九州に上陸した台風9号の影響で、高知競馬場は前日の第11レース前後から非常に強い雨が降り、良馬場から一転、ヤングジョッキーズシリーズ（YJS）トライアルラウンド（TR）高知は不良馬場で迎えた。

「初めての地方競馬場で緊張していますが、一生懸命がんばります」とは、前日まで函館競馬場で騎乗していた永島まなみ騎手（JRA）。一方、浅野皓大騎手（愛知）は「昨年のTR高知は2着だったので、その成績を上回ってファイナルラウンドに進出できるようがんばります」、妹尾将充騎手（高知）も「今年こそ1着をとってファイナルラウンドに行けるようがんばります」とリベンジを誓った。

なお、新型コロナウイルスのクラスターが発生した金沢競馬場に所属する魚住謙心騎手は2鞍に騎乗予定だったが、本人からの申し出により騎乗なしとなり、塚本征吾騎手（愛知）と長尾翼玖騎手（兵庫）がそれぞれ騎乗なしから1鞍騎乗に変更になった。

第1戦は最低人気ながら積極的に運んだ細川智史騎手（愛知）が勝利を挙げた。細川騎手は大外枠からスタートすると、強気に内に切れ込んでいき、逃げる長尾騎手に、最内の永島騎手とともにピタリと馬体を併せて3頭で先行集団を形成。前のポジションを取りに行く時は「内に入れるかギリギリだなと思いましたが、せっかくチャンスをいただいたので」と振り返る。ペースは流れ、馬群は縦長になったが、細川騎手が直線で抜け出し、後方から追い上げた小沢大仁騎手（JRA）をアタマ差しのいで勝利。総合3位だった昨年に続いてのファイナルラウンド進出へ大きな一歩となった。

さらに2馬身差の3着は妹尾騎手で「前に行く気だったけど、他の馬も行く気で」と想定よりも後ろからの競馬になりながらも、最後に脚を伸ばした。勝った細川騎手に道中はプレッシャーをかけられ続けていた長尾騎手は最後まで粘り通して4着。5着は岡遼太郎騎手（高知）だった。

第2戦は岡騎手が地元の利を生かした。好スタートから一旦は先頭に立った佐々木世麗騎手（兵庫）が「溜めようと思って」と早々にペースを落としにかかったのを見ると、すかさず岡騎手が外から先手を取って1コーナーを回った。約1馬身のリードで直線に向くと、その差を保って勝利。2着は4コーナーを絶妙なコーナリングで内の馬を封じた富田暁騎手（JRA）で、1馬身半差の3着に佐々木騎手、4着に亀田温心騎手（JRA）、5着は勝負所から内をスルスルと上がっていった妹尾騎手だった。

「ここで勝たないと、他の競馬場では僕の騎乗では通用しないと思っていました」と岡騎手。謙虚な言葉ながら、地元では負けたくない強い思いを抱いていた。高知の馬場は他場に比べて深く、不良馬場だったこの日もそれは同じ。デビューしたての頃から「高知の馬場は重たくて追う力が足りないので、筋力をつけたいです」と話しており、勝ちはしたものの所属の中西達也調教師との話からそれを再認識したようだ。

同じく地元の妹尾騎手は第1戦の3着に続きここも5着で高ポイントをゲットしたが、第2戦は「すごく悔しいです」と顔をしかめた。一方、スピードの出やすい名古屋競馬場で普段は騎乗している塚本騎手（11着）は「馬場が全然違うなと感じました。兄からは前々で競馬するようにと言われましたが、まだまだです」と、高知競馬所属の兄・塚本雄大騎手からアドバイスを受けていたようだ。

西日本ではここまで2つのTRが行なわれ、地方暫定1位はTR高知で5着、1着の岡騎手で40ポイント。地方勢では唯一4戦消化の妹尾騎手が38ポイントで2位につけている。JRAでも4戦を消化した富田騎手が2位。これから各騎手、TRでの騎乗数が増えるにつれて順位に大きな変化がありそうだ。

次回のTRは東日本へと開催の場を移し、次週18日に門別競馬場で行われる。