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第20回ノースクイーンカップ

ゴール前3頭の接戦を制す
  2歳女王が1年9カ月ぶり勝利

太平洋側に位置する門別競馬場は、濃霧の発生が多い。2000年代に門別単独開催の論議が始まったが、この時も霧の問題が常に議題に上がり、数年において濃霧の発生状況を調査していたほど。気温差のある初夏、そして雨上がりの数日間など、心配する要素はわかっているが、自然現象は我々ではどうにもできない。

当初予定されていた15日、ノースクイーンカップは直前の2レースが競走取り止めとなったため、20日に順延となった。これで戸惑っていたのは、遠征してきた南関東2頭の陣営だった。門別競馬場に滞在することになるが、普段と違う環境で飼い食いの心配が出る。またアブソルートクインは、吉原寛人騎手が金沢開催と重なるため騎乗できず、新たな騎手を探すことにもなった。

とはいえ、元を辿れば2頭ともホッカイドウ競馬出身。田中淳司厩舎だった縁もあり、その厩舎スタッフが色々と手伝っていた。その甲斐があり、コーラルツッキーは、15日の馬体重は前走からマイナス11キロだったが、この日はマイナス5キロと馬体が回復。アブソルートクインは15日と同様、体重の増減はなく、良い状態で挑むことができた。

深いブリンカーを着用した1番枠のマリーンワンが先手を奪うと、ネーロルチェンテ、コーラルツッキーが2、3番手で難なく折り合い、早い段階でペースが落ち着く。しかも、この日は向正面が強い向かい風だったので、ラップが上がらない。前半3F=37秒8、5F=63秒5と、先行勢に有利な流れだった。

3コーナーを過ぎてネーロルチェンテが押し出される形で先頭に立ち、コーラルツッキーが置かれずについていく。アブソルートクインも外から迫り、馬群を捌いてルナクレアも接近。外から追い込むサイファリスも加わり、直線は激しい攻防となったが、ゴール直前でコーラルツッキーがネーロルチェンテをハナ差捕らえた。一昨年のエーデルワイス賞JpnIIIを制し、NARグランプリ2歳最優秀牝馬に輝いた後、勝利から遠ざかっていたが、古巣での勝利が、川崎の山崎裕也調教師にとっては嬉しい重賞初制覇となった。

「1200メートルの重賞を勝っている馬なのに、中距離に挑んでいた時は、周囲から色んな声が聞こえてきました。ただ、北海道の時に主戦だった服部さんが、先々は距離を延ばした方が良いと言っていたし、川崎で騎乗した騎手たちも長めの距離の馬とコメントしていたんですよ。実際、ブリンカーをしてもフワフワするぐらいの気性ですし、結果も出てきました。直線の長いコースが合っていると思い、古巣の門別に照準を合わせて挑みました。レース順延、滞在延長など色々ありましたが、こうして重賞を勝てて色んな縁も感じますし、また門別に来たいですね」と、山崎調教師。レース後のインタビューで、NARグランプリを受賞した馬を預かる重圧を常に感じていたことが受け取れた。今回の勝利で、多少は肩の荷が下りただろう。

松井伸也騎手にとっても、2016年ケイアイユニコーンでグランシャリオ門別スプリントを勝って以来、5年ぶりの地元重賞制覇だった。「昨年がハナ差で敗れたレースだったので、今回のゴールした瞬間は、本当に嬉しかったですね」と、レース後は笑顔が絶えなかった。

コーラルツッキーは、長距離輸送の反動を考慮し、この後のブリーダーズゴールドカップJpnIIIへの出走はなくなった。しかし、一昨年の2歳女王が復活し、今後の牝馬路線に大きな活力を生むことは間違いない。

取材・文 古谷剛彦

写真 浅野一行(いちかんぽ)

Comment

松井伸也騎手

操縦性が高く、乗りやすい馬でした。道中の折り合い重視で乗ることを心掛けましたが、ゲートをスムーズに切れたので、3番手につけ、流れに乗れたと思います。外から五十嵐さんが来た時にもうひと伸びし、何とか届いてくれましたが、昨年がハナ差で敗れたレースだったので、本当に嬉しかったです。

山崎裕也調教師

長距離輸送の影響で、15日はマイナス11キロでしたが、順延となって門別に滞在し、少しでも増えてくれたのは大きかったと思います。あまり行き過ぎると燃え尽きる面がありますが、松井騎手が上手にエスコートしてくれました。遠征で目一杯走ってくれましたので、この後は放牧に出します。