直線インコースを狙って差し切る
三冠狙ったハルノインパクトは2着
今年の黒潮菊花賞は、ハルノインパクトが3歳三冠を達成するか、が最大のテーマ。高知優駿のあとは3歳限定の準重賞に出走して2着に敗れたが、1900メートル戦で勝利を挙げているのは今回の出走12頭のなかでは唯一。さらに20戦18連対という圧倒的な成績は全国から支持を集め、単勝オッズは1.1倍にまでなった。
しかしゴール寸前でインコースから差し切ったのはトーセンジェイク。多田羅誠也騎手はこのレースの連覇を飾り、ハルノインパクトはクビ差2着という結果になった。
ハルノインパクトとしては、先手を取った馬の後ろにつけて脚を溜め、2周目の向正面で動いて押し切りを図るという、これまでと同様の“勝ちパターン”だった。
三冠を狙った西川敏弘騎手は2着という結果に首をかしげながら「馬場が前走よりも乾いていたので(発表は前走と同じ稍重)遅らせ気味に動いたんですけれどね。いちばん怖いなと思っていた馬にやられてしまいました」と振り返った。そして「自分のレースはできたし、しょうがないかな」と続けた言葉からは、もうちょっと何とかならなかったのか、と思う気持ちが伝わってきた。
金星を挙げたトーセンジェイクは単勝3番人気。JRAでは4戦とも大敗で、昨年12月の高知移籍後に7勝を挙げていた。しかし金の鞍賞は5着で黒潮皐月賞は8着。出走を狙っていた高知優駿は賞金不足でゲートインできなかった。
その後はここをターゲットにして調整。今回のパドックでは松木啓助厩舎を支える三村展久元騎手が引き手を持って周回していた。そしてレース後は「状態面がとてもよくて、パドックでは余計なことをしませんでしたね。勝った瞬間、気持ちよかったです」と満面の笑みで喜んでいた。
逆に「4コーナーでは勝つかと思った」と話したのは、3着に入ったダイヤマリーの倉兼育康騎手。「道中はブラックマンバをマークしていたら動けない感じで、その前では西川さんが楽にしているから早めに行きました。その勢いはよかったんですが、この馬は性格的にどうしても最後が甘くなるんです」と苦笑い。それでも単勝97.8倍の8番人気で3着に食い込んだのだから、今年の活躍が目立つ倉兼騎手の存在感は大いに示した。
2番人気のブラックマンバは4着だったが、3着とは6馬身差。岡村卓也騎手は「敗因は7キロ増の体重ではなくて、距離ですね。短いところとは走りが違います」とコメント。高知優駿で2着に入ったベアナチュラルは7着で、塚本雄大騎手は「やっぱり上位の馬とは実力差がありますね」と話した。
もう一人、苦笑いしながら悔しい思いを話していたのが別府真衣騎手で「最後に抜かれて6着になってしまいました。5着との差は大きいんですよ」とのこと。なるほど、今年の5着賞金は2014年の優勝賞金と同額。ちなみに05年からの8年間はその半分以下だった。以前から熱かった高知競馬の戦いがさらに激しさを増してきたのは、近年の賞金額の増加が原動力のひとつ。勝った陣営も負けた陣営も、最善を尽くしたという気持ちがあるから笑顔が多くみられるのだろう。
取材・文 浅野靖典
写真 桂伸也(いちかんぽ)
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松木啓助調教師
高知に来たときから重賞を獲れる馬だと期待していましたが、前走後は疲れがたまっていたので休ませて、この距離に対応できるようにじっくりと乗る調教をしてきました。多田羅騎手がうまく仕上げてくれましたね。馬主さんが高知の人なので、このあとも高知で出走させることになると思います。
多田羅誠也騎手
初めての距離が心配で、中団からのレースを意識しました。スタート後はいい位置を取れたと思うのですが、1周目のスタンド前で少し掛かってしまいました。その分のロスがあったので、2周目の向正面では外を回すよりも内かなと思って狙っていったのですが、最後は届いてくれという気持ちだけでした。