絶妙なペースを刻んで逃げ切る
2歳チャンピオンが距離も克服
現役最年長、地方競馬の最多勝利記録を更新し続ける的場文男騎手には39回目の東京ダービー挑戦。当初は羽田盃で3着に好走したランリョウオーでの挑戦が伝えられたが、その後、右前脚の骨折が判明して戦線離脱。替わって的場騎手は、東京ダービートライアル2着だったトーセンマッシモへの騎乗が決まった。
今年の南関東3歳戦線は、一冠目の羽田盃をトランセンデンスが制したものの、前哨戦の雲取賞ではランリョウオーの2着、京浜盃でもチサットの4着に敗れていたこともあり、迎えた東京ダービーは混戦模様。羽田盃2着のアランバローズ、トランセンデンス、チサットが単勝4倍台で人気を分け、連勝系のオッズでもまったくの三つ巴。やや離れて東京湾カップを圧勝したギガキングが続いた。
抜群のスタートから逃げたのは、予想されたとおりアランバローズで、競りかけてくる馬もなく単独先頭。ギガキング、ギャルダル、トランセンデンスが2番手集団を形成し、チサットもそのうしろに続いた。
アランバローズの刻んだラップが見事だった。最初の3ハロンは掛かり気味に35秒4と速かったが、1~2コーナーを回っての4ハロン目、5ハロン目で13秒台にラップを落とした。必然的にギガキング以下が差を詰めてきたが、中間1000メートル過ぎからややペースアップして緩みのないラップを刻み、後続に脚を使わせた。
それで苦しくなったトランセンデンス、ギガキングが、3コーナー過ぎで脱落。直線でアランバローズに食い下がったのはギャルダルだけ。しかしギャルダルにも差し切るほどの脚は残っておらず、アランバローズも最後は脚が上がったものの、3/4馬身差で振り切っての勝利。中団で脚を溜めていたブライトフラッグがゴール前一気に迫ってクビ差3着に入った。
勝ったアランバローズは、2歳時はデビューから5連勝で全日本2歳優駿JpnIを制覇。期待されて迎えた3歳初戦の京浜盃は、出遅れなどもあって馬が走る気を見せずまさかの9着惨敗。羽田盃では好スタートを切って単騎で逃げたものの道中は行きたがるところがあり、最後は脚が上ってトランセンデンスにとらえられ2着。無敗の2歳時から3歳になって勝利がないまま迎えた東京ダービーだった。
アランバローズはムキになって行き過ぎるところがあり、そもそも2歳時に1600メートルのハイセイコー記念を勝ったときでさえ、関係者は距離の不安を語っていた。羽田盃の敗戦はやはり距離かと思われたが、今回さらに距離延長の2000メートルを克服したことでは、単に東京ダービーのタイトルを獲ったという以上に収穫となったに違いない。
左海誠二騎手、林正人調教師のコンビは2013年にインサイドザパークで東京ダービーを制しており、林調教師には昨年のエメリミットから連覇で3勝目となった。
アランバローズは僅差で1番人気だったが、2着ギャルダルは12番人気、3着ブライトフラッグは10番人気で、連勝系は波乱の決着。注目馬では、ギガキング6着、チサット9着、的場騎手のトーセンマッシモは10着、羽田盃馬トランセンデンスは11着だった。
2歳チャンピオンがそもそもの能力の高さと、3歳になっての成長を見せて勝ったものの、混戦を象徴する東京ダービーだった。
取材・文 斎藤修
写真 早川範雄(いちかんぽ)
Comment
林正人調教師
この馬は逃げるしかないと思っていたので、逃げてどこまでかな、道中もずっと大丈夫かな、という気持ちで見ていました。勝つこと以上に、まず毎年このレースを目指して、出走馬を送り出すことが大変なレースだと思っていますので、その中で3回も勝てたことは本当にありがたいと思っています。
左海誠二騎手
自分のリズムを崩さないように気を付けながら、思いのほか向正面でペースを落とすことができて、一番良い形になったと思います。羽田盃ではゴール前で差されたこともあって、若干距離が長いのかなと思いましたが、今回は2000メートルでも自分の形、自分のペースで走れたことでは、能力の高さを感じました。