていくにはボリュームアップさせたいと思って馬体をつくってきたので、結果が出てうれしいです。
川田将雅騎手
(前回乗せていただいた時より)クラスは上がってレースの内容も変わっているので、全然違う馬になっているだろうと思いました。重賞を獲ることができて、この後も牝馬路線で良い走りをしてくれると思います。(自身も絶好調で)それはそれで嫌がられると思いますが、本当にありがたく思っています。