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第7回グランシャリオ門別スプリント

抜群のスタートダッシュ
  得意の舞台で逃げ切り連覇

グランシャリオ門別スプリントの記事を書く時、近年は蝦夷梅雨のことばかり書いていた。6月下旬になり、北海道も場所によっては真夏日が記録される時もあるほど、暑い日が続いていたが、今年は雨が少ない。昨年まで3年連続で不良馬場、4年前も稍重と、水分を含んだ状態でスピードバトルが繰り広げられてきたが、5年ぶりに良馬場で行われた。

良馬場だった2015、16年は、前半2ハロンをそれぞれ23秒6、23秒8で運んだ。その後の4回は23秒0、23秒3、23秒1、23秒0なので、乾いた馬場と水分を含んだ状況では、明らかにスタートダッシュに影響がある。

昨年、不良馬場でスピードの違いを見せつけたアザワクが、連覇を目指して今年も参戦してきた。3歳牝馬での挑戦だった昨年は、不良馬場と51キロの恩恵もあり、思い切った先行策が功を奏し、58秒4のレコード勝ちだった。しかし、今年は54キロと斤量が増え、好天が続く乾いた馬場。また、過去のデータを調べると、4歳馬は6頭が挑戦し、3着以内に入ったケースが1頭もいない。今シーズンの短距離路線を振り返っても、シーズン最初のアドマイヤマーズ・プレミアムで、中央から転入初戦だった9歳馬スマートアヴァロンが差し切り、ゴールデンウィーク開催のシスキン・プレミアムも9歳馬ニットウスバルが勝利した。11歳馬メイショウアイアンと10歳馬カツゲキライデンの歴代優勝馬も元気で、時計を要する馬場なら、末脚確かなベテラン勢にチャンスも生まれる。それに加え、アザワクと同世代のグレイトダージーは、今季に入って連勝スタートを飾り、前走も敗れたとはいえ、前半3ハロンが北海道スプリントカップJpnIIIより速い34秒0を記録するスピードがある。アザワクには超えなければいけない壁が幾つもあった。

しかし、アザワクの戦法は一つしかない。抜群のスタートを決め、スンナリと先手が奪えた……かに見えた。しかし、外から出ムチを入れて追いかけるグレイトダージーが、1ハロン過ぎでアザワクを突っつく。良馬場でのレースだが、個人的に採っていたラップが前半2ハロンで11秒9ー11秒1=23秒0をマークし、勝負所の3ハロン目も11秒1を刻む。道悪の昨年と同じ2ハロンのラップで、後続も追走に苦労していた面はあるが、アザワク自身も最後の1ハロンは13秒4と苦しくなる。メイショウアイアン、ニットウスバル、スマートアヴァロンとベテラン勢が一気に差を詰め、ゴール手前では「どうなる!?」と誰もが思う激戦となったが、アザワクが何とか凌ぎ切り、連覇を飾った。

「スタートを決めて無理なく先手を奪えたので、息を入れられるかと思いましたが、その後は突っつかれ、苦しい展開でした」と、桑村真明騎手はレースを振り返る。グレイトダージーに来られる1ハロンまでの区間で、一瞬でも息を入れることができたのが、最後の粘りにつながったということだ。超短距離戦でも、息を入れることの大切さを感じるコメントだった。

アザワクは、今年も習志野きらっとスプリントへ向かう予定だ。昨年は出負けし、強引にハナを奪いに行ったぶん、最後は苦しくなった。「今年は船橋で、もうひと暴れしたいと思います」と、角川秀樹調教師は雪辱に燃える。エーデルワイス賞JpnIII・2着や、北海道スプリントカップJpnIIIでハナを叩いた全国区のスピードを、スーパースプリントシリーズ頂上決戦で見せて欲しい。

取材・文 古谷剛彦

写真 浅野一行(いちかんぽ)

Comment

桑村真明騎手

今季の中では歩様が最も良く、徐々に状態が良くなっていましたので、距離も含めて勝負だと思っていました。昨年とは違い、力の要る馬場と斤量増の中、厳しい展開ながらもよく頑張ってくれました。今後は1200メートルでも勝てるよう、頑張りたいと思います。

角川秀樹調教師

このレースを意識し、前走の北海道スプリントカップで序盤から思い切って行かせるレースをさせたので、その成果が出て良かったです。この後は、習志野きらっとスプリントへ向かう予定です。昨年は結果が出ませんでしたが、船橋でもうひと暴れしたいと思いますので、応援よろしくお願いします。