断然人気にこたえ逃げ切る
浦和移籍後念願の初勝利
今年度の岩手競馬は開催日程の変更で4月4日から6月22日、11月28日から3月29日が水沢開催、6月27日から11月23日が盛岡開催となり、ビューチフルドリーマーカップは震災のあった2011年以来10年ぶりに盛岡コースで行われる。コーナー6回の小回り水沢1900メートルから、4コーナーポケットスタートから馬場を1周し直線の坂を2度も上るコースでスピードとスタミナが要求されるタフな2000メートルに替わる。
グランダム・ジャパン(GDJ)古馬シーズンは終盤へ向けてポイントを加算したいところ。14年アスカリーブル、15年サンバビーン、19年クレイジーアクセルと、このレースの勝ち馬から3頭がGDJ古馬シーズン優勝馬となっている。ホッカイドウ競馬から1頭、南関東から5頭が参戦し、そのうち4頭の遠征馬がすでにGDJのポイントを獲得。地元8頭を加えてフルゲート14頭が出走した。
注目を集めたのは前走兵庫サマークイーン賞2着、19年には関東オークスJpnIIを制した実績馬ラインカリーナが単勝1.6倍で圧倒的な1番人気。昨年12月のクイーン賞JpnIII・3着で、スパーキングレディーカップJpnIII・5着、兵庫サマークイーン賞3着のサルサレイアが4.7倍の2番人気。昨年のひまわり賞勝ち馬で直前のフェアリーカップを6馬身差圧勝、地元の利があるマルケイマーヴェルが8.1倍で3番人気に。
ポジション争いは1番枠からすんなりラインカリーナが先頭に立ち、マジョリティー、疾病のため本田正重騎手から地元の坂口裕一騎手に乗り替わったアブソルートクイン、セシールという並びで淡々と流れ、サルサレイアは大外の影響もあって後方策となった。
前半1000メートルを通過して先団6頭がひしめき、徐々にペースが上がり勝負どころ3コーナーでは逃げるラインカリーナにぴたりとマークするアブソルートクイン、少し間隔があいてアナト、フワトロが追走、その後ろはやや離れる展開に。
4コーナーを回ってラインカリーナだけ手応えが違い、直線で追い上げてきたサイファリスに2馬身半差をつけての勝利。勝ちタイムは2分6秒8(12.8-11.7-11.8-12.9-12.9-12.6-12.7-12.8-12.8-13.8)で、関東オークスJpnII以来2年2カ月ぶりの美酒。GDJ古馬シーズンでは24ポイントでトップに立った。
勝ったラインカリーナの山本聡哉騎手は「騎乗依頼が来てからラインカリーナのこれまでのレース見て研究しました。道中かかるイメージがあったので、ゆったりゆったりコーナーを回すイメージで乗りました。1コーナーから2コーナーは後続のプレッシャーを感じましたが、それでも力まずにレースを進められた。初めて乗りましたが仕掛けてからも良い感じで直線は抜け出したので、これで負けたら……かっこ悪いですからね」。最後は笑いながらコメントをしてくれた。岩手競馬史上5人目、岩手競馬史上最速となるデビューから16年4カ月での快挙となった地方通算2000勝を達成したばかりの勢いあるジョッキーは違うと感じた。
小澤宏次調教師は「次走予定はレディスプレリュード(大井)。サルサディオーネなど強力な馬がいますが、右回りならチャンスがあるはず。グランダム総合優勝を狙います。仮に選ばれるならJBCレディスクラシックにも挑戦したいですね」
取材・文 峯村正利
写真 佐藤到(いちかんぽ)
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小澤宏次調教師
名古屋(秋桜賞)を使う選択肢もありましたが、小回りで距離が1400メートル。前走(兵庫サマークイーン賞)のように展開の紛れがあるので、盛岡を使おうと決めました。乗り方についてはジョッキーにお任せで。自分のところに来て5戦目ですが、ようやく勝つことができてホッとしました。
山本聡哉騎手
最内枠を引きましたからスピードがあるマジョリティーの存在は気になりましたが、大事に乗って失敗したくなかった。小細工しないで攻めようと強気に逃げました。道中で息が抜けたのも良かったと思います。坂を上がったあたりで後ろの音が聞こえなかったので、これで勝てると思いました。