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第32回東京スプリントJpnIII

直線抜け出し年度代表馬を振り切る
  北海道デビュー馬が6歳で素質開花

昨年のJBCスプリントJpnIを制し、NARグランプリ2020の年度代表馬に輝いた大井のサブノジュニアが、巻き返しを期して参戦してきた。近走は59キロを課せられていることもあり、本来の走りが見られなかったが、今回は58キロと軽くなったうえ、実績のある地元1200メートルが舞台。JpnI馬として意地を見せたいところだろう。

一方で、JRAの現役騎手では最年長となる54歳の柴田善臣騎手が、久しぶりに地方で騎乗するのも話題となった。かつてサウスヴィグラスやプリエミネンスなどで地方競馬をにぎわしてきた名手。コンビを組むリュウノユキナはホッカイドウでデビューし、船橋、再度ホッカイドウを経て、JRAに移籍した経歴の持ち主で、ここへきてオープンで4戦連続連対と充実ぶりを示している。人馬ともに久々の地方の馬場でどんなパフォーマンスを見せるのか注目を集めた。

レースはベストマッチョ、サイクロトロン、ヒロシゲゴールドが先行争いを展開。リュウノユキナはその後ろにつけ、徐々に外に持ち出すと、3コーナー過ぎで3頭の外に並びかける積極的な競馬を見せた。直線に向き、水の浮く不良馬場を力強く伸びて先頭に立つと、中団から伸びてきたサブノジュニアをアタマ差で振り切り、重賞初制覇を果たした。

鞍上の柴田騎手は、JRA所属騎手の最年長重賞勝利記録こそ56歳1カ月の岡部幸雄騎手(04年名古屋グランプリGII・ワイルドソルジャー)に譲るものの、ドスライスでの11年クラスターカップJpnIII以来、約10年ぶりに地方競馬でタイトルを獲得した。最後にアタマ差だけ残した手綱さばきはさすがのひと言で、「調教から調子の良さが分かっていたので、このぐらいでも辛抱してくれるのではないかと思って追い出した」と、自信と冷静さを併せ持った騎乗。「もっと力をつけて、いいパフォーマンスが出せるようになると思う」と、さらなる成長の余地があるとした。

サブノジュニアは悔しい2着。直線の入口では多少窮屈になったが、前があくと鋭い末脚を発揮し、アタマ差まで詰め寄った。矢野貴之騎手は「惜しかった。勝ち馬も最後にもうひと伸びした」と唇をかんだが、地方の雄として意地は見せた。これからもスプリント路線の主役を演じてくれるに違いない。

3着には船橋のキャンドルグラス。ダートグレードタイトルには手が届いていないが、サブノジュニアに3/4馬身差まで迫る好内容だった。「しまいもよく伸びたし、やはりJRA勢が相手でも十分にやれる」と、御神本訓史騎手も力を再認識した様子。馬場や展開次第で、今後もチャンスが巡ってくるだろう。

雨のなかの勝利騎手インタビューで「自分も競馬が好きで、馬が好きで、まだまだ楽しんで乗っていたい」と話し、大井競馬場を温かい空気で包んだ柴田騎手。その冷静さと味のある手綱さばきで、また地方競馬を沸かせてくれることを願っている。

取材・文 大貫師男

写真 宮原政典(いちかんぽ)

Comment

柴田善臣騎手

返し馬から気合が入っていたので、行きすぎる面が出なければいいなと思っていましたが、少し行きすぎましたね。リラックスして走ればもっと強い勝ち方ができたのではないかと思います。もうワンランク上へ上がれないと大きいところへは手が届かないので、スタッフと相談してやっていきます。

小野次郎調教師

ここ4戦の充実ぶりから、いい勝負ができるのではないかという期待がありました。風と雨と馬場もひどかったので、外めの砂を被らないところで競馬ができたのはよかったと思います。オープンになると短距離はなかなか中央にないので、今後は地方の交流重賞が目標になってくるかなと思います。