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第22回兵庫チャンピオンシップJpnII

人気馬をとらえて重賞初制覇
  ダートでも芝でも飛躍を期す

ゴールデンウイークの園田開催は例年、多くのファンで賑わう。今年は事前抽選によりファンの入場が可能となるはずだったが、兵庫県へ三度目の緊急事態宣言が発出され、無観客競馬に戻った。

単勝1.2倍と圧倒的1番人気に支持されたのはゴッドセレクション(JRA)。JRA勢4頭中、唯一の3勝馬で、距離実績も先行力もあり、小回りの1870メートル戦では一歩抜け出た存在に思われた。しかし、それをのびしろ十分なレースぶりでゴール手前で交わしたのがリプレーザ(JRA)。ダート1400メートルと芝1200メートルを連勝してここに臨んだ異色の経歴だったが、大根田裕之調教師によると「前走はダート1400メートルに出走させたかったのが除外になり、前の日の芝1200メートルへの出走となりました。そこを勝ってくれて、さらに兵庫チャンピオンシップは抽選を通って出走枠に入ることができました」と、運命を手繰り寄せたのだった。

レースは好スタートからロードエクレール(JRA)が先手を奪い、ゴッドセレクションが2番手に控えた。ところが1周目の3~4コーナーで「馬が少しムキになってしまいました」とゴッドセレクションの中井裕二騎手。わずかなことだが、これがのちに影響することとなる。

勝負所の2周目3コーナー手前でゴッドセレクションとリプレーザが先頭に並びかけていったが、すぐにリプレーザが後退。となれば、前の2頭で決まるかと思われたが、実はここが2つめのポイントで、リプレーザの幸英明騎手は「右にモタれる面があって、あのまま追うと前の馬の脚に引っ掛けそうだったので、一旦下がりました。内ラチ沿いまで行った後は手応えが戻ってくれました」と、再び加速。先に抜け出したゴッドセレクションをゴール手前で交わし、重賞制覇を遂げた。

前走から約700メートルの距離延長となったリプレーザだが、前走は追走に忙しく最後方からのレースだったことからも、距離延長はプラスだったのだろう。2日前にはJRAで端午ステークス(ダート1400メートル)も組まれていたが、大根田調教師は「距離は長くなった方がいいかなと思っていました」と、この一戦に賭けたのが功を奏した。

人気と期待を背負いながら2着に敗れた中井騎手は「悔しいーっ!」と顔をくしゃくしゃにしながらも、ゴッドセレクションの顔を撫でて健闘を称えた。「仕掛けるタイミングなど思っていた競馬はできたのですが、最初のコーナーでのことが最後に少し脚が上がったことに繋がったのかなと思います。そこだけが誤算で、ショックで……」。彼自身も重賞初制覇がかかる一戦でもあった。レース後は誰よりも最後までレース映像を見直した。

3着はランスオブアース(JRA)で「力のいる地方の馬場は調教の時点から合うと思っていました」と泉谷楓真騎手。逃げたロードエクレールが4着で、地方馬最先着はサラコナンだった。

サラコナンは素質の高さを見せる一方、3コーナーで置かれるなど幼さを残すレースぶりが課題で、1番人気に支持された前走・菊水賞も「道中、一度もハミを取りませんでした」と田中学騎手は首を傾げ、5着に敗れていた。今回は調教で着けたことのあるブリンカーをレースで初めて着用。「初めて自分からハミを取って、向正面でも反応が良かったです。収穫のある内容で、兵庫ダービーへ向けて視界良好ですね」と、4着からは9馬身離されたものの、田中騎手の表情は明るかった。

取材・文 大恵陽子

写真 桂伸也(いちかんぽ)

Comment

幸英明騎手

折り合いに不安のない馬なので、距離は何とかもってくれないかなと思っていました。1番人気の馬をマークして、4コーナーで手応えが戻った時には「これなら」と思いました。最近は調教でもレースでも右にモタれる面がなくなってきて、成長を感じます。芝でもダートでも走れる馬なので楽しみです。

大根田裕之調教師

前走後からいい状態できていました。右にモタれるので右回りばかり使っていましたが、最近はマシです。今日は最後に苦しくなっていくらかモタれ加減でしたけど、矯正されていい走りになっていると思います。これから馬の様子を見ながら、ダートも芝もレースがあるので。じっくり考えたいです。