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第33回珊瑚冠賞

出遅れも早め先頭から押し切る
  高知1億円ホースへ視界良好

今年、高知競馬場でここまでに行われた9つの古馬重賞のうち5競走を制覇しているスペルマロン。前走・建依別賞では高知の重賞全距離制覇を果たした。1300メートルから2400メートルまでこなすオールラウンドプレイヤーの強さに磨きがかかったいま、珊瑚冠賞で単勝1.3倍の圧倒的1番人気に支持されたのは自然な流れだろう。

ライバルとして目されたのは新興勢力。JRA3勝クラスから大井を経て高知に移籍、目下9連勝のクラウンシャインが2番人気で6.1倍。直近2走の準重賞はともにゴール前で流しての圧勝で、タイムも優秀だった。3番人気以下は10倍を超えるオッズとなった。

スペルマロンが確勝級と思われる中、スタートで立ち遅れたのはなんとそのスペルマロン。波乱の幕開けとなったが、すぐにスピードに乗ると、最初の3コーナーまでに2番手外に位置を取った。対照的に抜群のスタートを切ったのはクラウンシャイン。ところが、思ったほど外枠の馬が先行しなかったことに加え、内枠が仇となり、2周目3コーナーまでずっと砂の深いインを走らされることになった。

4コーナーでスペルマロンが早くも先頭に立つと、クラウンシャインが外に切り替えて並びかけたが、直線に入ってスペルマロンがもうひと伸びを見せて1馬身半差で勝利。「並んでからが強い」という別府真司調教師の言葉通りのレースぶりで、重賞11勝目を手にした。3着はそこから8馬身離れてグリードパルフェで、戦前の予想通り1、2着馬の力が抜けたレースとなった。

2着クラウンシャインの佐原秀泰騎手は「枠が悪かったです。内でタフなレースになりました。それでも2着で、収穫のあるレースでした。距離は長い方がいいタイプなので、もし出走するなら年末の高知県知事賞(2400メートル)で巻き返したいですね」と意気込んだ。そして最後に「倉兼騎手の日でしたね」と付け加えた。というのも、この日は倉兼育康騎手が地方通算2000勝に王手をかけた状態で、珊瑚冠賞の1つ前の第6レースを勝って念願のメモリアルを達成していた。これには本人も「みんなから『重賞で2000勝を』と言われましたけど、さすがに僕の心臓では耐えられないので、その前に達成できてよかったです」と、プレッシャーから一つ解放されて珊瑚冠賞に臨めたようだ。

勝ったスペルマロンはこれで高知での収得賞金が9634万5000円となり、あと約370万円で“高知1億円ホース”が誕生する。かつて売り上げがどん底の時代には考えられなかったタイプのスターホースの誕生と言えるだろう。珊瑚冠賞はJBCクラシック指定競走ではあるが別府調教師は「JBCに出走したい気持ちもありますが、この馬の気性的に遠征がどうかということと、1億円ホースにすることが目標のため、今年は高知に専念したいと思います。それから遠征を考えたいです」と話した。

次走は10月9日の準重賞・アドミラブル賞を視野に入れているとのこと。同レースは1着賞金400万円。もし勝てば、夢の1億円ホースが誕生する。

取材・文 大恵陽子

写真 桂伸也(いちかんぽ)

Comment

倉兼育康騎手

つまずくような形で出ましたが、スペースがあったので早めにいい位置を取ろうと思いました。早め先頭で馬が余裕を見せましたが、2着馬が来るともう1回ハミを取ったので「負けないな」と思いました。この馬はまだ全力を出していないと思うので、これからも楽しみですし、一緒に成長させてもらっています。

別府真司調教師

スタートでつまずいてどうかな?と思いましたが、いい位置を取りに行ったので大丈夫だろうと見ていました。とても賢い馬で、距離が延びてスローになると、それに対応して折り合うことができます。4コーナーで並ばれましたが、気合いを入れると伸びたので負けることはないだろうと思いました。