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ヤングジョッキーズシリーズ TR 佐賀

地元飛田騎手がYJS初騎乗で勝利
  JRA西谷騎手が2・1着で好発進

5年目を迎えたヤングジョッキーズシリーズ(YJS)は、昨年に引き続き新型コロナウイルス感染症への予防対策を講じた上で、7月20日トライアルラウンド(TR)佐賀で開幕した。全国的に真夏日となったこの日、佐賀競馬場のある佐賀県鳥栖市では第1戦が行われる15時台には36度を記録した。

TRは上位着順を得た4競走の合計得点で順位が決まるが、今年は地方西日本のジョッキーは現時点ではみな4鞍か5鞍のみの騎乗で、JRA西日本も4鞍しか騎乗しないジョッキーがいるため、1つでも大きな着順を取ると命取りとなりかねない。そうした状況を判断してか、昨年ファイナルラウンドに進出した金山昇馬騎手(佐賀)は「コツコツ着を拾いつつ、勝てる時はしっかり勝ちたいです」とプランを話した。

なお、当初は参戦予定だった大山龍太郎騎手(兵庫)がYJSの出場を辞退したため、佐々木世麗騎手(兵庫)と井上瑛太騎手(高知)がそれぞれ騎乗なしから1競走騎乗へと変更となった。

第1戦は最内枠から好スタートを決めた兼子千央騎手(金沢)が逃げ、その外から押して泉谷楓真騎手(JRA)がピタリとつけて後続を約3馬身離す展開。昨年こそ参加ジョッキーたちがYJSに慣れてきたのか、必要以上にハイペースになることも減っていたが、ここはYJSらしいとも言える若干のハイペース。そんな中、逃げる2頭を冷静に見ながら運んだのが飛田愛斗騎手(佐賀)とスマイルオリオン。向正面で2頭の手応えが怪しくなると入れ替わりで先頭に立ち、直線もリードを保ったまま危なげなく勝利を決めた。

飛田騎手は6月27日、デビューから268日目で地方競馬史上最速の地方通算100勝を達成しており、今年が初のYJSにして最後の出場という異例のジョッキー。「ぜひファイナルラウンドに行きたいです」と意気込みを語っていたのを大きく引き寄せた。

デビュー1年目の西谷凜騎手(JRA)や松本大輝騎手(JRA)は佐賀初騎乗ながら内は砂が深いという意識があったのか、2人とも4コーナーは外を回りそれぞれ2着、3着。例年であればデビュー1年目であっても、地方交流レースやYJS当日のエキストラ騎乗などで佐賀の馬場を経験済みのJRA騎手もいるが、今年は新型コロナウイルスの影響でそれらが叶わない状況。まったくの初めてながら上位に入った。

対照的に地元の金山騎手はコーナーだけ経済コースを通り、直線で少しずつ馬場の軽い外に出して5着。「ペースが速かったので、もう少し溜めてもよかったかもしれません」と仕掛けのタイミングに言及すると、ハナ差粘って4着だった木本直騎手(兵庫)も「いい位置が取れたと思いましたが、向正面で外の馬が早めに仕掛けてきた時に一緒に行った分、最後は脚が上がってしまいました」と、結果的にもう少し待っていれば……という内容。同世代同士の戦いで勝利への強い思いがそうさせてしまったのかもしれない。

第2戦も初出場の若いパワーが炸裂した。勝ったのは序盤は後方にいた西谷騎手。ロングスパートをかけると、向正面でそれに呼応するように角田大和騎手(JRA)も追い出し、直線の入口では逃げ・先行した兼子騎手や富田暁騎手(JRA)、浅野皓大騎手(愛知)らと5頭が横一線。そこから抜け出した浅野騎手を外から角田騎手が交わし、さらに馬体を併せて追ってきた西谷騎手が半馬身差したところがゴールだった。「馬に結構喋りかけるタイプ」という西谷騎手は検量室前に引き上げてくると、騎乗したポートフィリップに声をかけながら首筋を何回も笑顔で撫でた。

「もう1回伸びてくれて『もしかしたら』と思ったのですが」と悔しがったのは一旦は先頭に立った3着の浅野騎手。クビ差4着に「前走で乗っていた鮫島(克也)さんにどんな馬か聞いて、じっくり行きました」と追い込んだ妹尾将充騎手(高知)。5着は富田騎手だった。

TR佐賀を終えての暫定1位は、地方は31ポイントで飛田騎手、JRAは50ポイントの西谷騎手となった。今年は12月27日大井競馬場、28日中山競馬場で行われるファイナルラウンド。「JRAでGIが行なわれる日なんですね。そこでガッツポーズができたら最高だろうなぁ」とは浅野騎手。若者たちは夢を抱きながら、次回のTRである8月9日高知競馬場に挑む。

取材・文 大恵陽子

写真 桂伸也(いちかんぽ)

Comment

第1戦 飛田愛斗騎手

嬉しいです。馬が強かったのもありますし、調教師の指示と厩務員さんのおかげで勝つことができました。1番人気でしたが、気負うことなく自分の競馬をしようという作戦通りでした。次は園田と名古屋で騎乗するので、引き続きしっかりいい騎乗ができるようにがんばります。

第2戦 西谷凜騎手

2着が同期の角田さんだったので、ゴールの瞬間は喜びが余計に出てしまいました。過去のレース映像を見たり担当者さんから話を聞いていましたが、返し馬の行きっぷりが良くて状態がいいんじゃないかと思ったので、少し出していったところで馬の力を信じる競馬をしました。