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第4回園田オータムトロフィー

ライバルを振り切り重賞初勝利
 楠賞でさらなるタイトルを狙う

近年、兵庫県競馬の重賞戦線は新子雅司、橋本忠明、2人の調教師が席巻していると言っても過言ではない。新子調教師は昨年重賞5勝のステラモナークをはじめ、2018年には黒船賞JpnIIIをエイシンヴァラーで、サマーチャンピオンJpnIIIをエイシンバランサーで、ダートグレードを制しており、19年以降近3年の重賞勝利数は8、10、2勝。対する橋本調教師はジンギとエイシンニシパの古馬両エースを中心に8、9、4勝(兵庫外も含む。21年は9月8日現在)。

重賞勝利数でも拮抗しているように、これまで重賞では、ともに有力馬を出走させて人気を分け合うことも多かった両陣営。今回の園田オータムトロフィーでも、トライアルのクリスタル賞1着の新子厩舎・ビーザベスト(単勝1.6倍)と同2着の橋本厩舎・エイシンビッグボス(同2.9倍)が人気を二分し、一騎打ちムードだった。

例年は春の実績馬と夏の上がり馬の対戦が見どころとなるレースだが、今年は春に行われた菊水賞、兵庫ダービー上位馬の参戦がなく、夏の上がり馬の前述2頭が人気を集めた。3番人気は春ののじぎく賞を勝ったクレモナだったが、単勝13.1倍と2強からは大きく離されていた。

大方の予想通り、トライアルに続きエイシンビッグボスがハナを奪い、外からビーザベストがぴったりマークの展開。さらにスタートで後手を踏んだニジイロがビーザベストに外から並びかける。向正面でエイシンビッグボスが後続を突き放しにかかると、ビーザベストも必死に追われるが、じわじわと差を広げられる。直線でもビーザベストはトライアルで見せた差し脚を繰り出せず、エイシンビッグボスが逃げ切ってトライアルの雪辱を果たし、重賞初制覇を達成した。

2着には9番人気の伏兵トリニティノットが内を強襲し、馬連複1万7300円の波乱を呼んだ。「内で思っていた競馬はできたが、直線で外に出せなかった」と中田貴士騎手。3着はビーザベストだった。笹田知宏騎手は「ぴったりマークするのは予定通りだったが、3番手の馬に外から来られて、力んでしまい、甘くなった」と肩を落とした。

8月13日の摂津盃でのエイシンデジタルに続いて重賞では今年3勝目を挙げた下原理騎手は「前走後、調教師、厩務員としっかり調教していこうとコンビで馬をつくって、しっかり追い切った結果です」と胸を張った。暑さのため、前走と前々走は加減をしながらの調整だった。しかし、重賞はしっかり仕上げないと勝てないと、中間は調教メニューを強化。下原騎手自ら騎乗し、攻めの姿勢を貫いた。夏負けに入りかけの中、ギリギリで力を出せる状態を維持できたのは「厩務員の腕です」と下原騎手は縁の下の力持ちをねぎらった。

次走は11月2日の楠賞(園田1400メートル)に直行する。「今日は1700メートルを勝ちましたが、1400メートルとはパフォーマンスが違う。本来は1400メートルがベターと思っている」と橋本調教師。ライバルの新子厩舎勢との一騎打ちを制した45歳の敏腕トレーナーは、攻めて攻めた末に勝ち取った勲章に、喜びを噛み締めた。

取材・文 松浦渉

写真 桂伸也(いちかんぽ)

Comment

下原理騎手

内枠が当たったので、速ければ(ハナに)行くつもりでした。馬体を併されても、リラックスしてハミが抜け、1700メートルも対応できた。前回はためてもはじけなかったので、自分から動いた。距離は克服したが、短距離の方がいい。ゲート離れがいいし、力まないのが長所。

橋本忠明調教師

今回はかなりハードに追って、加減しながらの調整だった前走や前々走とは攻め馬の内容が違っていたので、自信がありました。逃げることも、ビーザベストにぴったりマークされることも想定内でした。一騎打ちになると思っていました。最後はヒヤヒヤしましたが、思い通りにいきました。