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第56回サラブレッド大賞典

早め先頭で念願の重賞初制覇
  ダービーグランプリも視野に

例年より半月から1カ月ほど前倒しして実施されたサラブレッド大賞典。地元・金沢所属の3歳馬たちによる重賞で、金沢では8月1日の加賀友禅賞(牝馬限定)とこのレースをもって3歳重賞が終了。多くの馬はどちらかを、あるいは両レースともに臨む予定だったが、新型コロナウイルスの集団感染が発生し、金沢競馬は8月1日から10日まで4日間の開催(8月1、3、9、10日)を休止。全国的に感染者が増えている状況ゆえ致し方ないものの、加賀友禅賞が取り止めとなり、当初の予定から変更せざるを得ない陣営もいた。

そんな不測の事態さえも結果的に味方につけたのが、ベニスビーチ。400キロ台前半の小柄な牝馬が前走からプラス7キロの433キロと馬体を増やし、かつ太め感を見せずパドックを周回した。「上位の力を持った馬だと自信しかありませんでした」と鞍上の吉原寛人騎手が言うように、これまで重賞で3度の2着。門別、笠松、大井、岩手と拠点を変えながら各地の重賞で上位争いを繰り広げ、金沢移籍2戦目のMRO金賞では菊水賞馬・シェナキング(兵庫)にクビ差まで迫った。そうなれば、単勝1.3倍の1番人気に推されたのは当然のことだろう。

好スタートから3~4番手のインでレースを運んだベニスビーチは、向正面で砂の軽い外に持ち出されると、残り400メートル手前で楽に先頭に立った。このまま後続を突き放して圧勝するかと思われたがしかし、実は先ほどの吉原騎手の言葉には続きがあって、「先頭に立って1頭になると、遊ぶ面があるんです」という。それでも、しっかり対処し、2着フューリアスに3馬身差をつけて重賞初制覇を果たした。

フューリアスも北日本新聞杯2着、石川ダービー3着などの実績馬で、重賞初制覇がかかっていた。今回はスタートを決めて先行して抜け出すという自分のレースはできたが、相手が強かった。

さらに3馬身離れた3着には、重賞3勝を挙げるなど2歳時から活躍するサブノタマヒメ。これまでの勝利は1500メートル以下が中心だったが、「1700メートルの前走を勝って、かなり自信がつきました。折り合いさえつけば距離は何とかなると思いました」と栗原大河騎手は話した。

勝ったベニスビーチは引き上げてくると、吉原騎手も中川雅之調教師もホッとした表情。この二人と同馬主のタッグで石川ダービーは一騎打ちの末、ビルボードクィーンが僅差の2着に涙を飲んだ。関係者にとってはまさに待望の重賞制覇だったのだろう。

今後のローテーションについて中川調教師は「オーナーのお気持ちを尊重して」と、3歳秋のチャンピオンシップの最終戦に位置付けられている盛岡のダービーグランプリを含め様々な選択肢をゆっくり考えていくとのことだった。

取材・文 大恵陽子

写真 早川範雄(いちかんぽ)

Comment

吉原寛人騎手

直線で遊ばれてちょっと危なかったですけど、しっかり勝ってくれてよかったです。内枠に入ったので、砂の深い内はあまり走らせたくないと思っていましたが、向正面でうまく外に出せて安心しました。MRO金賞でも惜しい競馬だったので、ここできっちり勝ててホッとしています。

中川雅之調教師

勝ててホッとしました。小柄な牝馬なので、間隔が空いたことでかえって息が入ってよかったのかな、と結果的には思います。同じ馬主さんの馬で2着続きだったので、勝ててよかったです。いい馬を預からせてもらっているので、ありがたいです。今後についてはゆっくり考えたいと思います。