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第4回日本海スプリント

観客の度肝を抜く一気の差し切り
  東海ダービー以来1年ぶりの勝利

今年の日本海スプリントは8頭立てで、その内訳は地元金沢所属と愛知所属が4頭ずつ。昨年の優勝馬である地元のフェリシアルチアは今年もトライアル戦を圧勝したが、直前になって回避してしまった。代わりに注目を集めたのは5連勝中のネオアマゾネス。高知からの転入初戦だった2走前は2着に2秒2の大差をつけ、続く前走は重賞の徽軫(ことじ)賞でハクサンアマゾネスを相手に逃げ切り勝ち。その単勝オッズは1.2倍にまで下がった。

ネオアマゾネスが圧倒的な支持を集めた要因のひとつには、愛知のニュータウンガールが前走からマイナス27キロで登場したこともあったように思える。パドックでの姿を見ると、確かに胴回りがスッキリしていて、脚が長く見える印象。同じく愛知のケイアイテディが父サウスヴィグラスを連想させる丸々とした体型で周回していたのとは対照的だった。

そのケイアイテディは川崎所属時に900メートルで勝利した実績が評価されたのか、単勝2番人気に支持された。対してネオアマゾネスは1300メートルがこれまでの最短距離。さらにワンターンのレースは初めてになる。その点とパドックでの激しい発汗は気になったが、気合が入った歩きを見せていた。

この日の金沢競馬場は昼過ぎまで強い雨が降っていた。その影響でインコースに砂が寄っていたようで、各騎手は1コーナーで内ラチから3馬幅ほど離れた場所を走らせていた。それゆえ“外枠”が優勢。第4レースから第9レースまで“8枠”の馬が連対し、差し馬は厳しいという傾向になっていた。

それが各騎手、とりわけ地元騎手の頭に入っていたのだろう。ゲートが開くと、昨年3着のミラクルダマスクが好スタートから先手を取り、ネオアマゾネスも五分のスタートから加速。外からケイアイテディが追いかけた。その3頭が後続を離す展開で、4コーナーではネオアマゾネスが内、ミラクルダマスクが外という併走状態で最後の直線に入った。

その様子はまさにオープンクラスの短距離戦。そのなかで主導権を取ったネオアマゾネスは残り200メートルを切ってミラクルダマスクを競り落とし、そのまま押し切る態勢に入った。

しかしそこから場内は驚きに包まれた。

直線に入ったところでは先頭まで遠いとしか言いようがない位置にいたニュータウンガールが、一気の加速で突き抜けたのである。

その光景を見た場内からは「あれで届くのか」「すごい」などという声がたくさん聞こえた。マスク観戦のご時世でもそれだけの声を出させたのだから、その末脚はまさに衝撃的な記憶としてファンに刻まれたことだろう。

そして大型ビジョンに表示された走破タイムは、4週間前にフェリシアルチアが記録したレコードタイムを0秒5も更新するもの。直線の半ばで勝ちを確信していたネオアマゾネスの吉原寛人騎手が、検量室で「これはもう、しょうがない」と悔しそうな表情で独り言を発したのは無理もないことだろう。

それに対して勝った岡部誠騎手は笑いが止まらないという様子。「ビックリするくらい伸びましたね。前とは距離があるなあとは思ったんですが」と話す姿は、本当にうれしそうだった。

取材・文 浅野靖典

写真 国分智(いちかんぽ)

Comment

岡部誠騎手

普段から調教に乗っていて、今回はしっかりと仕上げた意識はあったのですが、この体重減は心配でしたね。この距離なのでみんなが仕掛けていくと予想していましたから、こちらも促しながら進めました。ただ、末脚の切れは自分が思っていた以上。この距離だから最後まで集中できたのかもしれません。

角田輝也調教師

ここに向けて絞る予定ではいたんですが、ここまで減ったのは想定外。ただ、最近の敗因は集中力の問題で、ウチに来てからチークピーシーズを付けたのも対策のひとつです。だから短距離戦のほうが合うかなという思いはありました。習志野きらっとスプリントには申し込みましたが、状態面と相談ですね。