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第41回白山大賞典JpnIII

不良馬場を味方に後続を寄せ付けず
  コースレコードで逃げ切り重賞2勝目

白山大賞典JpnIIIは、金沢所属馬限定戦として実施された2007年を除き、1997年に交流重賞となってからの勝ち馬はすべてJRA。それでも地方馬が健闘することも多く、昨年までに9度の2着を記録している。しかし今年も勝利したのはJRA馬。メイショウカズサがコースレコードで逃げ切り、好位から追い上げてきた船橋のミューチャリーは2着にとどまった。

その結果に影響した要因のひとつが強い雨。昼ごろの降り始めから粒と量が徐々に大きくなり、第1レースは稍重で始まったが、第2レースには重に変わり、13時50分発走の第4レースからは不良となった。雨に加えて風も強まった中盤のレースでは、最後の直線で失速する逃げ先行タイプが多数。馬場の大外を通っても届く差し馬がいるなど、いつもの金沢とは明らかに様子が違っていた。

それでもスピードがある馬にとっては、行き切れば逆に有利。その状況を最大限にいかしたのが、勝ったメイショウカズサだったといえるだろう。

好スタートからすぐに先手を主張して、2周目の3コーナーで後続が接近してくると再び加速するという内容は、まさに完勝といえるものだった。

メイショウカズサは2走前のプロキオンステークスGIIIをコースレコードで制したものの、オープンクラスでは好走と大敗の差が極端。その不安定さに対処するために、パドックを早々に退出して本馬場に入り、発走を待つ間は他馬とすこし離れた場所で待機させた。臨場した棈松(あべまつ)利行調教助手によると、ゲート入りの直前に鞍上の川田将雅騎手が「返し馬の雰囲気がとても良かったですね」と話していたとのこと。「実戦になると難しい」(棈松助手)というタイプが逃げ切りを決めた最大の要因は、気分よく単独で走れたことだろう。

逆に、逃げた馬を追いかけたグループは厳しい流れになってしまった。2番手を追走したスワーヴアラミスは2周目の3コーナーあたりから追い上げようと動いたが、逆に離される形で3着。連覇を狙ったマスターフェンサーはインコースを突いたが、最後の直線では伸びが鈍る形で4着だった。

それを考えると、ゴール直前で2着に上がったミューチャリーの走りは評価できる内容。矢野義幸調教師は「馬場が相手に味方してしまいましたね。でもこの走りだったらJBCに行ってもいいでしょう」と前向きで、吉原寛人騎手も「砂をかぶらなければ進む感じだったので外を回りました。逃げた馬を追いかけると自分が厳しくなるのでその点を考えて乗りましたが、本番は次ですよ」と手ごたえを得たようだった。

その一方で残念そうな顔をしていたのが青柳正義騎手。騎乗したヒストリーメイカーとは、同馬が金沢に在籍していた2018年に、15戦すべてで手綱を取っていた。「依頼をいただいたときは本当にうれしくて、期待を持って臨みました。でも結果的に、積極的に行きすぎたのかもしれません」と振り返った。しかしながらヒストリーメイカーはしぶとく差を詰めるタイプ。こちらも大雨の影響を受けてしまったのかもしれない。

取材・文 浅野靖典

写真 国分智(いちかんぽ)

Comment

川田将雅騎手

気持ちよく走らせようと考えていましたが、そのとおりに馬が進んでくれました。初めて乗せていただいたときと比べると、大人になったような感じがしましたね。レースが進んでからも気分を損ねないようにしようと、それだけを考えて乗りました。

棈松利行調教助手

普段の調教は動くようになってきたので調整は難しくないんですが、競馬になると気の悪さを出してしまうんです。前走も途中で走るのをやめてしまいましたし、だから相手関係よりも自分との闘いというタイプですね。JBCに出られたら(安達昭夫厩舎として金沢で)2勝目を目指したいと思います。