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第44回帝王賞JpnI

ロスなく立ち回り4歳で頂点に
  9歳馬ノンコノユメが2着に健闘

上半期の総決算レースに、国内のダート競馬を代表するメンバーが顔をそろえた。なかでも東京大賞典GIを3連覇中のオメガパフューム、ドバイワールドカップGIで2着に健闘したチュウワウィザード、今年に入ってJpnIを2勝している船橋のカジノフォンテンが駒を進めてきたことで、3強対決の色合いが濃くなった。

地方サイドの視点では、もちろんカジノフォンテンに注目が集まった。中・長距離路線に久々に現れた地方のヒーロー。母は上山競馬が生んだ女傑ジーナフォンテンで、鞍上の張田昂騎手も2日前に通算500勝を達成し、前日に優駿スプリントをワールドリングで制すなど波に乗っている。いやおうにも期待は高まるばかりだった。

しかし締まった馬場が、結果を大きく左右した。前日まで脚質による有利不利は見られなかったが、レース当日は水が抜けて時計が速くなり、逃げ、先行馬が止まらなくなっていた。もちろん、その状況は各騎手も把握しているだけに、前へ前へという意識が強まる。

スタートで押して逃げたのはカジノフォンテン。2番手にダノンファラオがつけ、地方のダートグレードには初参戦のオーヴェルニュもこの一角。前半3ハロンは35秒8のハイペースだったが、先団は密集し、団子状態で進む。オメガパフュームは8頭目を進んでいたが、勝負どころでかなり外を回らされるロス。逆に馬群のなかに入ったチュウワウィザードは窮屈な競馬を強いられ、本来の反応が見られなかった。

直線に入っても先頭に立っていたカジノフォンテンだったが、前残りの馬場とはいえ、1ハロン12秒台のラップを刻み続けるタフな流れでは苦しい。5頭が大きく横に広がり、どの馬が抜け出すかと思われたところで、最内のテーオーケインズが抜群の瞬発力を繰り出した。一瞬のうちに他馬を置き去りにすると、ゴールへ突き進む。外からノンコノユメとクリンチャーが追ってきたが、テーオーケインズとの差はいっこうに詰まらず、そのままフィニッシュした。

テーオーケインズは前走のアンタレスステークスGIIIに続く重賞2勝目。並み居る強豪を退け、3馬身差で上半期のダート頂上決戦を制した。道中はカジノフォンテンの直後で、内ラチ沿いを追走。馬群が密集した勝負どころでも、最内を通ってロスなく進んだ。この馬自身も速いペースで駆けていたはずだが、最短距離を進んだのは大きく、前残り馬場の恩恵を最大限に享受した。

「いいポジションで折り合いもつき、理想の競馬ができた」と松山弘平騎手が話せば、初のGI/JpnI制覇となった高柳大輔調教師も「東京大賞典(6着)とは違って万全の状態で送り出せた」と、それぞれが思い描いた通りの仕事をやり遂げた結果。4歳ながら堂々とした勝ちっぷりで“帝王”の座に就いた。

2着には10番人気のノンコノユメが入った。道中は馬群の後ろを追走し、3~4コーナーで内ラチ沿いを通って位置取りを上げると、直線では5頭横並びの直後まで進出。そこから外に持ち出し、持ち前の末脚を発揮した。「リフレッシュに出したことで気持ちが乗っていたし、速いペースで流れてくれたのも良かった」と真島大輔騎手。前残りの馬場が生んだよどみない流れが、この馬には有利に働いた形。もちろんリフレッシュさせて、前向きさを取り戻したことも大きく、9歳でも先々への光明が見えた。

クリンチャーは終始外めをまわらされながら3着に食い込んだ。馬場やペースが味方したようには感じられず、見方によっては最も強い競馬を演じたともいえる。クリストフ・ルメール騎手は「外枠でずっと外をまわったけど、すごくいい競馬をしてくれた。直線でも伸びてくれて、勝てるかなと思った」と納得したような表情。右回りでは安定して力を発揮できており、大井2000メートルを含めた今後のダートグレードでも好勝負を演じるに違いない。

一見、有利に見えた前残りの馬場は、カジノフォンテンに牙をむいた。10着という結果に「ペースはきつかった。でも、こんなに負ける馬ではない」と張田騎手も唇をかんだが、この一戦だけで評価は落ちない。今回のレースを糧に、よりたくましくなった姿を見せてくれることを願っている。

取材・文 大貫師男

写真 早川範雄(いちかんぽ)

Comment

松山弘平騎手

やってくれると信じていました。スタートも良かったですし、いいポジションでしっかり折り合いもつけられて、理想の競馬ができました。最後は鋭く伸びて、後ろも突き放していますので、強い競馬だったと思います。この相手でこれだけの競馬をしてくれたので、今後がさらに楽しみです。

高柳大輔調教師

思った以上にスタートが良く、作戦通りの位置につけることができて、安心して見ていられました。強力なメンバーでしたが、テーオーケインズも能力があると思い、馬を信じて調教してきました。まだ4歳ですから、これからどんどん良くなると思いますし、長く活躍してくれることを期待しています。