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第22回兵庫ダービー

大外から追い込み3頭の接戦を制す
  騎手・調教師ともダービー初制覇

梅雨はまだ明けていないというのに、最高気温31度に達した快晴の園田競馬場。3度目の緊急事態宣言下ではあるが、政府の指針に沿って園田競馬場では6月2日からファンの入場が再開された。2年ぶりに観客から応援を受けての3歳頂上決戦は、誘導馬も3頭総出で盛り上げた。

レースは戦前から混戦模様を呈していた。1番人気は単勝2.6倍でサラコナンだったが、僅差の2.8倍でシェナキングが続いた。前者は門別からの移籍直後から高い素質に注目が集まる一方、精神的な幼さをレースで見せることも多く、後者は兵庫一冠目の菊水賞を勝ったが、それまでの追い込んであと一歩の印象もあってか実績よりも評価がやや抑えられたのだろう。そして、下原理騎手に今回から乗り替わったエイシンイナズマと、前走の3歳A特別でシェナキングにクビ差まで迫ったスマイルサルファーが単勝10倍以下に支持された。

そんな混戦模様は、ゴール前でもそのまま反映された。これまで中団でレースを運んでいたシェナキングが促して4番手と前の位置を取ると、エイシンイナズマとサラコナンも2~3番手で有力馬が先行する流れ。4コーナーではシェナキングとサラコナンが馬体をピッタリ合わせて先頭に立ったが、それを虎視眈々と後ろから狙っていたのがスマイルサルファー。大外を回ってムチを入れられると、グングンと伸び、内シェナキング、中エイシンイナズマと3頭並んでゴール。

その瞬間、調教師室では「スマイルサルファーは3着やろ?」と一緒に見ていた調教師たちは判断したが、スローモーションが再生されると、「いや、差しているぞ!」とあちらこちらで声が上がり、落胆気味だった渡瀬寛彰調教師は「やったー!」と両手を突き上げて喜んだ。同じく笑顔が弾けたのは渡瀬厩舎の厩務員たち。厩舎のことは他厩舎から手伝いに来てくれる人たちにお願いし、スタッフ総出で西脇トレセンから約1時間かけて、勝負服柄のネクタイや厩舎ポロシャツを着て応援に駆け付けた。

「(ダービーを勝つのは)ちょっと早いんじゃないかと思いますけど、滅多に巡ってこないチャンスなのできっちりモノにできて嬉しいです」と、開業7年目でダービートレーナーに輝いた渡瀬調教師。鞍上の大山真吾騎手も4年前の兵庫ダービーで外から末脚を伸ばすもブレイヴコールにアタマ差届かず2着など、これまで何度も悔しさを味わってきたが、待望の兵庫ダービー初制覇となった。

ハナ差で2着に敗れたシェナキングの吉村智洋騎手は何回もレース映像を見返すなど、僅差の敗因を探ろうとし、さらにハナ差で3着のエイシンイナズマ・下原騎手は「4コーナーで外に出せて、いけると思ったのですが」と眉間にしわを寄せた。1番人気のサラコナンはそこから6馬身離された4着。「道中のリズムは良かったんですが、自然と先頭に立たされる形になり、幼さが出ました。でも、徐々に成長はしています」と田中学騎手は振り返った。

ダービー馬となったスマイルサルファーの今後について渡瀬調教師は「休養を挟み、8月18日の黒潮盃(大井)に向かおうと思います。厩務員時代にエーシンクリアー(8着)で遠征した思い出のあるレースです」とのこと。兵庫の看板を背負って遠征に出る。

取材・文 大恵陽子

写真 桂伸也(いちかんぽ)

Comment

大山真吾騎手

なかなかダービーを勝てなかったので、ホッとしています。(前走に続き)今日もスタートから出していくつもりでしたが、挟まれて位置取りが悪くなりました。有力馬が前にいてみんな早く動くだろうから、ワンテンポ待てばチャンスがあるかなと思っていました。だいぶ大人になって、乗りやすいです。

渡瀬寛彰調教師

ただただ嬉しいです。上がり重点の追い切りをして、馬にもそういうことを教え込むようにやってきました。パドックで大人しく感じましたが、終わってみれば集中していたのかなと思います。血統やフットワークから短距離馬だと思いますが、折り合いもつくようになり、中距離でもいけると感じています。