逃げ馬を直線外からとらえる
ケラススヴィアは胸張れる2着
2006年のチャームアスプリープ(船橋)以来となる南関東牝馬三冠を目指し、浦和のケラススヴィアが駒を進めてきた。デビューからここまで7戦6勝、2着1回という、ほぼパーフェクトな成績。7馬身差で圧勝した東京プリンセス賞の走りからも、期待は高まるばかりだった。
しかし、今年のJRA勢はハイレベルなメンバー。鳳雛ステークスを勝利したウェルドーンや、兵庫チャンピオンシップJpnIIで3着したランスオブアースなどは、オープンの牡馬を相手に互角の走りを見せている。それだけに、意地とプライドが激突する好レースが期待された。
逃げを打ったのはケラススヴィア。好スタートを決めて無理なく馬群から抜け出すと、そのままペースを握った。2番手にウワサノシブコがつけ、浦和勢が先導。ウェルドーンはスタートこそ今ひとつだったが、すぐに盛り返して外の3番手につけた。
2周目の向正面半ばで各馬のペースが上がり、ウワサノシブコが後退。川崎のタイトなコーナーを味方につけるべく、ケラススヴィアが突き放しにかかったが、ウェルドーンもしぶとく食い下がる。1馬身ほどの差で最後の直線を迎えると、外めを伸びたウェルドーンがケラススヴィアを捉え、2馬身差で重賞初制覇を飾った。
スタートで若干もたつき、1周目の3コーナーでは折り合いを欠いたようにも見えたウェルドーンだったが、「道中は走るのをやめようとする面を見せて、うながしながらの追走だった」と武豊騎手。そうした気性面が、長丁場でうまく作用したのだろう。勝負どころの2周目3~4コーナーでも置かれることなく、射程に入れながら追走できたように、地方の小回りにも対応。今後の視野が大きく広がる内容だった。
惜しかったのはケラススヴィア。抜群のスタートを決めて逃げ、早めに突き放しにかかった森泰斗騎手のエスコートも見事だったが、今回は相手が一枚上だった。「残念でしたね。三冠を期待してくれたファンのみなさんに申し訳ない」と無念の表情を見せた森騎手だったが、「初距離で少し戸惑った感じもあったけど、よく頑張ってくれた」とパートナーをねぎらった。
ケラススヴィアは、これでグランダム・ジャパン3歳シーズンのポイントを47に伸ばして総合優勝。真っ向勝負でつかみ取った地方3歳女王の称号だけに、胸を張れる結果だ。
2着からは4馬身差をつけられたものの、ランスオブアースが3着に入った。泉谷楓真騎手は「初ナイターでテンションが高く、出遅れてしまった。終始さばきながらの追走で、最後はよく伸びているけど……」と、最内枠での出遅れを悔やんだ。ただ、兵庫チャンピオンシップJpnIIに続く好走で、地方の馬場に対する適性を十分に示した形。今後も立ち回り次第でチャンスが巡ってきそうだ。
若き牝馬の頂上決戦はいったん幕を閉じたが、ウェルドーンに関して武騎手が「伸びしろはたっぷりある」と話したことは、出走全馬に共通するはず。今後の牝馬路線での活躍はもちろん、牡馬を相手にダートの頂点をうかがうような存在となれるか。各馬のさらなる成長を期待したい。
取材・文 大貫師男
写真 早川範雄(いちかんぽ)
Comment
角田晃一調教師
手応えが怪しかったので、どうかなと思いながら見ていました。1周目のゴール板あたりでやめようとしたらしく、性格がまだつかみ切れないのですが、以前よりも調教で動くようになり、どっしりしてきています。近い目標にジャパンダートダービーもありますが、馬の状態を見て判断したいと思います。
武豊騎手
南関東の牝馬三冠を阻止してしまい、申し訳ない気持ちもありますね。スタートは遅かったのですが、リカバリーがうまくいって取りたいポジションにつけられました。少しやめようとするところがあるので、何度か促す感じで乗っていましたが、以前乗ったときよりも強さを感じました。今後が楽しみです。