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第29回東北優駿(岩手ダービー)

速い流れを押し切る
  地元に敵なし二冠達成

1.1倍の単勝オッズにファンの期待が表れていた。名称が復活して3年目となった東北優駿は、リュウノシンゲン1頭に注目が集まっていたといっても過言ではない。デビューからここまで11戦9勝、敗れた2戦のうち1戦は芝の若鮎賞、もう1戦は地方全国交流の南部駒賞で1、2着は北海道所属馬。ダートに限定すれば岩手所属馬には一度も先着を許しておらず、しかもこの春は圧勝続き。さらにパワーアップを感じさせていた。今年は1着賞金が1000万円と倍増しているが、これを狙うような転入馬がいなかったこともリュウノシンゲンの強さを証明していたといえよう。2番人気のゴールデンヒーラーが7.4倍、あとは10倍以上と大きく差が開いた。

とはいえ、このレースは例年大半の馬が距離未経験。今年は他地区で1700、1800メートル戦を走った馬はいたが、リュウノシンゲンをはじめ地元生え抜き馬にはステップレースもなく、1600メートルまでしか経験がない。ここ2年1番人気が敗れ、勝ち馬の単勝人気は各3、5番人気。世代初の2000メートル戦は、かつても意外な結果に終わったことが少なくない。

玉砕覚悟でファッベラが先手をとり、その後ろにリュウノシンゲン、これをピッタリマークしてゴールデンヒーラー。2分12秒0で決着したレースだが、前半の1000メートルが1分3秒7、後半の1000メートルが1分8秒3。小回りの水沢2000メートル戦としてはかなり速い流れ、ラップタイムを採るまでもなくゴール前のもつれが予感される展開となった。

2コーナーに入るところで坂口裕一騎手のリュウノシンゲンが「馬任せ」で先頭に立ち、ジワジワと差を広げながら最後の直線へ向かうが、1頭になると伸びを欠くリュウノシンゲンは後続を突き放すには至らない。次位争いはゴール前で大接戦となり、懸命に粘るゴールデンヒーラー、唯一追い込んできたサンエイマジックの間をグランフォロミーが割って2着を確保したが、リュウノシンゲンとの差は1馬身半。ゴールシーンは意外な「僅差」と映ったかもしれない。

坂口騎手は「バテたというよりは遊んでいる」と。道中の手応えを見れば大きく差を広げても良さそうなものだが、そうはならない。今年の春初戦スプリングカップでは逃げて9馬身差をつけたが、これが10勝の中で最大着差。他は4馬身以内の着差に収まっている。強い目標が前を走っておれば、あるいはずっと直後を追いかけてくる馬がおればどれくらいの強さを見せてくれるのか、観戦する側からすれば常にその気持ちが先行する。リュウノシンゲンが全国の一線級へ挑戦するタイミングは、いよいよ迫ってきたと思える。

岩手競馬の3歳三冠目は9月5日の不来方賞、そして10月3日に地方全国交流のダービーグランプリが控えている。ここがリュウノシンゲンの最大目標になるため、菅原勲調教師は「夏は休ませたい」と語っていたが、1カ月後のジャパンダートダービーJpnIには出走の可能性を言及した。引き続きその動向に注目したい。

取材・文 深田桂一

写真 佐藤到(いちかんぽ)

Comment

坂口裕一騎手

ファッベラがハナを主張してきたので2番手から。ゴールデンヒーラーが直後の見えるとこにいたのは気が楽で、2コーナーからは馬任せ。差は詰められましたが、バテたというより遊んでいる感じで、後ろから気配を感じたらまた伸びました。勝たなければいけないレースでしたが、緊張なく臨めました。

菅原勲調教師

もう少し楽に勝てればと思っていました。位置取りはどこでも良いのですが、途中から先頭に立ってしまうとトボけてしまう面があり、最後の直線はそんな感じを見せていた。状態を見ながらジャパンダートダービーを考えていますが、使わなければ夏場は休ませて、秋に備えようと考えています。