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第66回羽田盃

名手のペース判断が冴えわたる
  騎手調教師とも連日の重賞制覇

京浜盃でアランバローズとランリョウオーが敗れ、チサットが勝利したことで、にわかに風向きが変わった南関東3歳路線。振り返ってみれば、ここまで南関東の牡牝混合重賞を2勝以上しているのはアランバローズだけで、この馬次第で混戦に転じる可能性は十分にあった。先が読めないなかで迎えた南関東三冠初戦となったわけだが、結果的には混戦にさらに拍車がかかることになった。

京浜盃では出遅れたアランバローズが、今回は好ダッシュを決めて逃げのかたちに持ち込む。前半3ハロンは35秒8。その後も12秒台のラップを刻み、よどみないハイペースを作った。京浜盃2着のイグナイター、ニューイヤーカップの勝ち馬トランセンデンスが離れた2、3番手を追走。ランリョウオーとチサットはその後ろから続いた。

4コーナーでもアランバローズのリードは2、3馬身。2歳チャンピオンの意地を見せて懸命な粘り込みを図るが、残り200メートルを切って脚いろが鈍った。そこへ追い込んできたのがトランセンデンス。ゴール手前でアランバローズを捉えると、1馬身1/4差をつけて一冠を手にした。

トランセンデンスはJBC2歳優駿JpnIII・2着の実績を引っさげて浦和に転入。ニューイヤーカップで勝利すると、その後も重賞で2、4着と力を示してきた。当初から森泰斗騎手は「広いコースが合う」と、大井外回りで実施される三冠での期待を口にしていたが、大舞台で見事に勝利。管理する小久保智調教師とともに、東京プリンセス賞(ケラススヴィア)に続く連日の重賞制覇を果たした。

そんな森騎手は「ついていきすぎずに、ついていきました」と、言葉遊びのような言い回しでレースを振り返った。確かにアランバローズのラップは短距離並みのハイペースで、無理にプレッシャーをかけに行けば共倒れになっただろう。おもしろいのは4着に敗れたチサットの和田譲治騎手が「逃げた馬のペースは速かったけど、2番手以降はそこまで速くなく、勝ち馬には楽な流れだったと思う」と話したこと。つまりペースを掌握したのは、逃げたアランバローズではなく、無理に追いかけなかったトランセンデンス。リーディングジョッキーのペース判断と距離感が、レース全体を支配していたことになる。

アランバローズは前走の京浜盃こそ出遅れて9着に敗れていたが、この日は本来のスタートダッシュを決めて2着に逃げ粘った。左海誠二騎手は「やはり気が良すぎるね。こういう気性だから、距離の壁もあるかもしれない」と課題を口にする一方で、「でも、自分の競馬をして負けたのだから、相手をほめるしかないよ」とサバサバとした表情。JpnI馬の力を示したことに、少し安堵したような様子も見て取れた。

3着はランリョウオー。1コーナーあたりでは少しムキになるような面を見せたが、直線でもしっかり脚を伸ばし、アランバローズにクビ差まで迫った。初めてコンビを組んだ的場文男騎手は「今回、乗っておいて良かったよ。仕掛けていくと良くないタイプだね。東京ダービーで逆転したい」と感触をつかんだ様子。騎手デビューから49年目、悲願の東京ダービー制覇に期待が高まる。

取材・文 大貫師男

写真 早川範雄(いちかんぽ)

Comment

森泰斗騎手

初めて乗ったときにクラシックでも勝負になると思っていたので、自分の感覚も間違っていなかったと嬉しく思います。促してから反応する馬なので4コーナーの頂点ぐらいから追い出しました。ぐんぐん良くなっていますし、厩舎に感謝しかないです。もちろん東京ダービーを狙っていきたいと思います。

小久保智調教師

前走は出遅れてしまいましたが、今回はそれがなかったので、うまく流れに乗れているなと思って見ていました。強行軍で、完全ではないのかなという気配だったのですが、次が本番なので、東京ダービーは気を抜かずに、きっちり仕上げていきたいと思います。また、応援をよろしくお願いします。