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ヤングジョッキーズシリーズ TR 盛岡

2戦とも地方所属騎手が勝利
  1・2着の篠谷騎手が暫定1位

東日本地区のヤングジョッキーズシリーズ・トライアルラウンドは、8月18日の門別競馬場に続いての舞台は盛岡。ここが今年のスタートになる騎手も多く、とくに地方競馬では今年デビューした川崎の神尾香澄騎手がヤングジョッキーズシリーズでの初戦となる。もちろん、他地区で騎乗するのも初めてだ。

1鞍のみ騎乗の神尾騎手は「シリーズ全体を楽しめるように頑張りたいですね。今日の馬は逃げると持ち味が出るタイプのようですが、周りの動き次第かな」と、いつもと違う戦いに思案しているようだった。

JRAでは永野猛蔵騎手が参加騎手のなかでは唯一の今年デビュー。地方競馬で騎乗するのも今回が初めてだ。「砂の粒はJRAのほうが細かい感じがしますね。僕が乗る馬については前走で乗っていた騎手に特徴などを教えていただきましたし、盛岡のコースについてはJRAの先輩方に聞きました」と、初めての経験にとまどいつつも、いろいろと考えているようだった。

その「先輩騎手」のひとりが、昨年の盛岡で2戦とも勝利した原優介騎手。その実績が評価されたのか、第1戦では専門紙の印以上といえる12.8倍(6番人気)の支持を得た。

ただ、2.3倍と人気を集めたのはJRAの木幡育也騎手が騎乗するトミノヴェールで、岩手に移籍してから逃げ切りで5戦5勝と勢いがある。しかし今回は昇級戦で、メンバーには逃げ先行で好成績を挙げている馬が複数。そうなると、差し馬が3着までを独占して3連単の配当が120万円を超えた、昨年の第1戦の再現になる可能性はあるまいか。

しかし今年の第1戦は前崩れにはならなかった。先手を取った中島良美騎手(浦和)の直後に木幡騎手がつけ、最内枠からスタートした仲原大生騎手(大井)が3番手。その位置取りのまま4コーナーを迎えたが、結果は木幡騎手が2着で中島騎手が3着。勝利を挙げたのは、中団から徐々に上昇して残り100メートル付近で差し切った篠谷葵騎手(船橋)。デビューした昨年はケガのため、ヤングジョッキーシリーズでの騎乗は2戦のみだった。その分を払拭するかのような快勝に、笑顔を見せながらカメラマンのリクエストに応えていた。

4着には原騎手。10番人気ながら5着に健闘した木間塚龍馬騎手(船橋)は、「馬は頑張ってくれましたが人間が……」と謙虚に言い残して、次のレースの準備へと向かっていった。

続く第2戦はダート1600メートルが舞台。ワンターンのマイル戦でスタートからゴールまですべてダートというのは、日本では盛岡競馬場が唯一だ。そのコースでの経験値が高い、地元の塚本涼人騎手が逃げ切り勝ちをおさめた。

塚本騎手はレース後に「うまくスローペースに落とせました」とニヤリ。向正面では12頭が8馬身ほどの範囲におさまる団子状態で、塚本騎手が作った流れに窮屈な走りを強いられていた馬もいたように見えた。

その展開のなか、馬群の外を回って2着に入った篠谷騎手は、巧く立ち回ったといえるだろう。「2番手と3番手が早めに失速してしまった流れも厳しかったですし、僕の馬はすぐ前にいた1頭を気にしていたようでした。そういうなかで、自分なりに結果につながる乗りかたはできたかなと思います」と、自己評価。3着には4番人気の木間塚騎手が入り、盛岡では船橋の2名がファイナルラウンドに向けて高ポイントを挙げた。

一方、JRAでは原騎手が2戦とも4着で、2年連続のファイナル進出に向けてまずまずのすべり出し。今年も盛岡競馬場には原騎手の両親の姿があった。原騎手の次の騎乗予定は10月13日の川崎競馬場。無観客での開催が続く南関東だが、10月にはその制限が解除される状況になってほしいものだ。

2戦を終えて笑顔を見せている騎手が多いなか、渋い顔をしていたのは関本玲花騎手。第2戦は5着とはハナ差での6着。第1戦も10着だっただけに、南関東の舞台で捲土重来を狙いたいところだろう。川崎の池谷匠翔騎手は1鞍だけの騎乗で7着だったが「このシリーズに間に合わせるつもりで(落馬骨折の)リハビリをしてきました」とのことだった。東日本地区の各騎手は、トライアルラウンドでの騎乗機会は少なくともあと2回。ここまで結果を残せていない騎手にもチャンスはまだまだ十分にある。

取材・文 浅野靖典

写真 佐藤到(いちかんぽ)

Comment

第1戦1着 篠谷葵騎手(船橋)

あまり先入観を持たないようにしようと思って臨みました。道中は少し砂をかぶったところで馬がいやがるそぶりを見せたので、そのあとは外を回していきました。ちょっと仕掛けが早かったかなという感じが自分のなかにあったので、最後に差し返されなくてよかったです(笑)。

第2戦1着 塚本涼人騎手(岩手)

逃げか2番手が理想で、そのとおりの位置を取れました。スローペースにできたのは地元の利があった分ですね。初めてヤングジョッキーズシリーズで勝てたので、とてもうれしく思います。今年が最後の出場ですし、3年目で多少はうまくなったかなとも思いますので(笑)、地元で結果を出せてよかったです。